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異物分析の手法選択 ― 局方は「何個あるか」までしか決めておらず、「何であるか」は分析者に委ねられている【2026年版】
分光

異物分析の手法選択 ― 局方は「何個あるか」までしか決めておらず、「何であるか」は分析者に委ねられている【2026年版】

注射剤に異物が見つかったとき、逸脱調査が問うのは「それが何で、どこから来たか」である。ところが日本薬局方にも欧米局方にも、その問いに答える方法は一つも書かれていない。局方が決めているのは、照度と背景と観察秒数、そして 10 µm 以上が何個あるかまでである。しかも目視の下限(各社が 100〜200 µm で自分で決める)と光遮蔽法の上限(約 100 µm)は重ならず、50〜150 µm には「どちらの方法でも確実には捕まらない」灰色地帯が残る。USP の Stimuli 論文は、可視と不可視というこの区分が「利用可能な技術の限界だけに基づいており、患者への影響の科学的理解に依拠していない」と書いた。FTIR 顕微・ラマン顕微・SEM-EDS・O-PTIR は、この空白を埋めるために選ぶ道具である。粒子径・材質・水・蛍光・真空という5つの制約から、どれをどの順で当てるかを、原典の数値で決める。

非標的分析と未知構造推定 ― 答えが全部わかっている試料でも、当てられたのは46%だった【2026年版】
質量分析

非標的分析と未知構造推定 ― 答えが全部わかっている試料でも、当てられたのは46%だった【2026年版】

高分解能MSで「未知のピーク」を追う非標的分析は、環境・食品・医薬・法科学に急速に広がった。 だが米国EPAが主催した共同試験ENTACTでは、何が入っているかを全部わかっている合成混合物を目隠しで 分析させたところ、異性体を除いた真陽性率は最良でも46%、答えを見てからやり直しても65%にとどまった。 本記事は「なぜ当たらないのか」を二段階に分けて追う。第一に、質量精度をいくら上げても分子式は 一意にならない(Kind & Fiehn が2006年に論文タイトルで宣言している)。第二に、分子式が決まっても 構造は決まらない。そのうえで、この不確かさを隠さずに申告するために作られた Schymanski の5段階、 PFAS向けに枝分かれした信頼度スケール、そして ICH Q3A の「未同定不純物」と ICH Q3E の AET という 規制側のしきい値までを、すべて原典の数値で整理する。

クロマトグラムの積分とピーク処理 ― 同じ不純物が、積分モードしだいで 0.028 % にも 0.104 % にもなる【2026年版】
データ解析

クロマトグラムの積分とピーク処理 ― 同じ不純物が、積分モードしだいで 0.028 % にも 0.104 % にもなる【2026年版】

クロマトグラフィーの最後の一歩、ピーク積分は「読み取り」ではなく「決定」である。 同じ電気泳動図の同じ不純物ピークを4つの積分モードで処理した査読論文の実測では、 真値 0.100 area% に対して 0.104 %・0.071 %・0.041 %・0.028 % という4つの答えが出て、 誤差は +4.2 % から −72.1 % まで広がった。どのモードも正しい値を返していない。 本記事は、この「決定」がどこで効くのかを、垂直分割の誤差の自前計算(分離度と テーリングファクターで表にした)、CDSの積分パラメータ、局方の記述、 そして手動積分を名指しした FDA ウォーニングレターと MHRA の生データ定義まで、 一次資料で追う。

