プロテオミクスのDDA/DIA ― タンパク質の「FDR 1%」が妥当だと確かめられた組み合わせは、24件中ゼロだった【2026年版】
質量分析

プロテオミクスのDDA/DIA ― タンパク質の「FDR 1%」が妥当だと確かめられた組み合わせは、24件中ゼロだった【2026年版】

プロテオミクスの論文と報告書には、ほぼ例外なく「FDR 1%」と書いてある。だがその1%が本当に1%であることを、 分野はほとんど検証してこなかった。2024〜2025年にエントラップメント実験で検証されたとき、 タンパク質レベルの1% FDR 制御が「妥当」と判定できたツールとデータセットの組み合わせは、24件中ゼロだった。 本記事は、target-decoy を作った本人が「この値は個々の同定については何も言っていない」と書いている出発点から、 DDA が何を測っていないか、DIA が何を先に持ち込んでいるか、そしてペプチドの1%がなぜタンパク質の1%にならないかを、 一次資料と筆者自身の計算で順に追う。

プロテオミクスの結果を受け取ったとき、そこには必ず「FDR 1%」と書いてあります。同定されたタンパク質は 5,000個、偽発見率は1%。だから間違いはせいぜい50個。そう読みたくなります。

ところがその読み方は、二重に間違っています。

ひとつめ。target-decoy 法を分野に定着させた Elias と Gygi 自身が、2010年の解説でこう書いています。この計算は 「しきい値を満たした同定全体の集合」に適用されるものであって、「いかなる特定の同定が正しい確からしさをも 示すものではない」。1% は集団についての言明で、目の前の1本については何も言っていません。

ふたつめ。その1%が本当に1%であることを、分野はほとんど検証してきませんでした。2024年から2025年にかけて、 Wen らがエントラップメント実験の枠組みを整理し直して主要な DIA 検索エンジンを検証したところ、 タンパク質レベルで「FDR 制御は妥当」と判定できたツールとデータセットの組み合わせは、24件中ひとつもありませんでした。 21件が「無効」、3件が「判定不能」です。

本記事は、この二つの事実を軸に、DDA と DIA という二つの取得方式がそれぞれ何を測っていないかを追います。 装置の話から始めて、統計の話に着地します。

この記事の読み方

  • 入門者の方:1〜5節(二つの取得方式が何をしているか)と14節・分析者の視点だけでも筋は通ります。
  • 実務者の方:7〜12節が本体です。とくに8節(ペプチドの1%がタンパク質の1%にならない理由)と 11節(エントラップメントの実測値)は、報告書の書き方に直結します。
  • 数値には出典を付けました。筆者が計算した値には「筆者計算」と明記し、モデルと仮定も本文に書いています。
  • ボトムアップ・プロテオミクス(タンパク質をトリプシンなどで切ってペプチドとして測る方式)を前提にします。

1. 二つの取得方式は、「何を測るか」ではなく「何を選ぶか」が違う

DDA と DIA の対比図。DDA は格子状のふるいで、流れてきた多数の粒子のうちごく一部だけが通り抜けて先へ進む。DIA は二本の柱で挟んだ窓のあいだを全部通し、その代わりに虫めがねと「仮説(Template)」と書かれたパズルのピースが解析側に置かれている
図解:DDA は装置がその場で選び、DIA は方法ファイルを書いた人が事前に決める。

質量分析計は、1回のスキャンで前駆イオン(MS1)の一覧を得たあと、そのうちのどれを壊して断片スペクトル(MS2)を 取るかを決めなければなりません。DDA(データ依存取得)は「今いちばん強いものから順に」選びます。 DIA(データ非依存取得)は選ばず、あらかじめ決めた m/z の窓を順に全部撃ちます。

違いは「何を測れるか」ではなく、測る対象を誰が決めるかです。DDA では装置がその場で決めます。 DIA では方法ファイルを書いた人が事前に決めます。この違いが、後で出てくる統計の性格をまるごと変えます。

DIA の最初の実装である SWATH-MS は、25 m/z 幅の窓を32個、わずかに重ねながら順に走査する方式でした (Ludwig らのチュートリアル, Mol. Syst. Biol. 2018)。窓が広いので1つの窓には多数のペプチドが同時に入り、 得られる MS2 スペクトルは複数のペプチドの断片が混ざったものになります。

2. DDA が測っていないもの ― 10万の特徴のうち、踏めたのは約16%

DDA の「強いものから選ぶ」は、裏返せば選ばれなかったものは MS2 が無いということです。 どれくらい選ばれないのか。Michalski・Cox・Mann は2011年に、細胞抽出液の標準的な LC ランで検出できる ペプチド由来の同位体クラスターを数え上げました(J. Proteome Res. 10, 1785-1793, 2011)。

結果は、10万を超えるペプチド様の特徴が溶出しており、そのうち MS/MS が向けられたのは約16%。 残りの8割強は、装置が「見えてはいたが、壊さなかった」ものです。

同じ論文は、足りないものを3つ挙げています。シーケンス速度・感度・前駆体の分離です。 すべての特徴を踏むには 25 Hz の MS/MS 速度が必要で、存在量の多いものに限っても 17 Hz 未満では足りない。 感度の側では、多くの特徴が 250 ms を超える MS/MS 注入時間を要すると報告しています。

