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23 件の記事

異物分析の手法選択 ― 局方は「何個あるか」までしか決めておらず、「何であるか」は分析者に委ねられている【2026年版】
分光

異物分析の手法選択 ― 局方は「何個あるか」までしか決めておらず、「何であるか」は分析者に委ねられている【2026年版】

注射剤に異物が見つかったとき、逸脱調査が問うのは「それが何で、どこから来たか」である。ところが日本薬局方にも欧米局方にも、その問いに答える方法は一つも書かれていない。局方が決めているのは、照度と背景と観察秒数、そして 10 µm 以上が何個あるかまでである。しかも目視の下限(各社が 100〜200 µm で自分で決める)と光遮蔽法の上限(約 100 µm)は重ならず、50〜150 µm には「どちらの方法でも確実には捕まらない」灰色地帯が残る。USP の Stimuli 論文は、可視と不可視というこの区分が「利用可能な技術の限界だけに基づいており、患者への影響の科学的理解に依拠していない」と書いた。FTIR 顕微・ラマン顕微・SEM-EDS・O-PTIR は、この空白を埋めるために選ぶ道具である。粒子径・材質・水・蛍光・真空という5つの制約から、どれをどの順で当てるかを、原典の数値で決める。

CHN元素分析とハロゲン・硫黄分析 ― 燃やして出てくるのは、元素の量ではなく「手順が決めた量」【2026年版】

CHN元素分析とハロゲン・硫黄分析 ― 燃やして出てくるのは、元素の量ではなく「手順が決めた量」【2026年版】

試料を燃やして炭素・水素・窒素を測る。原理は 100 年前から変わらない。だから「元素の絶対量が出る」と 思われがちだが、実際に出てくるのはそうではない。合成化学の論文で純度の証拠として使われる ±0.4% という 判定線は、文献をたどっても誰がいつ決めたのか分からない。同じ高純度試薬を 18 のラボへ送った 2022 年の 国際共同試験では、436 のデータ点のうち 10.78 % がその線を外れ、炭素だけなら 16.44 % が外れた。試料は どれも表示どおり純粋だったのに、である。さらに 2024 年の試算では、完璧に測ったとしてもトリプトファンの 分子式を 26 % の確率で取り違える。一方ハロゲン・硫黄側では、米国 EPA が PFAS スクリーニング法の冒頭に 「AOF は手法そのものが定義する量(method-defined parameter)である」と明記した。炭素数 4 未満は活性炭に 残らず、炭素数 8 超は容器壁に貼りつく。どちらの側でも、燃焼分析が返すのは「元素の量」ではなく 「その手順で捕まえられた分」である。CHN の判定線、燃え残ったフッ素が窒素に化ける仕組み、酸素フラスコ 燃焼法から燃焼イオンクロマトグラフィーへの流れ、そしてケルダールとデュマで窒素の値がずれる理由までを、 一次資料の数値で追う。

SEC/GPC(サイズ排除)徹底解説 ― その分子量は、標準物質と条件に依存すると局方が書いている【2026年版】

SEC/GPC(サイズ排除)徹底解説 ― その分子量は、標準物質と条件に依存すると局方が書いている【2026年版】

サイズ排除クロマトグラフィー(SEC/GPC)は、分子量を測る方法として使われている。だが日本薬局方 〈2.05〉は、分子量の求め方を説明した直後にこう書いている ――「得られた分子量は、用いた分子量標準物質と 分析条件に依存する」。これは注意書きではなく、この手法の定義そのものである。SEC が分けているのは分子量 ではなく溶液中の広がり(流体力学的体積)で、同じ溶出位置でも棒状のエポキシ樹脂はポリスチレンより 分子量が 40〜50 % 低い。しかも較正の前提は狭分散標準ですら成り立っておらず、30 kDa の単分散標準を 注入量 4 µL と 50 µL で流すと、較正曲線上は 10〜40 kDa と 20〜40 kDa という別々の「分布」に見える ―― 光散乱で測れば、どちらも 30 kDa 付近の狭い分布である。タンパク質側ではさらに厄介で、SEC は測って いる最中に試料を変える。精製した二量体を再注入すると単量体と三量体が生まれ、カラム通過で有意な質量が 失われる。ある抗体では完全回収に 400 mM の NaCl が必要だったが、別の報告では NaCl はむしろ損失を 増やしアルギニンが効いた。分離原理、較正の限界、光散乱による絶対測定、二次相互作用、凝集体分析の 落とし穴までを一次資料の数値で追う。