キラルカラムの選び方 ― どのカラムが効くかは予測できないと、メーカー自身が書いている【2026年版】

キラルカラムの選び方 ― どのカラムが効くかは予測できないと、メーカー自身が書いている【2026年版】

逆相のカラム選びには理屈がある。logP と pKa を見れば当たりはつく。キラルだけは違う。 Phenomenex は自社のキラルカラム選択の手引きに「どの固定相がよい分離を与えるかを正確に予測することは できない。したがってスクリーニングが必要である」と書き、Daicel は 1,100 件を超える分離例データベースを 提供したうえで「これらの指針は経験的観察に基づくものであり、あなたの化合物の分離を正しく予測しない かもしれない」と添えている。カラムを売る側が予測不能を明記している分野は、他にほとんどない。 さらに厄介なのは、同じセレクターでも被覆型と固定化型でエナンチオマーの溶出順序が逆になることだ。 ケトプロフェンで選択性と分離度をわざと揃えて比較した報告では、順序が入れ替わるだけで微量エナンチオマーの 定量限界が 0.03 µg/mL と 0.10 µg/mL、3.3 倍違った。メタノールをエタノールに替えるだけで順序が変わる系も、 同じカラム・同じ溶媒で等エナンチオ選択温度が 2000 ℃ 超と −82 ℃ に分かれる化合物対もある。 本記事は「この化合物にはこのカラム」の表を作らない。予測できないものを手順で決めるために、 固定相の系統、被覆型と固定化型の実像、スクリーニング設計、溶出順序を動かす 5 つのレバー、添加剤と平衡化、 FDA と ICH Q6A が実際に要求していること、分取へのスケールアップまでを一次資料の数値で追う。

CHN元素分析とハロゲン・硫黄分析 ― 燃やして出てくるのは、元素の量ではなく「手順が決めた量」【2026年版】

CHN元素分析とハロゲン・硫黄分析 ― 燃やして出てくるのは、元素の量ではなく「手順が決めた量」【2026年版】

試料を燃やして炭素・水素・窒素を測る。原理は 100 年前から変わらない。だから「元素の絶対量が出る」と 思われがちだが、実際に出てくるのはそうではない。合成化学の論文で純度の証拠として使われる ±0.4% という 判定線は、文献をたどっても誰がいつ決めたのか分からない。同じ高純度試薬を 18 のラボへ送った 2022 年の 国際共同試験では、436 のデータ点のうち 10.78 % がその線を外れ、炭素だけなら 16.44 % が外れた。試料は どれも表示どおり純粋だったのに、である。さらに 2024 年の試算では、完璧に測ったとしてもトリプトファンの 分子式を 26 % の確率で取り違える。一方ハロゲン・硫黄側では、米国 EPA が PFAS スクリーニング法の冒頭に 「AOF は手法そのものが定義する量(method-defined parameter)である」と明記した。炭素数 4 未満は活性炭に 残らず、炭素数 8 超は容器壁に貼りつく。どちらの側でも、燃焼分析が返すのは「元素の量」ではなく 「その手順で捕まえられた分」である。CHN の判定線、燃え残ったフッ素が窒素に化ける仕組み、酸素フラスコ 燃焼法から燃焼イオンクロマトグラフィーへの流れ、そしてケルダールとデュマで窒素の値がずれる理由までを、 一次資料の数値で追う。

原子吸光(AAS)の実務 ― 薬局方が判定値をひとつも置かなかった試験法を、どう管理するか【2026年版】

原子吸光(AAS)の実務 ― 薬局方が判定値をひとつも置かなかった試験法を、どう管理するか【2026年版】

日本薬局方〈2.23〉原子吸光光度法には、装置性能の判定値がひとつもない。波長のずれも、吸光度の再現性も、 検出下限の下限値も規定されていない。では、この装置が正常に動いていることを何で示すのか。 答えは薬局方の外にある ―― 「特性濃度」、すなわち 1% 吸収(吸光度 0.0044)を与える濃度である。 メーカーは元素ごとにこの値を公表しており、実測値と比べれば装置が仕様どおりかが分かる。 本記事はこの自己診断を軸に、フレームの化学干渉、標準添加法が「最後の手段」である理由、 黒鉛炉の灰化温度のジレンマ、そしてバックグラウンド補正4方式それぞれの代償を、一次資料の数値で追う。