ここで重要なのは、この8割強は「存在しなかった」のではないということです。MS1 では見えています。 装置が選ばなかっただけです。

装置が返さなかったものを「無い」と読み替える瞬間に、誤りが入ります。これは 2D-NMRの読み方 で HMBC の相関について書いたことと同じ構造です。

3. 選択の限界は、割り算だけで出てくる

「速度が足りない」がどれくらい深刻かは、割り算だけで見えます。1回のランに10万個の特徴が溶出するという Michalski らの数字だけを借りて、勾配時間ごとに「全部を1回ずつ踏む」のに必要な最低 MS/MS 速度を出しました (筆者計算。ダイナミック排除・充填時間・電荷判定に取られる分を無視した下限値です)。

LC 勾配 全特徴を1回ずつ踏むのに必要な MS/MS 速度
120 分 7,200 13.9 Hz
90 分 5,400 18.5 Hz
60 分 3,600 27.8 Hz
30 分 1,800 55.6 Hz
15 分 900 111 Hz
5 分 300 333 Hz

60分勾配で 27.8 Hz。Michalski らが実測から出した「25 Hz 必要」と同じ桁に落ちます。モデルが素朴でも、 桁は合っているということです。

そして下の行を見てください。スループットを上げて勾配を5分に縮めると、必要速度は 333 Hz になります。 2024年に報告された Orbitrap Astral の narrow-window DIA でさえ MS/MS は約 200 Hz です (Guzman ら, Nat. Biotechnol. 42, 2024)。勾配を縮めるという行為は、選択の失敗を必ず増やします。 装置が速くなっても、速くなった分だけ勾配を縮めれば、踏めない割合は元に戻ります。

4. DDA の分離窓でさえ、狙った前駆体はイオン電流の14%しかない

MS/MS 選択窓に入るイオン電流の内訳を示すドーナツ図。目的の前駆体が占める割合は中央値 0.14 で、残りは狙っていないペプチド由来である
図解:中央値 0.14 ― DDA の MS2 スペクトルでも、断片の 86 % は狙っていないペプチド由来である。

DDA は「1本の前駆体を選んで壊す」と説明されます。実際には違います。

Michalski らは、MS/MS 選択窓に入るイオン電流のうち、狙ったペプチドが占める割合(precursor ion fraction, PIF)を 測りました。その中央値は 0.14 です。つまり典型的な DDA の MS2 スペクトルでは、断片イオンの 86% は 狙っていないペプチド由来ということになります。

これは DDA と DIA の関係を見直させる数字です。DIA は「混ざったスペクトルを解く」方式だと説明されますが、 DDA も、程度が違うだけで混ざったスペクトルを解いています。両者は原理的に別物ではなく、 窓の広さという連続量の両端にいるだけです。14節で見るとおり、2026年時点の装置はこの連続量の上を実際に動いています。

5. DIA は選ばない ― その代わり、答えを先に持ち込む

DIA の解析を鍵と錠前で表した図。MS データは南京錠のついた立方体として描かれ、スペクトルライブラリがその鍵として差し込まれる
図解:DIA のデータは、スペクトルライブラリという鍵が無ければ開かない。

DIA は選択をやめました。窓を全部撃つので、MS2 のレベルでは「選ばれなかったから無い」は起きません。 ここまでは DDA の弱点を素直に潰しています。

代償は解析側に来ます。混ざったスペクトルからペプチドを取り出すには、「このペプチドならこの断片がこの比で、 この保持時間に出るはずだ」という予測が要ります。これがスペクトルライブラリです。 Ludwig らのチュートリアルはこの方式を peptide-centric scoring(ペプチド中心の採点) と呼び、 「対象ペプチドの事前知識をスペクトルライブラリの形で必要とする」と明記しています。

言い換えると、DIA は測定の前に仮説を持ち込みます。ライブラリに載っているペプチドについては 「有るか無いか」を問い、載っていないペプチドについてはそもそも問いません

ライブラリの作り方は3通りあります。

方式 中身 主なリスク
実測 DDA ライブラリ 同じ試料を分画して DDA で測り、実測スペクトルを集める 構築に試料量と時間が要る。DDA の2節の限界がそのまま入る
in silico 予測ライブラリ 配列データベースから断片パターンと保持時間を機械学習で予測する 探索空間が巨大になり、問い合わせ数が増える
library-free(directDIA) DIA データから擬似 MS2 を作る、あるいは理論断片で直接照会する 上記に加え、採点モデルへの依存が大きい

Lou らのベンチマーク(Nat. Commun. 14, 94, 2023)では、in silico ライブラリでも実測 DDA ライブラリと 同等以上のカバレッジが得られることが示されています。マウスの膜プロテオームで、Spectronaut は ソフトウェア固有の DDA ライブラリで 5,354 タンパク質・67,310 ペプチド、DIA-NN は in silico ライブラリで 5,186 タンパク質・51,313 ペプチドを報告しました。カバレッジの面では、予測ライブラリはもう実用です。