試料分解法の選び方 ― 公定法は「これは全分解ではない」と冒頭に書いている【2026年版】

試料分解法の選び方 ― 公定法は「これは全分解ではない」と冒頭に書いている【2026年版】

AAS も ICP-OES も ICP-MS も、測る前に試料を溶かさなければならない。その「溶かす」を、どこまでやるか。 EPA Method 3050B は適用範囲の第 2 項でこう宣言している ――「本法は、ほとんどの試料にとって全分解手法ではない」。 ケイ酸塩に結合した元素が溶けないのは失敗ではなく、設計である。実際、同じ堆積物標準物質で Cd・Ni・Pb は 96〜105 % 回収されるのに、Cr だけ 57〜63 % しか出てこない。日本薬局方〈2.66〉も「澄明な溶液が得られない場合は 回収率で保証せよ」とし、その判定幅を 70〜150 % に置いている。本記事は、分解法の選択が「正しい答え」の 定義そのものを変えることを、公定法の原文だけで追う。

XPS(X線光電子分光)徹底解説 ― 校正されているのは装置の目盛であって、試料のゼロ点ではない【2026年版】

XPS(X線光電子分光)徹底解説 ― 校正されているのは装置の目盛であって、試料のゼロ点ではない【2026年版】

XPS は 0.1 eV の化学シフトから化学状態を読む手法である。その目盛は ISO 15472 が Au・Ag・Cu の 3 点で 校正し、値は 83.96 / 368.21 / 932.62 eV と小数点以下 2 桁まで決まっている。ところが試料の側のゼロ点は そうではない。誰もが使う「C 1s = 284.8 eV」は、360 試料の実測で 2.89 eV も動いた ―― 多くの化学シフトより 大きい。しかもこの問題は決着していない。本記事は、エネルギー軸・情報深さ・定量確度という 3 つの軸で 「XPS の数字はどこまで信用できるか」を一次資料の数値だけで追う。3λ が 95 % なのか 99.7 % なのかも、 自分で計算して決着をつける。

XRD(粉末X線回折)と結晶多形 ― 「何 wt% まで測れるか」は、相ごとに違う【2026年版】

XRD(粉末X線回折)と結晶多形 ― 「何 wt% まで測れるか」は、相ごとに違う【2026年版】

日本薬局方に蛍光X線の一般試験法は無いが、粉末X線回折には〈2.58〉が5ページある。同じX線でこの差が出るのは、 XRD が「元素」ではなく「並び方」を測るからだ。JP19〈2.58〉を通読すると、判定値らしい判定値はひとつしかない ―― 「同一結晶形なら 2θ は 0.2° 以内で一致する」。ところがこの幅は、水和物・溶媒和物には適用されない。そして 実際のテオフィリンでは、12.5° と 12.7° という 0.2° 離れた2本が、別々の相だった。決着をつけたのは角度ではなく 「いつ出たか」である。本記事は、局方の 0.2°・装置の 0.03°・NIST 標準物質・リートベルト自動定量の偽陽性 30%・ 検出限界が 10% から 100 ppm まで3桁に散らばる理由を、すべて一次資料の数値で追う。

XRF(蛍光X線)徹底解説と選び方 ― 元素ごとに、見ている深さが違う【2026年版】

XRF(蛍光X線)徹底解説と選び方 ― 元素ごとに、見ている深さが違う【2026年版】

XRF の最大の売りは「前処理をしなくてよい」ことである。エアフィルターなら、目視点検以外に何もせずに 40 元素が測れる。だがその速さには代償がある ―― XRF は表面分析でもバルク分析でもなく、 「元素ごとに違う深さを見ているバルク分析」である。純元素で見ると Ti の K 線は 20 µm、Sn の K 線は 100 µm。 同じモリブデンでも K 線なら 60 µm、L 線なら 1.5 µm と 40 倍違う。そして L 線に切り替えると検出下限は 十数倍良くなる。感度と深さは同じつまみの両端にある。本記事は情報深さを軸に、励起条件・EDXRF と WDXRF の違い・ 試料調製・TXRF までを一次資料の数値で追い、最後に「なぜ日本薬局方に蛍光X線の一般試験法が無いのか」に戻る。