元素分析法の全体像 ― AAS・ICP-OES・ICP-MS・XRF は、規制値が決める【2026年版】

元素分析法の全体像 ― AAS・ICP-OES・ICP-MS・XRF は、規制値が決める【2026年版】

元素分析には原子吸光(AAS)、ICP発光分光(ICP-OES)、ICP質量分析(ICP-MS)、蛍光X線(XRF)という 4つの主要手法がある。どれを選ぶかは「感度が高いほど良い」という話ではなく、 管理すべき規制値を試料の希釈率で割り戻した濃度を、その装置が定量できるかどうかで決まる。 本記事は第十九改正日本薬局方の一般試験法〈2.63〉〈2.23〉〈2.66〉と ICH Q3D(R2)、USP〈232〉〈233〉を原典で確認し、 さらにメーカー公式の元素別検出下限表を使って、経口製剤の鉛管理を例に必要な検出下限を逆算する。 結果として、ICP-OES はカタログ上の理想条件でも定量限界の要件を満たさない場面があることが数字で出る。 薬局方が装置性能の判定値を ICP にだけ置いている理由も、この計算から見えてくる。

蛍光分光の実務 ― その蛍光強度は、その装置でしか意味を持たない【2026年版】
分光

蛍光分光の実務 ― その蛍光強度は、その装置でしか意味を持たない【2026年版】

蛍光分光は、分析化学で最も感度の高い測定法のひとつでありながら、 出てくる数値が最も装置依存的な測定法でもある。日本薬局方の一般試験法〈2.22〉蛍光光度法には、 波長確度の判定値も感度の判定値も、数値がひとつも書かれていない。書かれているのは 「標準溶液で 60〜80% 目盛りに合わせよ」という相対測定の手続きだけである。 一方の米国薬局方〈853〉は原子輝線・ホルミウム・水のラマン線・NIST 標準物質を並べて数値を置いている。 この落差には理由がある。蛍光強度という量の定義式には、装置側の定数がそのまま居座っているからだ。 本記事は JP19〈2.22〉と USP〈853〉の条文、NIST の相対強度標準の証明書、 主要5メーカーの感度仕様を原典で確認し、蛍光の数値がどこまで信用できるのかを実務の順に整理する。

分光装置の適格性評価と波長校正 ― 波長が合っていることは、その数値が正しいことを意味しない【2026年版】
分光

分光装置の適格性評価と波長校正 ― 波長が合っていることは、その数値が正しいことを意味しない【2026年版】

「校正済みです」という一文は、実務では驚くほど何も保証していない。米国薬局方〈1058〉は、 信頼できるデータが4つの層でできていると定義する。装置適格性評価が土台にあり、その上に分析法バリデーション、 システム適合性試験、品質管理チェック試料が積まれる。波長校正はこの一番下の層の、さらに一部でしかない。 そのうえ、校正の基準そのものが揺れている。NIST は最も基本的な吸光度標準 SRM 930x・1930・2930 を販売終了し、 紫外用の液体吸光度標準 1935x は認証そのものが失効した。近赤外の 2035 も認証が切れ、2035x に置き換わっている。 一方でホルミウムの吸収帯位置は「内在標準」と宣言され、標準物質という商品が消えても値は残った。 本記事は USP〈1058〉の原文、NIST の標準物質プログラム、SP 260-192 を原典で確認し、 「校正」「検証」「適格性評価」「バリデーション」が何をどこまで保証するのかを実務の順に整理する。