6. ライブラリに無いものは返らない ― そして「無い」ものを問い続けると偽陽性がたまる

偽陽性が蓄積する循環図。存在しないペプチドへの問い合わせが偽陽性のチャネルを作り、そのチャネルが問いの増加とつながって循環し、下のバケツに偽陽性がたまっていく
図解:検出可能なレベルで存在しないペプチドへの問い合わせが、偽陽性のチャネルになる。

問題はカバレッジではなく、問い合わせの数のほうにあります。Ludwig らは2018年の時点でこう書いています。

こうした解析では、ライブラリから問い合わせたペプチドのかなりの割合が、対象試料には検出可能なレベルで 存在していないことがふつうであり、そうしたものは多数のランを解析すれば偽陽性が現れ蓄積しうるチャネルを なしている。SWATH の抽出結果をタンパク質レベルで集約すると、そうした偽陽性によって誤り率はさらに膨らみうる

そして対処として、タンパク質レベルでも FDR を制御すること、そして ファイル単位ではなく実験全体で グローバルに FDR を計算することを挙げています。大規模ライブラリを使うと 「多重検定の負荷が増える」とも明記しています。

もうひとつ、見落とされやすい仮定があります。

ペプチド中心の採点の主要な仮定は、ペプチドごとに最もスコアの高いピークグループだけが真のシグナルを表す、 というものである。しかしこれは常に成り立つとは限らない。

ペプチドがあるランで検出限界を下回ったとき、別の(無関係な)ピークグループのほうが高いスコアを取ることがある。 その場合、定量マトリクスには「誤った値」が入ります。欠測ではなく、誤った数値として入る。これがやっかいなところです。

7. 「FDR 1%」とは、何の1%か

FDR が何について語っているかを示す図。多数の点からなる集合全体には括弧が掛かっているが、離れた1個の点には×印が付いており、個々の同定については何も言えないことを表す。逐語引用「いかなる特定の同定についても、それが正しい確からしさを示すものではない」(Elias & Gygi 2010)
図解:1% は集団についての言明であって、目の前の1本については何も言っていない。

ここから統計の話に入ります。まず、target-decoy 法が何をしているかを確認します。

実験スペクトルを、本物の配列(target)と、それを反転またはシャッフルした偽配列(decoy)を混ぜたデータベースに 対して検索します。decoy へのヒットは必ず誤りですから、decoy のヒット数から target 側に紛れ込んだ誤りの数を推定します。 Elias と Gygi の2010年の解説は、この前提を「探索空間に加えた、明らかに誤りである decoy 配列は、 そうでなければ正しいと見なされたかもしれない誤った検索結果に対応する」と述べています。

そのうえで、同じ解説には次の一文があります。

強調しておかねばならないのは、上の計算が、与えられたフィルタ基準を満たすか上回る同定の集合全体に対して 適用されるものだということである。最終的な精度は、最終データセットのうち正しいと見込まれる割合を表す。 それはいかなる特定の同定についても、それが正しい確からしさを示すものではない。

FDR 1% は、リストという集団についての言明です。「このタンパク質は99%の確率で正しい」ではありません。 報告書に1行だけ「FDR 1%」と書いて、読む人がリスト中の各行にその1%を配ってしまうなら、 それは著者の意図と違う読み方です。

8. ペプチドの1%は、タンパク質の1%にならない

ペプチドレベル FDR 1% のときのタンパク質レベル FDR の表。1タンパク質あたりの平均ペプチド本数 k が 1 なら 1.0 %、3 なら 2.9 %、5 なら 4.8 %、10 なら 9.2 %、12.6 なら 11.3 %、20 なら 16.8 %、30 なら 23.3 %。機構は「実在するタンパク質のほうが多くのペプチドを集める」こと
図解:同じ 1 % が、1タンパク質あたり 10 本で 9.2 %、12.6 本で 11.3 % になる(筆者計算)。

次が本題です。ペプチドレベルで 1% に切っても、そこから組み立てたタンパク質のリストは 1% になりません。

The・Tasnim・Käll(Proteomics 16, 2461-2469, 2016)は、機構をこう説明しています。

PSM レベル・ペプチドレベルの FDR は、そこから導かれたタンパク質の集合の誤り率よりもはるかに低い。 この誤り率の増加は、実在するタンパク質が、偽のタンパク質よりも多くの PSM とペプチドを集めることの帰結である。

直感的にはこうです。正しいペプチドは、実在する少数のタンパク質に何本もまとまって落ちます。 誤ったペプチドは、データベース全体にばらばらに落ちます。だから同じ本数でも、 誤ったペプチドのほうがより多くの「タンパク質」を作り出すのです。

これは割り算で確かめられます(筆者計算)。仮定は4つで、すべて上限側に振ってあります。

  • A1:あるタンパク質は、そのペプチドが1本でもしきい値を通れば報告される。
  • A2:誤ったペプチドは配列データベース全体にランダムに帰属する。
  • A3:正しいペプチドは、実在する T 個のタンパク質に平均 k 本ずつ帰属する。
  • A4:タンパク質推論(parsimony・protein group 化)や後述の picked 補正は入れない。