原子吸光(AAS)の実務 ― 薬局方が判定値をひとつも置かなかった試験法を、どう管理するか【2026年版】

原子吸光(AAS)の実務 ― 薬局方が判定値をひとつも置かなかった試験法を、どう管理するか【2026年版】

日本薬局方〈2.23〉原子吸光光度法には、装置性能の判定値がひとつもない。波長のずれも、吸光度の再現性も、 検出下限の下限値も規定されていない。では、この装置が正常に動いていることを何で示すのか。 答えは薬局方の外にある ―― 「特性濃度」、すなわち 1% 吸収(吸光度 0.0044)を与える濃度である。 メーカーは元素ごとにこの値を公表しており、実測値と比べれば装置が仕様どおりかが分かる。 本記事はこの自己診断を軸に、フレームの化学干渉、標準添加法が「最後の手段」である理由、 黒鉛炉の灰化温度のジレンマ、そしてバックグラウンド補正4方式それぞれの代償を、一次資料の数値で追う。

元素分析法の全体像 ― AAS・ICP-OES・ICP-MS・XRF は、規制値が決める【2026年版】

元素分析法の全体像 ― AAS・ICP-OES・ICP-MS・XRF は、規制値が決める【2026年版】

元素分析には原子吸光(AAS)、ICP発光分光(ICP-OES)、ICP質量分析(ICP-MS)、蛍光X線(XRF)という 4つの主要手法がある。どれを選ぶかは「感度が高いほど良い」という話ではなく、 管理すべき規制値を試料の希釈率で割り戻した濃度を、その装置が定量できるかどうかで決まる。 本記事は第十九改正日本薬局方の一般試験法〈2.63〉〈2.23〉〈2.66〉と ICH Q3D(R2)、USP〈232〉〈233〉を原典で確認し、 さらにメーカー公式の元素別検出下限表を使って、経口製剤の鉛管理を例に必要な検出下限を逆算する。 結果として、ICP-OES はカタログ上の理想条件でも定量限界の要件を満たさない場面があることが数字で出る。 薬局方が装置性能の判定値を ICP にだけ置いている理由も、この計算から見えてくる。

蛍光分光の実務 ― その蛍光強度は、その装置でしか意味を持たない【2026年版】
分光

蛍光分光の実務 ― その蛍光強度は、その装置でしか意味を持たない【2026年版】

蛍光分光は、分析化学で最も感度の高い測定法のひとつでありながら、 出てくる数値が最も装置依存的な測定法でもある。日本薬局方の一般試験法〈2.22〉蛍光光度法には、 波長確度の判定値も感度の判定値も、数値がひとつも書かれていない。書かれているのは 「標準溶液で 60〜80% 目盛りに合わせよ」という相対測定の手続きだけである。 一方の米国薬局方〈853〉は原子輝線・ホルミウム・水のラマン線・NIST 標準物質を並べて数値を置いている。 この落差には理由がある。蛍光強度という量の定義式には、装置側の定数がそのまま居座っているからだ。 本記事は JP19〈2.22〉と USP〈853〉の条文、NIST の相対強度標準の証明書、 主要5メーカーの感度仕様を原典で確認し、蛍光の数値がどこまで信用できるのかを実務の順に整理する。

近赤外分光(NIR)とPAT ― その数値を出しているのは、装置ではなくモデルである【2026年版】
分光

近赤外分光(NIR)とPAT ― その数値を出しているのは、装置ではなくモデルである【2026年版】

NIR は前処理なしで粉体の数mm奥まで潜り、非破壊で水分も含量も出す。だが装置が出しているのは スペクトルであって数値ではない。含量 98.7% という値を出しているのは検量モデルであり、 そのモデルは参照分析法の値を教師として作られている。だから日本薬局方〈2.27〉は 「既存の分析法を基準として比較試験を行い、その同等性を確認しておく必要がある」と書き、 EMA のガイドラインは NIRS を method・model・procedure の三層に分け、 「Ph.Eur. 2.2.40 を引用するだけでは不十分」と明言する。ICH Q2(R2)(2023年)は 多変量分析法を正式にバリデーションの対象に取り込んだ。本記事は JP〈2.27〉原案・EMA ガイドライン・ ICH Q2(R2)・メーカー技術資料・査読論文を原典で確認し、NIR を PAT として運用するときに 効いてくる条件を、装置ではなくモデルと手順の側から整理する。