近赤外分光(NIR)とPAT ― その数値を出しているのは、装置ではなくモデルである【2026年版】
分光

近赤外分光(NIR)とPAT ― その数値を出しているのは、装置ではなくモデルである【2026年版】

NIR は前処理なしで粉体の数mm奥まで潜り、非破壊で水分も含量も出す。だが装置が出しているのは スペクトルであって数値ではない。含量 98.7% という値を出しているのは検量モデルであり、 そのモデルは参照分析法の値を教師として作られている。だから日本薬局方〈2.27〉は 「既存の分析法を基準として比較試験を行い、その同等性を確認しておく必要がある」と書き、 EMA のガイドラインは NIRS を method・model・procedure の三層に分け、 「Ph.Eur. 2.2.40 を引用するだけでは不十分」と明言する。ICH Q2(R2)(2023年)は 多変量分析法を正式にバリデーションの対象に取り込んだ。本記事は JP〈2.27〉原案・EMA ガイドライン・ ICH Q2(R2)・メーカー技術資料・査読論文を原典で確認し、NIR を PAT として運用するときに 効いてくる条件を、装置ではなくモデルと手順の側から整理する。

FTIR とラマンの使い分け ― 選ぶ基準は「何が見えるか」ではなく「何に殺されるか」【2026年版】
分光

FTIR とラマンの使い分け ― 選ぶ基準は「何が見えるか」ではなく「何に殺されるか」【2026年版】

FTIR とラマンの使い分けは「官能基なら赤外、骨格ならラマン」と説明される。だが実務でその説明が 役に立つ場面は少ない。相互排除則があるので、そもそも両者は競合していないからである。 実際に選択を決めているのは「何が見えるか」ではなく「何がその測定を殺すか」である。 FTIR を殺すのは水、深さ、そして容器 ―― ATR は表面 2 µm しか見ず、赤外の回折限界は 7.4〜3.7 µm で、実用上 20 µm 未満の粒子は捉えにくく、容器越しには測れない。 ラマンを殺すのは蛍光と焼損 ―― 着色試料や環境試料では蛍光がスペクトルを覆い、 焦点のパワー密度は試料を分解しうる。一方でラマンだけが容器を開けずに中身を同定でき、 これが原料の全数受入試験を成立させている。本記事は両者の失敗モードを原典の数値で並べ、 決定フローとして整理する。

UV-Vis分光光度計の実務と日本薬局方〈2.24〉 ― その吸光度は、装置が測った数字ではない【2026年版】
分光

UV-Vis分光光度計の実務と日本薬局方〈2.24〉 ― その吸光度は、装置が測った数字ではない【2026年版】

UV-Vis は最も簡単な分光装置とされる。セルに入れてボタンを押せば吸光度が出る。 だがその「0.523」という数字は、装置が測った量ではない。装置が測っているのは光の強度比であり、 吸光度はその対数である。そして表示される値は、スリット幅(スペクトルバンド幅)と、 セルの材質と光路長と、校正の状態という、すべて人が選んだ条件の上に乗っている。 スペクトルバンド幅は吸収帯の固有幅の10分の1以下が推奨され、石英セルなら200 nmまで測れるが 光学ガラスセルは360 nmまでしか透過しない。日本薬局方〈2.24〉は3回測定で波長を標準値の±0.5 nm以内、 各値を平均±0.2 nm以内、吸光度を0.500以下で平均±0.002以内と定める。本記事はこれらを原典で確認し、 「吸光度という数字が何に依存しているか」を実務の順に整理する。

FTIR徹底解説 ― 「分解能 4 cm⁻¹」が意味するものは、一つに決まっていない【2026年版】
分光

FTIR徹底解説 ― 「分解能 4 cm⁻¹」が意味するものは、一つに決まっていない【2026年版】

FTIR のメソッドに「分解能 4 cm⁻¹」と書くとき、その数字が何を保証しているかを説明できるだろうか。 実のところ分解能は装置が持つ固有の物理量ではなく、三つの層で意味が変わる取り決めである。 第一に光路差の逆数が上限を決めるが、実際の係数はアポダイゼーション関数が決めており、 同じ鏡の移動距離でも 0.68/L から 1.16/L まで動く。第二にその関数の選択で分解能・ピーク高さ・ リップルが同時に動く。第三に薬局方の「分解能試験」は cm⁻¹ ではなく ポリスチレンフィルムの二点間の吸光度差で定義されており、しかも日本薬局方・欧州薬局方・USP・ インド薬局方で合否基準がすべて違う。本記事は干渉計とフーリエ変換の原理から、分解能と S/N の トレードオフ、アポダイゼーション、局方ごとの適格性評価基準、そして ATR 結晶の選択までを 原典で確認し、装置の前で何を決めているのかを整理する。