このとき、報告ペプチド数を P、ペプチドレベル FDR を f とすると、偽タンパク質は f×P 個、 真のタンパク質は (1−f)×P÷k 個なので、

タンパク質レベル FDR = f×k ÷ (f×k + 1 − f)

f = 0.01 を入れると、こうなります。

1タンパク質あたりの平均ペプチド本数 k タンパク質レベル FDR
1 1.0 %
3 2.9 %
5 4.8 %
10 9.2 %
12.6 11.3 %
20 16.8 %
30 23.3 %

k = 1 のときちょうど 1.0% に戻ることを確認してからこの表を作りました(モデルの妥当性検査)。

k は空想の数ではありません。5節で挙げた Lou らの実測値がそのまま使えます。 Spectronaut は 5,354 タンパク質 / 67,310 ペプチドで k = 12.6、DIA-NN は 5,186 / 51,313 で k = 9.9 です。 さらに、誤ったペプチドどうしが同じタンパク質に落ちる衝突と、すでに正しく報告されたタンパク質に落ちる分を 差し引くと(マウスのデータベース UP000000589 は 21,701 タンパク質)、8.6% と 7.0% になります。

つまり、ペプチドレベルで 1% に切ったリストからタンパク質を数えると、素直に見積もって 7〜11% になる。 これは「ソフトウェアが悪い」という話ではありません。足し算の順序の問題です。

9. one-hit wonder ― 消せば精度は上がるが、正しいペプチドの半分以上を失う

one-hit wonder を除いたときのトレードオフを表す天秤の図。片方の皿には精度向上が乗り、もう片方の皿からは正しいペプチドの半分以上がこぼれ落ちている
図解:精度は買える。ただし正しいペプチドの半分以上と引き換えである。

8節の計算が示すのは、ペプチド1本しか根拠がないタンパク質(one-hit wonder)が誤りの大半を作るということです。 Elias と Gygi も同じことを書いています。

単一ペプチドで同定されたタンパク質("one-hit-wonders")は特別な一群をなす。 誤ったペプチド同定の大多数がこの区分に入るのは、一般に正しい。

では消してしまえばよいのか。ここに罠があります。同じ段落の続きです。

最終データセットから単一ペプチドの同定を除きたくなるのはしばしばである。この慣行はタンパク質レベルの精度を 確かに改善するが、通常は感度の大幅な低下を伴う。しばしば、正しいペプチド同定の半数以上が one-hit-wonder の区分に入る

one-hit wonder を捨てると、正しいペプチドの半分以上を一緒に捨てることになります。 この一文は、「2本以上のペプチドで確認したものだけを報告する」という運用ルールが、 何と引き換えに精度を買っているのかを教えてくれます。

10. 大規模データでは古典的 target-decoy が壊れる ― 増やすほど報告が減る

もうひとつ、データが大きくなったときに起きる現象があります。

Savitski ら(Mol. Cell. Proteomics 14, 2394-2404, 2015)は、ProteomicsDB に集積された 19,013 本の LC-MS/MS ランを使って、古典的 target-decoy をタンパク質レベルに素朴に適用するとどうなるかを調べました。

1% PSM FDR でフィルタした 1,970 件の Mascot 検索結果(18,754 raw ファイル)を累積的に集約し、各段階で 1% タンパク質 FDR におけるタンパク質数を計算した。(中略)1% タンパク質 FDR のタンパク質数は 早い段階で最大に達したあと継続的に減少し、最初より少ないタンパク質数で止まった。これは、 大規模データを扱うとき古典的 TDS が機能していないことを示す。

データを足すほど、報告できるタンパク質が減っていく。統計手法としては破綻の兆候です。 原因は、decoy 側の同定が過剰に表れること(decoy の over-representation)にあります。

対処が picked protein FDR です。あるタンパク質の target 配列と decoy 配列を独立の個体ではなくペアとして扱い、 スコアの高いほうだけを残す。これだけで挙動が変わり、真陽性は 15,817 タンパク質でプラトーに達しました。 ProteomicsDB 全体では、1% タンパク質 FDR で classic 14,638 に対し picked 15,375、 実験を積み増すほど差が開いて 800 タンパク質近くになります。

そしてこの論文は、冒頭でこう認めています。

タンパク質 FDR の概念的な妥当性については意見の相違が強く、タンパク質 FDR の決定方法についても コンセンサスが無い。

2015年の時点で「決め方の合意が無い」と書かれた量が、いま報告書に「FDR 1%」と印字されている量です。

11. エントラップメントで測ったら、タンパク質レベルで「妥当」はゼロだった

ここまでは理屈です。では実測するとどうなるか。

Wen・Freestone・Riffle・MacCoss・Noble・Keich は、エントラップメント実験――本物の配列に加えて、 試料には絶対に存在しない「わな」の配列を混ぜて検索し、わなへのヒット数から実際の誤り割合(FDP)を測る方法――を 理論的に整理し直し、主要な検索ツールを検証しました(bioRxiv 2024.06.01.596967 v5, 2025-01-21。 査読後版は Nature Methods 2025)。

