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7 件の記事

分取HPLCとスケールアップ ― 断面積比で伸ばすのは流量と負荷量、守るのはカラム容量あたりのグラジエント容量【2026年版】

分取HPLCとスケールアップ ― 断面積比で伸ばすのは流量と負荷量、守るのはカラム容量あたりのグラジエント容量【2026年版】

分析カラムで決めた分離を分取カラムへ移す規則は、どのメーカーの資料も同じ一文に集約される。「流量と注入量をカラム断面積に比例させる」。ただし、それが成り立つのは分取カラムに幾何比どおりの流量を流せるときだけで、Agilent の移管例では 2.1 mm から 21.2 mm へ移すときの計算上の流量 36.7 mL/分を装置の都合で 25 mL/分に落とし、代わりにグラジエントの時間軸を 12.2 倍に伸ばしている。この 12.2 は「カラム容量比 305.7 ÷ 流量比 25」で、守られているのは流量ではなくカラム容量あたりのグラジエント容量である(筆者計算)。負荷量を 4.6 mm カラムで先に見極める手順(島津・ジーエルサイエンス・YMC)、過負荷で三角になるピークの意味、フォーカストグラジエントで純度 98 %・回収率 93 % に至った例、温度・ポンプ・溶媒コスト・リサイクルまでを、メーカー一次資料と査読論文の原文で整理する。

医薬品の結晶多形と熱分析 ― 多形は観察できる対象であり、同時に測定を不能にする原因である【2026年版】
熱分析

医薬品の結晶多形と熱分析 ― 多形は観察できる対象であり、同時に測定を不能にする原因である【2026年版】

日本薬局方〈2.52〉熱分析法は、DSC で観察できる相転移の表に「同素体-結晶多形」を挙げている。ところが同じ節の数ページ先で、DSC による純度測定が適用できない場合として「実験温度範囲で不安定な多形を示す化合物又は溶媒和物」を挙げている。多形は熱分析の観察対象であり、同時に熱分析を成立させなくする原因でもある。矛盾ではない。加熱は観察ではなく操作だからだ。転移熱則と融解熱則、昇温速度が答えを変えること、水和物の型で脱水が変わること、そして測定前に溶媒と粉砕が形を決めていることを、局方と査読論文の原文にあたって整理する。

分析法移管の実務 ― 差の検定で合否を決めると、精度の悪い試験室ほど合格する【2026年版】

分析法移管の実務 ― 差の検定で合否を決めると、精度の悪い試験室ほど合格する【2026年版】

分析法を他の試験室へ移すとき、「送り手と受け手の測定値に有意差がないこと」を合格条件にする設計をよく見る。これは向きが逆になる。真のバイアスが許容幅ちょうど 2 % ある試料で計算すると、標準偏差 0.25 % の試験室は合格率 0.1 % 未満なのに、標準偏差 5 % の試験室は 93.3 % 合格する。差の検定は精度が悪いほど通りやすい。WHO のガイドラインは判定基準を定めよと要求するが、どう検定するかは指定していない。

ネイティブMS徹底解説 ― 横軸の m/z の値が、そのまま「分けられない質量差」になる【2026年版】
質量分析

ネイティブMS徹底解説 ― 横軸の m/z の値が、そのまま「分けられない質量差」になる【2026年版】

ネイティブMSは質量を直接測っていない。測っているのは m/z で、質量は電荷の割り当てから逆算した値である。この構造には計算できる限界がある。質量 M・電荷 z のイオンは、M よりちょうど M/z だけ重い z+1 価のイオンと同じ位置に来る。つまり分けられない質量差の大きさは、そのピークが出ている m/z の値そのものである。AAV カプシドではこの閾値 21〜25 kDa が、VP1→VP3 置換の質量差 21.9 kDa と一致してしまう。

結晶構造解析の最前線 ― 47年ひとつだと信じられた医薬品の多形は、R 因子 0.19 の構造で二つに分かれた【2026年版】

結晶構造解析の最前線 ― 47年ひとつだと信じられた医薬品の多形は、R 因子 0.19 の構造で二つに分かれた【2026年版】

日本薬局方〈2.58〉には「8. 単結晶構造解析」という節がある。中身は3文しかなく、そのうち1文は 「有機結晶では…その構造解析を行うことは容易ではない」という警告である。判定値はゼロ。電子線回折・中性子・ 放射光・絶対配置は、一般試験法473ページを全文検索して1件も出てこない。ところがその「容易ではない」側では、 2022年にインドメタシンの多形がひとつではなく二つだったことが判明した ―― 1974年の報告から47年後、 幅 0.5〜2 µm の結晶から、R 因子 0.19 という X線なら受理されない数字で。本記事は、必要な結晶体積が 10⁵ → 10³ → 10⁻² µm³ と7桁下がった経緯、X線・電子線・中性子が「別のもの」を測っているために水素の位置が 食い違う仕組み(筆者集計:MicroED の実測376本は10種類すべてで中性子側に近い)、SPring-8 と NanoTerasu の 公称値の差、そして結晶構造予測が第7回ブラインドテストでどこまで届いたかを、すべて一次資料の数値で追う。

TGA徹底解説 ― 50 ℃/min で測ったほうが、10 ℃/min より分離がよかった【2026年版】
熱分析

TGA徹底解説 ― 50 ℃/min で測ったほうが、10 ℃/min より分離がよかった【2026年版】

TGA が返す「分解温度」は物質の定数ではなく、昇温速度の設定に付いてくる数字である。速く上げれば高温側へずれ、近接したステップは重なる——というのが一般則だが、昇温速度を試料の分解速度に決めさせる Hi-Res TGA では、50 ℃/min のほうが標準の 10 ℃/min より分離がよくなる。Modulated TGA を使えば活性化エネルギーを転化率の関数として1回の測定で追える。原理・DTG の読み方・雰囲気とパン・EGA・速度論までを、メーカー公式資料の原文にあたって整理する。

DSC徹底解説 ― 目立つのはピークだが、材料の限界を決めているのは段差のほうである【2026年版】
熱分析

DSC徹底解説 ― 目立つのはピークだが、材料の限界を決めているのは段差のほうである【2026年版】

DSC 曲線でまず目に入るのは融解や結晶化のピークだが、材料の使用温度上限を決めているのはガラス転移の段差のほうである。両者は同じ熱流方程式 q = Cp(dT/dt) + f(T,t) の別々の項から来ていて、段差は第1項(熱容量)、ピークの多くは第2項(速度論)に現れる。段差は昇温速度に比例して小さくなり、装置のベースラインが曲がっていれば存在ごと消える。熱流束型と入力補償型の違い、Tzero/T4P と FlexMode、MDSC・Flash DSC までを、メーカー公式仕様の原文にあたって整理する。