ラマン分光徹底解説 ― 励起波長は「感度」だけを決めているのではない【2026年版】
分光

ラマン分光徹底解説 ― 励起波長は「感度」だけを決めているのではない【2026年版】

ラマン装置の励起波長は、たいてい「感度と蛍光のどちらを取るか」で説明される。 だが実際には、波長を選んだ時点で四つのものが同時に決まっている ―― 散乱効率、空間分解能、蛍光、 そして試料を焼くかどうかである。空間分解能は 0.61λ/NA で決まるので、1064 nm を選べば 532 nm の約2倍粗くなる。試料損傷を決めるのはレーザーの出力ではなくパワー密度で、 10 mW を 1 µm に絞れば 10⁶ W/cm² の桁に達し、鉛丹が分解し始めるとされる 5.1×10⁴ W/cm² を 1桁以上超える。つまり対物レンズを上げて分解能を稼ぐ操作は、同じ操作で試料を焼くリスクを上げている。 本記事は励起波長と対物レンズが同時に動かす四つの量を原典の数値で確認し、後方散乱と透過ラマンの 違い、増強法の代償、そして欧州薬局方 2.2.48 の要件までを、装置の前で決める順序に沿って整理する。

分光分析の全体像 ― FTIR・ラマン・UV-Vis・NIR は「違う深さ」を見ている【2026年版】
分光

分光分析の全体像 ― FTIR・ラマン・UV-Vis・NIR は「違う深さ」を見ている【2026年版】

FTIR・ラマン・UV-Vis・NIR の使い分けは、たいてい「何を測りたいか」で説明される。 だが実務でいちばん効くのは別の軸である ―― この4つは同じ固体を測っても、見ている深さが3桁違う。 ATR-FTIR の潜り込み深さは 1000 cm⁻¹ で約2 µm、2000 cm⁻¹ では約1 µm しかない。 一方で日本薬局方〈2.27〉は、近赤外について「粉体を含む固体試料中、数mmの深さまで侵入することができる」と書く。 表面の2 µm を見る装置と、内部の数 mm を見る装置は、同じ試料の別のものを測っている。 本記事は選択律と相互排除則、ATRの潜り込み深さ、ラマンの励起波長のλ⁻⁴問題、 近赤外が「代替法」として同等性確認を求められる理由、そして日本薬局方・USP・欧州薬局方の 公定要件までを原典で確認し、4手法を選ぶ順序として整理する。

ラボ自動化とLIMS/ELNの選び方 ― 選定でいちばん効くのは「出るときの条件」【2026年版】
データ解析

ラボ自動化とLIMS/ELNの選び方 ― 選定でいちばん効くのは「出るときの条件」【2026年版】

LIMS や ELN の選定は、機能比較表を並べる作業だと思われている。だが導入から10年後に効いてくるのは、 入れた機能ではなく「そのシステムからデータを取り戻せるか」である。しかもこれは筆者の意見ではない。 EU が2025年に公開した GMP Annex 11 改訂ドラフトは、外部サービスとの契約に 「規制当事者がシステムデータの管理を保持できる出口戦略」を定めよと明記した。PIC/S は メタデータが失われる恐れがあるなら PDF 化は禁止されるべきと書き、移行によって動的機能が 失われうることを認めている。本記事は 21 CFR Part 11・PIC/S PI 041-1・EU Annex 11 改訂ドラフト・ 厚労省コンピュータ化システム適正管理ガイドラインを原典で読み、LIMS/ELN/LES/SDMS/CDS の役割分担、 カテゴリ分類とカスタマイズの代償、機器接続の標準(SiLA 2・AnIML・Allotrope)、 そして自律実験ラボの現在地までを、選定の順序に沿って整理する。