UV-Vis分光光度計の実務と日本薬局方〈2.24〉 ― その吸光度は、装置が測った数字ではない【2026年版】
分光

UV-Vis分光光度計の実務と日本薬局方〈2.24〉 ― その吸光度は、装置が測った数字ではない【2026年版】

UV-Vis は最も簡単な分光装置とされる。セルに入れてボタンを押せば吸光度が出る。 だがその「0.523」という数字は、装置が測った量ではない。装置が測っているのは光の強度比であり、 吸光度はその対数である。そして表示される値は、スリット幅(スペクトルバンド幅)と、 セルの材質と光路長と、校正の状態という、すべて人が選んだ条件の上に乗っている。 スペクトルバンド幅は吸収帯の固有幅の10分の1以下が推奨され、石英セルなら200 nmまで測れるが 光学ガラスセルは360 nmまでしか透過しない。日本薬局方〈2.24〉は3回測定で波長を標準値の±0.5 nm以内、 各値を平均±0.2 nm以内、吸光度を0.500以下で平均±0.002以内と定める。本記事はこれらを原典で確認し、 「吸光度という数字が何に依存しているか」を実務の順に整理する。

FTIR徹底解説 ― 「分解能 4 cm⁻¹」が意味するものは、一つに決まっていない【2026年版】
分光

FTIR徹底解説 ― 「分解能 4 cm⁻¹」が意味するものは、一つに決まっていない【2026年版】

FTIR のメソッドに「分解能 4 cm⁻¹」と書くとき、その数字が何を保証しているかを説明できるだろうか。 実のところ分解能は装置が持つ固有の物理量ではなく、三つの層で意味が変わる取り決めである。 第一に光路差の逆数が上限を決めるが、実際の係数はアポダイゼーション関数が決めており、 同じ鏡の移動距離でも 0.68/L から 1.16/L まで動く。第二にその関数の選択で分解能・ピーク高さ・ リップルが同時に動く。第三に薬局方の「分解能試験」は cm⁻¹ ではなく ポリスチレンフィルムの二点間の吸光度差で定義されており、しかも日本薬局方・欧州薬局方・USP・ インド薬局方で合否基準がすべて違う。本記事は干渉計とフーリエ変換の原理から、分解能と S/N の トレードオフ、アポダイゼーション、局方ごとの適格性評価基準、そして ATR 結晶の選択までを 原典で確認し、装置の前で何を決めているのかを整理する。

ラマン分光徹底解説 ― 励起波長は「感度」だけを決めているのではない【2026年版】
分光

ラマン分光徹底解説 ― 励起波長は「感度」だけを決めているのではない【2026年版】

ラマン装置の励起波長は、たいてい「感度と蛍光のどちらを取るか」で説明される。 だが実際には、波長を選んだ時点で四つのものが同時に決まっている ―― 散乱効率、空間分解能、蛍光、 そして試料を焼くかどうかである。空間分解能は 0.61λ/NA で決まるので、1064 nm を選べば 532 nm の約2倍粗くなる。試料損傷を決めるのはレーザーの出力ではなくパワー密度で、 10 mW を 1 µm に絞れば 10⁶ W/cm² の桁に達し、鉛丹が分解し始めるとされる 5.1×10⁴ W/cm² を 1桁以上超える。つまり対物レンズを上げて分解能を稼ぐ操作は、同じ操作で試料を焼くリスクを上げている。 本記事は励起波長と対物レンズが同時に動かす四つの量を原典の数値で確認し、後方散乱と透過ラマンの 違い、増強法の代償、そして欧州薬局方 2.2.48 の要件までを、装置の前で決める順序に沿って整理する。

分光分析の全体像 ― FTIR・ラマン・UV-Vis・NIR は「違う深さ」を見ている【2026年版】
分光

分光分析の全体像 ― FTIR・ラマン・UV-Vis・NIR は「違う深さ」を見ている【2026年版】

FTIR・ラマン・UV-Vis・NIR の使い分けは、たいてい「何を測りたいか」で説明される。 だが実務でいちばん効くのは別の軸である ―― この4つは同じ固体を測っても、見ている深さが3桁違う。 ATR-FTIR の潜り込み深さは 1000 cm⁻¹ で約2 µm、2000 cm⁻¹ では約1 µm しかない。 一方で日本薬局方〈2.27〉は、近赤外について「粉体を含む固体試料中、数mmの深さまで侵入することができる」と書く。 表面の2 µm を見る装置と、内部の数 mm を見る装置は、同じ試料の別のものを測っている。 本記事は選択律と相互排除則、ATRの潜り込み深さ、ラマンの励起波長のλ⁻⁴問題、 近赤外が「代替法」として同等性確認を求められる理由、そして日本薬局方・USP・欧州薬局方の 公定要件までを原典で確認し、4手法を選ぶ順序として整理する。