出発点からして厳しい指摘です。

本研究では、この分野で使われている FDR 制御の検証方法を3つ同定した。そのうち1つは無効であり、 1つは上限ではなく下限しか与えず、1つは妥当だが検出力が低い。その結果、 とくに DIA データの解析について、FDR 制御がどれだけうまくいっているのかを分野はきわめて貧弱にしか 理解していない。

さらに、ツール側の事情も指摘しています。「これらのソフトウェアツールの多くはクローズドソースで、 方法論の文書化は不完全であり、誤りの検証方法はツール間で一貫していない」。

そのうえで、DIA-NN・Spectronaut・EncyclopeDIA を10個の公開データセットに適用した結果が下の表です (1% FDR 設定時の、実際の誤り割合の下限〜上限、単位は %。◯=妥当、?=判定不能、✕=無効)。

データセット DIA-NN 前駆体 DIA-NN タンパク質 EncyclopeDIA ペプチド EncyclopeDIA タンパク質 Spectronaut 前駆体 Spectronaut タンパク質
human-astral 0.7-1.3 ? 1.5-2.1 ✕ 0.8-1.5 ? 1.6-2.3 ✕
human-qe 0.7-1.3 ? 1.5-2.2 ✕ 0.7-1.3 ? 4.7-7.0 ✕ 0.7-1.4 ? 1.3-1.9 ✕
human-tripletof 0.6-1.1 ? 1.0-1.5 ✕ 0.7-1.3 ? 3.2-4.8 ✕ 0.7-1.4 ? 1.5-2.8 ✕
yeast-lumos 0.6-1.0 ◯ 1.2-1.4 ✕ 0.4-0.8 ◯ 4.3-5.2 ✕ 0.8-1.5 ? 1.3-1.6 ✕
mouse-qe 0.7-1.3 ? 0.8-1.1 ? 0.7-1.4 ? 1.3-1.9 ✕
human-timstof2 0.6-1.1 ? 0.8-1.2 ? 0.7-1.5 ? 1.4-2.1 ✕
human-timstof1 0.7-1.2 ? 0.8-1.2 ? 0.7-1.3 ? 1.1-1.7 ✕
100cell-eclipse 0.9-1.6 ? 1.3-1.8 ✕ 0.9-1.7 ? 1.8-2.9 ✕
1cell-eclipse 2.3-4.7 ✕ 2.0-3.5 ✕ 3.8-7.6 ✕ 3.0-5.6 ✕
human-lumos 0.9-1.7 ? 2.1-2.6 ✕ 0.7-1.2 ? 6.7-9.1 ✕ 0.7-1.3 ? 2.0-3.0 ✕

この表を数えると(筆者集計)、タンパク質レベルは24の組み合わせのうち ✕ が21件、? が3件、◯ はゼロ。 ペプチド/前駆体レベルは24のうち ◯ が2件、? が20件、✕ が2件です。

原典の言い方はこうです。「DIA 検索ツールのどれひとつとして、ペプチドレベルで FDR を一貫して制御できていない。 そしてこれらのツールは、とくに単一細胞データセットの解析で苦戦する」。

数字の意味を確認しておきます。EncyclopeDIA の human-lumos タンパク質レベルは 6.7〜9.1%。 1% と設定して、実際には7〜9%です。8節で筆者が素朴なモデルから出した 7〜11% と、同じ帯に落ちています。 モデルが正しいと言いたいのではありません。上限側に振った素朴な割り算でしかないのに、 実測がその帯に入ってしまうという事実のほうが重要です。

単一細胞データはさらに悪く、DIA-NN の前駆体レベル FDP は 2.3% を下回らず、Spectronaut は 3.8% を下回りません。 発見数への影響も見積もられていて、通常のデータセットでは前駆体で最大 6.7%・タンパク質で最大 4.7% の水増し、 単一細胞データでは前駆体で 48.3%・タンパク質で 44.2% です。単一細胞プロテオミクスで報告される タンパク質数の4割強が、しきい値の緩みで説明されうる、ということになります。

12. その1%を計算しているのは、各社が別々に実装した機械学習モデルである

同じ「1%」という入力が、DIA-NN(ニューラルネット)・Spectronaut(Avalon)・MaxDIA(XGBoost)という別々の実装に入り、それぞれ違う出力になることを示す図
図解:同じ「FDR 1%」の文字列の背後に、別々の学習済みモデルと別々の決め方がある。

なぜツールによって結果がこれほど違うのか。Lou らのベンチマークが端的に書いています。

プロテオミクスのベンチマーク研究における課題は、各ソフトウェアが同定のスコア付けと FDR 制御を それぞれ異なるやり方で行っていることである。

具体的には、DIA-NN は全結合ニューラルネットワークSpectronaut は勾配ブースティング(Avalon)と深層学習MaxDIA は XGBoost を採点モデルにしています。DIA-NN の採点モデルは 73 個の下位スコアを統合します。

つまり「FDR 1%」という同じ文字列の背後に、別々の学習済みモデルと別々の決め方が入っている。 これは共通の定義ではなく、各実装が自分の流儀で計算した数字に、たまたま同じラベルが貼られている状態です。 7節で見た Elias と Gygi の但し書き(集団についての言明であって個々についてではない)に加えて、 そもそも集団の切り方がツールごとに違うわけです。