定量LC-MS/MSのメソッド開発 ― MRM最適化に「最大化してよい量」はひとつもない【2026年版】
質量分析

定量LC-MS/MSのメソッド開発 ― MRM最適化に「最大化してよい量」はひとつもない【2026年版】

MRM の最適化は「感度を最大にする作業」だと思われている。だが実際に最大化できる量はひとつもない。 ドウェル時間を伸ばせばサイクル時間が延びてピークの点数が減り、点数を稼ごうとドウェルを削れば イオン統計が痩せる。トランジションを増やせば同時監視数が増えて両方が悪化する。メーカー自身の 技術資料が「多重化を3倍にする2つの方法」として示している図は、どちらを選んでも別の何かが壊れる という図である。本記事は SANTE のイオン選択条文、SCIEX のサイクル時間の式、島津の実測 %RSD、 Thermo の血清中103トランジションのデータを原典で確認し、トランジション選択・コリジョンエネルギー・ Q1分解能・ドウェルとサイクルの算術・スケジュール MRM・クロストークまでを、装置の前で決める順序に沿って整理する。

GC-MS/MS 残留農薬分析の実務 ― マトリックス効果が「増強」に転ぶGCでは、対処も逆になる【2026年版】
質量分析

GC-MS/MS 残留農薬分析の実務 ― マトリックス効果が「増強」に転ぶGCでは、対処も逆になる【2026年版】

LC-MS/MS のマトリックス効果は「抑制」だが、GC のそれは多くの場合「増強」である。原因も違う。 イオン化の競合ではなく、注入口とカラム先端の活性点をマトリックスが埋めてしまい、 溶媒標準では失われていた分析種が試料中では失われずに済む ―― つまり標準側が低いのだ。 符号が逆なので、対処も逆向きになる。EU の SANTE ガイダンス自身が「マトリックスマッチ検量線は LC-MS より GC でこそ効く」と書いており、GC 固有の解としてアナライトプロテクタントを名指ししている。 ただし 2026 年、EURL-FV が参画した論文が「糖・糖ラクトンを使う従来のアナライトプロテクタントは 反復注入のルーチンには適さない」と報告した。規制側も動いており、SANTE/11312/2021 の v2026 では 同定基準から S/N ≥ 3 が取り消し線とともに消えている。本記事は SANTE v2026・日本の通知試験法と 妥当性評価ガイドライン・告示を原典で開いて確認し、前処理から水素キャリアガスまでを整理する。

移動相・緩衝液調製の実務 ― その pH は、どこで測った値か

移動相・緩衝液調製の実務 ― その pH は、どこで測った値か

「移動相の pH は ±0.2 以内」。薬局方が許す調整範囲としてよく引かれる数字だが、その pH が どこで測った値なのかは意外に意識されていない。日本薬局方は「移動相の水系組成の pH」、 USP は「移動相の調製に用いる水性緩衝液の pH」と書いている ―― どちらも有機溶媒を混ぜる前の値である。 ところが分析種の解離を実際に支配するのは混合後の pH で、両者は別物だ。混合溶媒中の pH には 三つのスケールがあり、しかも熱力学的に正しいスケールは 25℃ 以外では標準緩衝液が存在しないため 直接測れない。2024年には「異なる組成の移動相の pH は本来比較できない」として統一 pH の提案も出た。 本記事は JP19 と USP〈621〉の条文、pH スケールの原著、緩衝塩の溶解限界の実測データを原典で確認し、 緩衝液の選び方・濃度・析出・混合方式・調製法までを整理する。