移動相・緩衝液調製の実務 ― その pH は、どこで測った値か

移動相・緩衝液調製の実務 ― その pH は、どこで測った値か

「移動相の pH は ±0.2 以内」。薬局方が許す調整範囲としてよく引かれる数字だが、その pH が どこで測った値なのかは意外に意識されていない。日本薬局方は「移動相の水系組成の pH」、 USP は「移動相の調製に用いる水性緩衝液の pH」と書いている ―― どちらも有機溶媒を混ぜる前の値である。 ところが分析種の解離を実際に支配するのは混合後の pH で、両者は別物だ。混合溶媒中の pH には 三つのスケールがあり、しかも熱力学的に正しいスケールは 25℃ 以外では標準緩衝液が存在しないため 直接測れない。2024年には「異なる組成の移動相の pH は本来比較できない」として統一 pH の提案も出た。 本記事は JP19 と USP〈621〉の条文、pH スケールの原著、緩衝塩の溶解限界の実測データを原典で確認し、 緩衝液の選び方・濃度・析出・混合方式・調製法までを整理する。

LC検出器の選び方 ― 「ダイナミックレンジ4桁」は「直線範囲4桁」ではない【2026年版】

LC検出器の選び方 ― 「ダイナミックレンジ4桁」は「直線範囲4桁」ではない【2026年版】

LC検出器の選定は、まず「発色団があるか」で分岐する。無ければ RI・ELSD・CAD といったユニバーサル検出器に 進むが、そこからカタログの数字が急に読みにくくなる。CAD の「ダイナミックレンジ4桁」は、Thermo 自身の技術資料に 「準直線なのは 1.5〜2 桁だけ」と書かれている。ELSD の検出限界は減衰設定ごとに変わる。そして両者とも非線形なので、 高濃度標準1点から S/N を外挿した検出限界は「completely meaningless」だと、そのメーカー自身が明言している (実測では外挿値と実測値が 5〜13 倍ずれた)。本記事は Agilent・Waters・Thermo の仕様書と技術資料、 そして査読論文を原典で確認し、ノイズ仕様がなぜ横並び比較できないのか、光路長と分散のトレードオフ、 蛍光検出器のカタログに「>500」と「>3000」が併記される理由、そして UHPLC でセル容量とデータ収集速度が どこまで効くのかを、数値で整理する。

分析法バリデーションが30年ぶりに変わった ― ICH Q2(R2)とQ14の国内適用を条文で読む【2026年版】

分析法バリデーションが30年ぶりに変わった ― ICH Q2(R2)とQ14の国内適用を条文で読む【2026年版】

分析法バリデーションの拠り所だった平成7年・平成9年の2通知(旧Q2A・旧Q2B)が統合され、 令和7年10月9日付けで「分析法バリデーションに関するガイドライン」として置き換わった。 同日、まったく新しい「分析法の開発に関するガイドライン」(ICH Q14)も発出されている。 本記事は、通知本文が列挙する7つの改正点を原文で示したうえで、「範囲」から「報告値範囲」への 用語の変化、真度と精度を組み合わせて評価してよくなったこと、そして頑健性とシステム適合性が Q2からQ14へ移動したという構造変化を整理する。さらにQ14のATP・エスタブリッシュトコンディションが 承認後の変更にどう効くのかまで、条文に即して扱う。