ソフトウェアの差はデータの完全性にも出ます。同じ Lou らの評価で、欠測値の割合は DIA-NN が 16.6〜18.7% に対し、 Skyline は 36.9〜40.7% でした。同じ生データ、違う答えです。

13. 欠測値を埋める操作は、同定をひとつ増やす操作である

0細胞のブランクランに match-between-runs を適用すると、平均 68 タンパク質が報告されることを示す図。左は空のブランク、右は MBR 適用後
図解:何も入っていない試料から、平均 68 個のタンパク質が「定量」された。

DDA の欠測値を埋める標準的な手段が match-between-runs(MBR)です。あるランで MS/MS により同定された ペプチドを、m/z・電荷・保持時間(必要ならイオンモビリティ)の一致にもとづいて別のランに転送します。

Yu・Haynes・Nesvizhskii は、この操作の危うさをこう書いています(Mol. Cell. Proteomics 20, 100077, 2021)。

MBR の目的は欠測値の緩和だが、転送されたピークは受け入れ側のランでは MS/MS スペクトルによって 厳密に同定されたわけではないため、偽陽性を持ち込む可能性がある。(中略) MBR の統計的な確からしさを評価する仕事はほとんど行われてこなかった。

そして、いちばん分かりやすい実測がこれです。単一細胞プロテオミクスのデータで、細胞をひとつも入れていない 0細胞のブランクランを解析したところ――

解析条件 ブランク1ランあたりの報告タンパク質数(平均)
MaxQuant(MBR あり) 68
MaxQuant(MBR なし) 14
IonQuant(MBR なし) 19
IonQuant(MBR あり、1% FDR 制御つき) 31

何も入っていない試料から 68 個のタンパク質が「定量」されました。原著は「これ自体が、これらのデータにおける MaxQuant の MBR の無視できない誤転送率を示している」と述べています。

MBR は便利です。使うなという話ではありません。ただし、欠測値を埋める操作は、その定義上、同定を増やす操作です。 増やした分に FDR がかかっているかどうかは、別に確かめなければなりません。

14. 装置は、DDA と DIA の境界を溶かしつつある

DDA と nDIA の分離窓の比較図。DDA は 2 Th の窓をひとつだけ選んで撃つ。nDIA は同じ 2 Th の窓で 380〜980 m/z を 300 窓に割り、その全部を撃つ。サイクル時間は 1.5 秒
図解:同じ 2 Th の窓。DDA は選び、nDIA は 300 窓を全部撃つ。それだけの違いになった。

最後に2026年時点の装置側を見ます。Guzman ら(Nat. Biotechnol. 42, 2024)が報告した narrow-window DIA(nDIA) は、Orbitrap Astral の 約200 Hz の MS/MS 速度を使って、 2 Th の分離窓で DIA を行う方式です。

この数字は、その手前の常識をひっくり返します。2 Th は DDA の分離幅そのものです。実際、同じ論文の DDA 条件は「前駆体イオン選択幅は 2 Th に保った」と書かれています。同じ装置・同じ窓幅で、 DDA は撃つ窓を選び、nDIA は 380〜980 m/z を 2 Th で割った 300 窓を全部撃つという違いしか残りません。 論文自身が「データ依存法とデータ非依存法の違いを溶かす」と書いています。

サイクル時間は、300 窓 ÷ 200 Hz = 1.5 秒筆者計算。原典の窓数と速度から割っただけです。 Ludwig らのチュートリアルは、クロマトのピークあたり約10点が必要としています)。

性能側の報告値は次のとおりです。

条件 報告値
酵母 1日あたり100プロテオーム超、5分勾配で約 4,500 タンパク質
ヒト(30分) 1日あたり48プロテオーム、約 10,000 protein group
ヒト(5分) 約 7,000 タンパク質(従来の最先端の 3 倍)
ヒト(多段・分画あり) 約 3 時間で網羅的カバレッジ
3種混合試料 14,000 超の protein group を定量

同じ5分勾配・DIA-NN のライブラリフリー解析での他機種は、TripleTOF 3,330 / ZenoTOF 3,419 / timsTOF HT 3,737 / Orbitrap Exploris 3,143 タンパク質でした。

ただし3節の割り算を思い出してください。5分勾配で10万特徴を1回ずつ踏むには 333 Hz が要ります。 200 Hz は約6割です。窓を全部撃つ nDIA は「選ばない」ので選択の失敗はしませんが、 選ばないことは統計の問題を解いてはくれません。11節の表で最も新しい装置である human-astral のデータセットも、 タンパク質レベルは ✕ でした。

分析者の視点

報告書に書くべき3項目のチェックリスト。どのレベルの1%か、どの文脈で計算したか、どのツールのどのバージョンか。結論は「FDR 1%」とだけ書かない
図解:「FDR 1%」とだけ書かない ― レベル・文脈・ツールを並べて書く。

三つだけ挙げます。

第一に、「FDR 1%」とだけ書かない。書くなら、どのレベルの1%か(PSM/ペプチド/前駆体/タンパク質)、 どの文脈で計算したか(ラン単位か実験全体か)、どのツールのどのバージョンかを並べて書く。 12節のとおり、この3つが違えば同じ「1%」は別の数字です。Ludwig らも、ファイル単位ではなく 実験全体でグローバルに計算すべきだと明記しています。