イオンクロマトグラフィー徹底解説 ― 感度を決めているのはカラムではなくサプレッサである【2026年版】

イオンクロマトグラフィー徹底解説 ― 感度を決めているのはカラムではなくサプレッサである【2026年版】

イオンクロマトグラフィー(IC)は「HPLCの一種」と説明されがちだが、 実際には検出の問題を解くために独自の装置系を発達させた別種の技術である。 溶離液そのものが導電性なので、電気伝導度で検出するには溶離液を先に消す必要がある。 この「消す」装置がサプレッサで、ICの感度・ベースライン・トラブルのほとんどはここで決まる。 本記事は、サプレッサ電流の計算式(メーカーマニュアルの実式)、電解式溶離液生成の到達濃度、 4 µm粒子カラムが高圧ICを要求する理由、EPA/ISO公定法の検出限界の実数、 そしてマトリックス除去カートリッジの「洗いすぎると回収率が落ちる」実測表までを、 一次資料で確認して整理する。

前処理・SPEカラムの選び方 ― pKaで収着剤が決まり、ベッド質量で上限が決まる【2026年版】

前処理・SPEカラムの選び方 ― pKaで収着剤が決まり、ベッド質量で上限が決まる【2026年版】

SPEカートリッジのカタログは、収着剤名と充填量が並ぶだけで「どれを選べばいいか」を教えてくれない。 しかし選択のロジック自体は単純で、分析対象の pKa が収着剤の種類を決め、収着剤の質量が 処理できる試料量の上限を決め、ベッドボリュームが必要な溶媒量を決める。 本記事は、シリカC18をポリマー系が置き換えた理由(水濡れ性)、強/弱イオン交換を pKa で選ぶ規則、 「ベッド質量の5%(シリカ)〜10%(ポリマー)」という容量則、乾固を省くµElutionの実測差、 そしてSPE・SLE・LLEを同一試料で比較したメーカー実測データを、一次資料で確認して整理する。 あわせて、ICH M10 が回収率について何を要求し、何を要求していないかを条文で確認する。

分析法バリデーションが30年ぶりに変わった ― ICH Q2(R2)とQ14の国内適用を条文で読む【2026年版】

分析法バリデーションが30年ぶりに変わった ― ICH Q2(R2)とQ14の国内適用を条文で読む【2026年版】

分析法バリデーションの拠り所だった平成7年・平成9年の2通知(旧Q2A・旧Q2B)が統合され、 令和7年10月9日付けで「分析法バリデーションに関するガイドライン」として置き換わった。 同日、まったく新しい「分析法の開発に関するガイドライン」(ICH Q14)も発出されている。 本記事は、通知本文が列挙する7つの改正点を原文で示したうえで、「範囲」から「報告値範囲」への 用語の変化、真度と精度を組み合わせて評価してよくなったこと、そして頑健性とシステム適合性が Q2からQ14へ移動したという構造変化を整理する。さらにQ14のATP・エスタブリッシュトコンディションが 承認後の変更にどう効くのかまで、条文に即して扱う。

元素不純物とICP-MS ― JP19〈2.66〉が三薬局方調和になり、日局独自規定が見えるようになった【2026年版】
質量分析

元素不純物とICP-MS ― JP19〈2.66〉が三薬局方調和になり、日局独自規定が見えるようになった【2026年版】

第十九改正日本薬局方(JP19)で一般試験法〈2.66 元素不純物〉が改正された。改正されたのは 「II. 元素不純物試験法」で、薬局方調和国際会議において新規に調和合意された内容が反映され、 三薬局方で調和された部分と日本薬局方が独自に規定する部分が条文上で区別されるようになった。 JP18と条文を突き合わせると判定基準の数値は変わっていない――変わったのは位置づけである。 本記事では改正の中身を原文で示し、あわせて元素不純物分析の実務を整理する。クラスとPDE、 目標限度値とJ、分析手順1(ICP-OES)と手順2(ICP-MS)の使い分け、密閉容器マイクロ波分解、 アルゴン塩化物によるヒ素の干渉とコリジョン/リアクションセル、そしてバリデーション要件まで。

