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6 件の記事

メタボロミクスのLC-MS実務 ― 検出した25,230の特徴量は、892の分析種だった【2026年版】
質量分析

メタボロミクスのLC-MS実務 ― 検出した25,230の特徴量は、892の分析種だった【2026年版】

ノンターゲットのLC-MSメタボロミクスでは、1回の測定で数万の「特徴量(feature)」が検出される。 しかしその数は測定できた代謝物の数ではない。大腸菌の実データを系統的に注釈した研究は、 25,230の特徴量が892のユニークな分析種にまで減ることを示した。28分の1である。 本記事は、なぜ1つの代謝物が何十もの特徴量に分裂するのか、その縮退が統計の検出力をどう削るのかを 原著の数値で追い、そのうえでプールQCの置き方・受入基準(検出率・RSD・D-ratio)・ シグナル補正という品質管理の実務を、ガイドライン論文と109報の実態調査から整理する。

抗体医薬のLC-MSキャラクタリゼーション ― 同じ1本の抗体を76研究室が測ったら、見つけた糖鎖は4個から48個だった【2026年版】
質量分析

抗体医薬のLC-MSキャラクタリゼーション ― 同じ1本の抗体を76研究室が測ったら、見つけた糖鎖は4個から48個だった【2026年版】

ICH Q6B は「不均一性のパターンを定義し、恒常性を示せ」と求める。個々の分子種を評価しなくてよいのは、 パターンが一定だと示せた場合だけである。ではそのパターンは、どれくらい揃うのか。NIST の標準抗体 NISTmAb を 76 の研究室が測った結果、検出された糖鎖組成の数は 4 個から 48 個まで、12 倍ひらいた。派生属性の9項目のうち 6項目で、四分位範囲が中央値そのものより広かった(筆者計算)。そして「コアフコシル化」のコンセンサス中央値は 103.95 % ―― 割合なのに 100 % を超えている。日本薬局方はペプチドマップ法・タンパク質の質量分析・糖鎖 プロファイル法をすべて備えているが、それらは「参考情報」にあり、告示(2549 頁まで)の外にある。さらに厄介なのは、 測るための前処理そのものが脱アミド化・酸化・Asn→Asp を作ることだ ―― 局方自身が3か所でそう書いている。

プロテオミクスのDDA/DIA ― タンパク質の「FDR 1%」が妥当だと確かめられた組み合わせは、24件中ゼロだった【2026年版】
質量分析

プロテオミクスのDDA/DIA ― タンパク質の「FDR 1%」が妥当だと確かめられた組み合わせは、24件中ゼロだった【2026年版】

プロテオミクスの論文と報告書には、ほぼ例外なく「FDR 1%」と書いてある。だがその1%が本当に1%であることを、 分野はほとんど検証してこなかった。2024〜2025年にエントラップメント実験で検証されたとき、 タンパク質レベルの1% FDR 制御が「妥当」と判定できたツールとデータセットの組み合わせは、24件中ゼロだった。 本記事は、target-decoy を作った本人が「この値は個々の同定については何も言っていない」と書いている出発点から、 DDA が何を測っていないか、DIA が何を先に持ち込んでいるか、そしてペプチドの1%がなぜタンパク質の1%にならないかを、 一次資料と筆者自身の計算で順に追う。

非標的分析と未知構造推定 ― 答えが全部わかっている試料でも、当てられたのは46%だった【2026年版】
質量分析

非標的分析と未知構造推定 ― 答えが全部わかっている試料でも、当てられたのは46%だった【2026年版】

高分解能MSで「未知のピーク」を追う非標的分析は、環境・食品・医薬・法科学に急速に広がった。 だが米国EPAが主催した共同試験ENTACTでは、何が入っているかを全部わかっている合成混合物を目隠しで 分析させたところ、異性体を除いた真陽性率は最良でも46%、答えを見てからやり直しても65%にとどまった。 本記事は「なぜ当たらないのか」を二段階に分けて追う。第一に、質量精度をいくら上げても分子式は 一意にならない(Kind & Fiehn が2006年に論文タイトルで宣言している)。第二に、分子式が決まっても 構造は決まらない。そのうえで、この不確かさを隠さずに申告するために作られた Schymanski の5段階、 PFAS向けに枝分かれした信頼度スケール、そして ICH Q3A の「未同定不純物」と ICH Q3E の AET という 規制側のしきい値までを、すべて原典の数値で整理する。

イオンモビリティMS徹底解説 ― CCSは「測った値」ではない【2026年版】
質量分析

イオンモビリティMS徹底解説 ― CCSは「測った値」ではない【2026年版】

イオンモビリティMSは m/z に「形・大きさ」の軸を足す技術として普及したが、その軸の目盛である 衝突断面積(CCS)が何なのかは、しばしば誤解されている。分野の報告ガイドラインは一行でこう述べる ―― 「イオンモビリティが測っているのは移動度であって、表面積ではない」。移動度 K は SI にトレーサブルだが、 CCS はそこから数学モデルを通して導かれた量で、SI にトレーサブルではない。だからガイドラインは 「較正は CCS ではなく移動度で行え」と勧告する。分解能の数字にも同じ種類の罠があり、時間軸で測った Rp と CCS 軸で測った Rp は別物になる。本記事は報告ガイドライン原文・相互ラボ検証・2026年の SLIM対サイクリック直接比較を原典で確認し、DTIMS/TWIMS/TIMS/DMA/FAIMS の違い、分解能の読み方、 CCS がどこまで同定に使えるか、そして2026年の装置動向までを整理する。

質量分析計の選び方 ― カタログの S/N 100 は、局方の式で計算し直すと 40 になる【2026年版】
質量分析

質量分析計の選び方 ― カタログの S/N 100 は、局方の式で計算し直すと 40 になる【2026年版】

質量分析計の選定は「どれが一番高感度か」では決まらない。測る対象が決まっているなら トリプル四重極(QqQ)のMRMが依然として定量の王道であり、決まっていないなら高分解能精密質量 (Orbitrap・Q-TOF)でしか後戻りできない。本記事は、Thermo・Agilent・SCIEX・Waters の 公表スペックを原典から拾って比較したうえで、カタログの感度スペックが なぜメーカー間で横並び比較できないのか(S/NとIDL、測定化合物と注入量、ノイズの定義)を 具体的に示す。ノイズを RMS で取るカタログの S/N と、ノイズ幅(最大−最小)で取る日本薬局方〈2.00〉の S/N は、同じピークでも約 2.5 倍ずれる。目的別の選択基準と、導入前に確認すべき設置条件までを整理する。