第二に、タンパク質レベルの数字を、ペプチドレベルのしきい値から推定しない。 8節の計算のとおり、k が 10 を超える現実的な条件では、ペプチド 1% はタンパク質 7〜11% に化けます。 タンパク質の数を報告するなら、タンパク質レベルで制御された値を出す。出せないなら、 「ペプチドレベルで 1%、タンパク質レベルは未制御」と書く。書けないことを書かないのは、 非標的分析と未知構造推定 で同定確度を段階で書いたのと同じ作法です。

第三に、増やす操作には必ず値札を付ける。MBR、ライブラリの拡大、library-free への切り替え、 勾配の短縮――いずれも同定数を動かします。動かした方向がプラスなら、 その分の誤りがどこで制御されているかを言えるようにしておく。0細胞から 68 タンパク質が出た例は、 「増やす操作」に値札が付いていなかったときに何が起きるかを、これ以上ないほど簡潔に示しています。

まとめ

  • DDA は選ぶ。10万を超えるペプチド特徴のうち MS/MS が向けられたのは約16%(Michalski ら 2011)。 残りは「無かった」のではなく「選ばれなかった」。
  • 選択の限界は割り算で出る。勾配を5分に縮めると、全特徴を踏むのに 333 Hz が要る(筆者計算)。 2024年の最速機でも約 200 Hz。
  • DDA でさえ混ざっている。MS/MS 選択窓に占める目的前駆体の割合は中央値 0.14
  • DIA は選ばない代わりに、仮説を先に持ち込む。ライブラリに無いものは問われない。 そして問い合わせを増やすと、検出可能なレベルで存在しないペプチドが偽陽性のチャネルになる(Ludwig ら 2018)。
  • FDR 1% は集団についての言明。「いかなる特定の同定についても、それが正しい確からしさを示すものではない」 (Elias & Gygi 2010)。
  • ペプチドの1%はタンパク質の1%にならない。1タンパク質あたり 10 本のペプチドが出れば 9.2%、 12.6 本なら 11.3%(筆者計算)。機構は「実在するタンパク質のほうが多くのペプチドを集める」(The ら 2016)。
  • one-hit wonder を消せば精度は上がるが、正しいペプチドの半分以上を失う(Elias & Gygi 2010)。
  • 大規模データでは古典的 target-decoy が壊れる。データを足すほど 1% FDR のタンパク質数が減る(Savitski ら 2015)。 picked 補正で 15,817 でプラトー。
  • 実測すると、タンパク質レベルで「妥当」と判定できた組み合わせは 24 件中ゼロ(Wen ら 2025、筆者集計)。 EncyclopeDIA は 6.7〜9.1%、単一細胞では発見数が最大 48.3% 水増し
  • 1% を計算しているのは各社別々の機械学習モデル(DIA-NN=ニューラルネット、Spectronaut=Avalon、MaxDIA=XGBoost)。
  • 欠測値を埋める操作は同定を増やす操作。0細胞のブランクから平均 68 タンパク質(Yu ら 2021)。

用語集

  • DDA(データ依存取得):MS1 で見えた前駆体のうち強いものから順に選んで MS2 を取る方式。
  • DIA(データ非依存取得):あらかじめ決めた m/z の窓を順に全部フラグメント化する方式。SWATH はその一実装。
  • PSM(peptide-spectrum match):1本の MS2 スペクトルと1本のペプチド配列の対応づけ。
  • FDR(偽発見率):報告した集合のうち誤りが占める割合の期待値。FDP(偽発見割合)はその実現値。
  • target-decoy:本物の配列と偽配列を混ぜて検索し、偽配列へのヒット数から誤りの数を推定する方法。
  • エントラップメント:試料に存在しないと分かっている配列を混ぜ、そこへのヒットから実際の FDP を測る検証法。
  • one-hit wonder:ペプチド1本だけを根拠に同定されたタンパク質。
  • picked protein FDR:あるタンパク質の target 配列と decoy 配列をペアとして扱い、高いほうだけを残す方式。
  • スペクトルライブラリ:ペプチドごとの断片イオンパターンと保持時間をまとめた参照データ。DIA の解析に使う。
  • match-between-runs(MBR):あるランで同定されたペプチドを、別のランの検出ピークに転送して欠測を埋める処理。
  • PIF(precursor ion fraction):MS/MS 選択窓に入るイオン電流のうち、目的の前駆体が占める割合。
  • protein group:区別できないペプチド集合を共有するタンパク質をひとまとめにした単位。