元素不純物とICP-MS ― JP19〈2.66〉が三薬局方調和になり、日局独自規定が見えるようになった【2026年版】
質量分析

元素不純物とICP-MS ― JP19〈2.66〉が三薬局方調和になり、日局独自規定が見えるようになった【2026年版】

第十九改正日本薬局方(JP19)で一般試験法〈2.66 元素不純物〉が改正された。改正されたのは 「II. 元素不純物試験法」で、薬局方調和国際会議において新規に調和合意された内容が反映され、 三薬局方で調和された部分と日本薬局方が独自に規定する部分が条文上で区別されるようになった。 JP18と条文を突き合わせると判定基準の数値は変わっていない――変わったのは位置づけである。 本記事では改正の中身を原文で示し、あわせて元素不純物分析の実務を整理する。クラスとPDE、 目標限度値とJ、分析手順1(ICP-OES)と手順2(ICP-MS)の使い分け、密閉容器マイクロ波分解、 アルゴン塩化物によるヒ素の干渉とコリジョン/リアクションセル、そしてバリデーション要件まで。

ICH M10バイオアナリシス実務 ― 旧2通知は廃止、移行期間も終わった今の判定基準【2026年版】
質量分析

ICH M10バイオアナリシス実務 ― 旧2通知は廃止、移行期間も終わった今の判定基準【2026年版】

生体試料中の薬物濃度を測るバイオアナリシスは、ICH M10ガイドラインが2024年12月4日に 国内通知され、従来のクロマトグラフィー法・リガンド結合法の2通知は廃止された。旧通知でも よいとされた移行期間は令和7年9月30日開始分までで、すでに終了している。つまり現在はM10一本である。 本記事では通知と原文を根拠に、適用範囲、フル/パーシャル/クロスバリデーションの使い分け、 検量線の6濃度・75%ルール、真度精度の±15%(定量下限±20%)、実試料分析の受入基準、 マトリックス効果とキャリーオーバー、そしてISR(実試料再分析)の実施規模と判定基準までを実務の順に整理する。

JP19 クロマトグラフィー総論〈2.00〉 ― SN比の改正と、公定法で「条件を変えてよい」範囲【2026年版】

JP19 クロマトグラフィー総論〈2.00〉 ― SN比の改正と、公定法で「条件を変えてよい」範囲【2026年版】

第十九改正日本薬局方(JP19)が2026年4月10日に告示・同日施行された。改正された 一般試験法19項目の筆頭がクロマトグラフィー総論〈2.00〉で、その中身はSN比の計算法の改正 ――ノイズ測定範囲が「半値幅の20倍」から「少なくとも5倍」へ一本化された。本記事では この改正点を原文で確認したうえで、〈2.00〉の実務的な本体である「4. クロマトグラフィー条件の調整」 を読み解く。L/dp の −25%〜+50%、流量・注入量・グラジエント時間の換算式、温度やpHの許容幅、 そして変えてはいけないもの。公定法を再バリデーションなしでどこまで速くできるのかを、 条文の数値に基づいて整理する。

残留溶媒分析の実務 ― ICH Q3C(R9)がJP19〈2.46〉に入り、乾燥減量の使い方が変わった【2026年版】

残留溶媒分析の実務 ― ICH Q3C(R9)がJP19〈2.46〉に入り、乾燥減量の使い方が変わった【2026年版】

第十九改正日本薬局方(JP19)で一般試験法〈2.46 残留溶媒〉が改正された。中身は ICH Q3C(R9)の国内実装で、変わったのは「分析方法」のたった数十文字――クラス3の溶媒しか ないときに乾燥減量のような非特異的方法を使う条件が明確化され、バリデーションで 溶媒の揮発性の影響を考慮することが求められるようになった。本記事では条文の差分を原文で示し、 そのうえで残留溶媒分析の全体像――3つのクラスと限度値、オプション1と2、ヘッドスペースGCの 標準条件、操作法A/B/Cの使い分け、そしてヘッドスペース法が効かない7つの溶媒――を実務の順に整理する。

定量NMR(qNMR)入門 ― 1つの標準物質で純度を測る「絶対定量」【2026年版】
NMR

定量NMR(qNMR)入門 ― 1つの標準物質で純度を測る「絶対定量」【2026年版】

定量NMR(qNMR)は、NMRシグナルの面積が「核の数(モル)」に比例する原理を使い、 測定対象と同じ標準物質をそろえなくても純度・含量を絶対定量できる手法。緩和遅延や ¹³Cサテライトなど精確測定の勘所、内標準法とPULCON/ERETIC2(外標準法)の違い、 NMIJの認証標準物質によるSIトレーサビリティ、そして日本薬局方〈2.21〉やISO 24583など 公定化・標準化の最新状況までを、入門者と分析現場の両方に向けて整理する。