ICH M10バイオアナリシス実務 ― 旧2通知は廃止、移行期間も終わった今の判定基準【2026年版】
質量分析

ICH M10バイオアナリシス実務 ― 旧2通知は廃止、移行期間も終わった今の判定基準【2026年版】

生体試料中の薬物濃度を測るバイオアナリシスは、ICH M10ガイドラインが2024年12月4日に 国内通知され、従来のクロマトグラフィー法・リガンド結合法の2通知は廃止された。旧通知でも よいとされた移行期間は令和7年9月30日開始分までで、すでに終了している。つまり現在はM10一本である。 本記事では通知と原文を根拠に、適用範囲、フル/パーシャル/クロスバリデーションの使い分け、 検量線の6濃度・75%ルール、真度精度の±15%(定量下限±20%)、実試料分析の受入基準、 マトリックス効果とキャリーオーバー、そしてISR(実試料再分析)の実施規模と判定基準までを実務の順に整理する。

JP19 クロマトグラフィー総論〈2.00〉 ― SN比の改正と、公定法で「条件を変えてよい」範囲【2026年版】

JP19 クロマトグラフィー総論〈2.00〉 ― SN比の改正と、公定法で「条件を変えてよい」範囲【2026年版】

第十九改正日本薬局方(JP19)が2026年4月10日に告示・同日施行された。改正された 一般試験法19項目の筆頭がクロマトグラフィー総論〈2.00〉で、その中身はSN比の計算法の改正 ――ノイズ測定範囲が「半値幅の20倍」から「少なくとも5倍」へ一本化された。本記事では この改正点を原文で確認したうえで、〈2.00〉の実務的な本体である「4. クロマトグラフィー条件の調整」 を読み解く。L/dp の −25%〜+50%、流量・注入量・グラジエント時間の換算式、温度やpHの許容幅、 そして変えてはいけないもの。公定法を再バリデーションなしでどこまで速くできるのかを、 条文の数値に基づいて整理する。

残留溶媒分析の実務 ― ICH Q3C(R9)がJP19〈2.46〉に入り、乾燥減量の使い方が変わった【2026年版】

残留溶媒分析の実務 ― ICH Q3C(R9)がJP19〈2.46〉に入り、乾燥減量の使い方が変わった【2026年版】

第十九改正日本薬局方(JP19)で一般試験法〈2.46 残留溶媒〉が改正された。中身は ICH Q3C(R9)の国内実装で、変わったのは「分析方法」のたった数十文字――クラス3の溶媒しか ないときに乾燥減量のような非特異的方法を使う条件が明確化され、バリデーションで 溶媒の揮発性の影響を考慮することが求められるようになった。本記事では条文の差分を原文で示し、 そのうえで残留溶媒分析の全体像――3つのクラスと限度値、オプション1と2、ヘッドスペースGCの 標準条件、操作法A/B/Cの使い分け、そしてヘッドスペース法が効かない7つの溶媒――を実務の順に整理する。

【2026年4月施行】PFAS分析の実務ガイド ― 水質基準50 ng/L対応とLC-MS/MSの勘所
質量分析

【2026年4月施行】PFAS分析の実務ガイド ― 水質基準50 ng/L対応とLC-MS/MSの勘所

2026年4月1日、PFOS・PFOAが水道水の水質基準項目に格上げされ、水質検査が努力義務から 法的義務になる。基準値は合算50 ng/L、検査頻度はおおむね3か月に1回以上。本記事は、告示法 (別表第45)の改正で何が変わったか(濃縮倍率10〜1000倍の柔軟化、標準液の冷凍6か月保存)を 押さえたうえで、ng/Lオーダーの定量を成立させる4つの技術的勘所 ― 固相抽出(WAX系/SDVB系)、 13C標識内部標準による同位体希釈法、PTFE排除とデイレイカラムによる装置由来汚染対策、 分岐異性体の扱い ― を実務目線で解説する。さらにTOPアッセイ・AOFといった総量指標と、 それらが捉えられない超短鎖TFAという死角、EPA・ISO・EU DWDとの国際比較までを整理する。