出典

  1. Wen B, Freestone J, Riffle M, MacCoss MJ, Noble WS, Keich U. "Assessment of false discovery rate control in tandem mass spectrometry analysis using entrapment." bioRxiv 2024.06.01.596967, v5(2025-01-21). https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2024.06.01.596967v5.full.pdf / 査読後版:Nature Methods (2025), doi:10.1038/s41592-025-02719-x
  2. Elias JE, Gygi SP. "Target-Decoy Search Strategy for Mass Spectrometry-Based Proteomics." Methods Mol. Biol. 604, 55-71 (2010). doi:10.1007/978-1-60761-444-9_5 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC2922680/
  3. The M, Tasnim A, Käll L. "How to talk about protein-level false discovery rates in shotgun proteomics." Proteomics 16(18), 2461-2469 (2016). doi:10.1002/pmic.201500431 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5096025/
  4. Savitski MM, Wilhelm M, Hahne H, Kuster B, Bantscheff M. "A Scalable Approach for Protein False Discovery Rate Estimation in Large Proteomic Data Sets." Mol. Cell. Proteomics 14(9), 2394-2404 (2015). doi:10.1074/mcp.M114.046995 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4563723/
  5. Ludwig C, Gillet L, Rosenberger G, Amon S, Collins BC, Aebersold R. "Data-independent acquisition-based SWATH-MS for quantitative proteomics: a tutorial." Mol. Syst. Biol. 14, e8126 (2018). doi:10.15252/msb.20178126 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6088389/
  6. Lou R, Cao Y, Li S, Lang X, Li Y, Zhang Y, Shui W. "Benchmarking commonly used software suites and analysis workflows for DIA proteomics and phosphoproteomics." Nat. Commun. 14, 94 (2023). doi:10.1038/s41467-022-35740-1 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9822986/
  7. Yu F, Haynes SE, Nesvizhskii AI. "IonQuant Enables Accurate and Sensitive Label-Free Quantification With FDR-Controlled Match-Between-Runs." Mol. Cell. Proteomics 20, 100077 (2021). doi:10.1016/j.mcpro.2021.100077 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8131922/
  8. Guzman UH, Martinez-Val A, Ye Z, Damoc E, Arrey TN, Pashkova A, et al. "Ultra-fast label-free quantification and comprehensive proteome coverage with narrow-window data-independent acquisition." Nat. Biotechnol. 42 (2024). doi:10.1038/s41587-023-02099-7 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11631760/
  9. Michalski A, Cox J, Mann M. "More than 100,000 Detectable Peptide Species Elute in Single Shotgun Proteomics Runs but the Majority is Inaccessible to Data-Dependent LC-MS/MS." J. Proteome Res. 10(4), 1785-1793 (2011). doi:10.1021/pr101060v (抄録のみ確認。本文は取得できず)
  10. Lim MY, Paulo JA, Gygi SP. "Evaluating False Transfer Rates from the Match-between-Runs Algorithm with a Two-Proteome Model." J. Proteome Res. 18, 4020-4026 (2019). doi:10.1021/acs.jproteome.9b00492 (本文未取得。出典7の記述を通じて参照)
  11. Elias JE, Gygi SP. "Target-decoy search strategy for increased confidence in large-scale protein identifications by mass spectrometry." Nat. Methods 4, 207-214 (2007). doi:10.1038/nmeth1019 (本文未取得
  12. UniProt reference proteomes(マウス UP000000589 = 21,701 タンパク質。出典1の方法節に記載の値を使用)

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未確認・限界

  • 8節の計算は筆者のモデルであり、原典に載っている値ではありません。A1〜A4 の仮定を置いた上限側の見積もりです。 実際のツールはタンパク質推論・protein group 化・picked 補正を入れており、11節の実測では DIA-NN と Spectronaut のタンパク質レベル FDP は 1〜3% 台です。モデルが示すのは「1% にはならない」という向きであって、 値そのものではありません。
  • 3節・14節の割り算も筆者計算です。「10万特徴」は Michalski らの2011年の測定条件に依存する数字で、 装置・試料・勾配が変われば変わります。ダイナミック排除や充填時間を無視した下限値です。
  • 11節の表の集計(24件中◯ゼロ)は筆者が原典の表を数えたものです。原典本文は 「タンパク質レベルの 1% FDR 制御は EncyclopeDIA と Spectronaut では一貫して無効、DIA-NN ではおおむね無効」と述べています。
  • 査読後の Nature Methods 版(2025)は本文を取得できていません。数値は bioRxiv v5(2025-01-21)に基づきます。 査読過程で数値が変わっている可能性は排除できません。
  • Michalski ら 2011 は抄録のみの確認です。16%・25 Hz・17 Hz・250 ms・PIF 中央値 0.14 はすべて抄録に明記された値ですが、 測定条件の詳細は本文を取得できていないため確認していません。
  • Lim ら 2019 は本文を取得できていません。MBR の誤転送に関する記述は、出典7(Yu ら 2021)が引用した範囲に限っています。
  • 本記事はボトムアップ・プロテオミクスに限定しています。トップダウン、クロスリンク MS、 ターゲット法(SRM/PRM)の誤り制御は扱っていません。
  • 装置の性能値はいずれもメーカーまたは共著論文が報告した条件下の値で、試料・勾配・解析設定が変われば再現しません

制作メモ:ディープリサーチで文献の当たりを付けたうえで、数値・逐語はすべて編集側が原著(bioRxiv・PMC・Europe PMC)を 直接開いて確認しました。計算値には「筆者計算」と明記し、モデルと仮定を本文に書いています。