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14 件の記事

非標的分析と未知構造推定 ― 答えが全部わかっている試料でも、当てられたのは46%だった【2026年版】
質量分析

非標的分析と未知構造推定 ― 答えが全部わかっている試料でも、当てられたのは46%だった【2026年版】

高分解能MSで「未知のピーク」を追う非標的分析は、環境・食品・医薬・法科学に急速に広がった。 だが米国EPAが主催した共同試験ENTACTでは、何が入っているかを全部わかっている合成混合物を目隠しで 分析させたところ、異性体を除いた真陽性率は最良でも46%、答えを見てからやり直しても65%にとどまった。 本記事は「なぜ当たらないのか」を二段階に分けて追う。第一に、質量精度をいくら上げても分子式は 一意にならない(Kind & Fiehn が2006年に論文タイトルで宣言している)。第二に、分子式が決まっても 構造は決まらない。そのうえで、この不確かさを隠さずに申告するために作られた Schymanski の5段階、 PFAS向けに枝分かれした信頼度スケール、そして ICH Q3A の「未同定不純物」と ICH Q3E の AET という 規制側のしきい値までを、すべて原典の数値で整理する。

定量LC-MS/MSのメソッド開発 ― MRM最適化に「最大化してよい量」はひとつもない【2026年版】
質量分析

定量LC-MS/MSのメソッド開発 ― MRM最適化に「最大化してよい量」はひとつもない【2026年版】

MRM の最適化は「感度を最大にする作業」だと思われている。だが実際に最大化できる量はひとつもない。 ドウェル時間を伸ばせばサイクル時間が延びてピークの点数が減り、点数を稼ごうとドウェルを削れば イオン統計が痩せる。トランジションを増やせば同時監視数が増えて両方が悪化する。メーカー自身の 技術資料が「多重化を3倍にする2つの方法」として示している図は、どちらを選んでも別の何かが壊れる という図である。本記事は SANTE のイオン選択条文、SCIEX のサイクル時間の式、島津の実測 %RSD、 Thermo の血清中103トランジションのデータを原典で確認し、トランジション選択・コリジョンエネルギー・ Q1分解能・ドウェルとサイクルの算術・スケジュール MRM・クロストークまでを、装置の前で決める順序に沿って整理する。

GC-MS/MS 残留農薬分析の実務 ― マトリックス効果が「増強」に転ぶGCでは、対処も逆になる【2026年版】
質量分析

GC-MS/MS 残留農薬分析の実務 ― マトリックス効果が「増強」に転ぶGCでは、対処も逆になる【2026年版】

LC-MS/MS のマトリックス効果は「抑制」だが、GC のそれは多くの場合「増強」である。原因も違う。 イオン化の競合ではなく、注入口とカラム先端の活性点をマトリックスが埋めてしまい、 溶媒標準では失われていた分析種が試料中では失われずに済む ―― つまり標準側が低いのだ。 符号が逆なので、対処も逆向きになる。EU の SANTE ガイダンス自身が「マトリックスマッチ検量線は LC-MS より GC でこそ効く」と書いており、GC 固有の解としてアナライトプロテクタントを名指ししている。 ただし 2026 年、EURL-FV が参画した論文が「糖・糖ラクトンを使う従来のアナライトプロテクタントは 反復注入のルーチンには適さない」と報告した。規制側も動いており、SANTE/11312/2021 の v2026 では 同定基準から S/N ≥ 3 が取り消し線とともに消えている。本記事は SANTE v2026・日本の通知試験法と 妥当性評価ガイドライン・告示を原典で開いて確認し、前処理から水素キャリアガスまでを整理する。

イオンモビリティMS徹底解説 ― CCSは「測った値」ではない【2026年版】
質量分析

イオンモビリティMS徹底解説 ― CCSは「測った値」ではない【2026年版】

イオンモビリティMSは m/z に「形・大きさ」の軸を足す技術として普及したが、その軸の目盛である 衝突断面積(CCS)が何なのかは、しばしば誤解されている。分野の報告ガイドラインは一行でこう述べる ―― 「イオンモビリティが測っているのは移動度であって、表面積ではない」。移動度 K は SI にトレーサブルだが、 CCS はそこから数学モデルを通して導かれた量で、SI にトレーサブルではない。だからガイドラインは 「較正は CCS ではなく移動度で行え」と勧告する。分解能の数字にも同じ種類の罠があり、時間軸で測った Rp と CCS 軸で測った Rp は別物になる。本記事は報告ガイドライン原文・相互ラボ検証・2026年の SLIM対サイクリック直接比較を原典で確認し、DTIMS/TWIMS/TIMS/DMA/FAIMS の違い、分解能の読み方、 CCS がどこまで同定に使えるか、そして2026年の装置動向までを整理する。

マトリックス効果とイオン化抑制の対処 ― 犯人はリン脂質だけではないし、動くし、重水素標識の内標準にも穴がある
質量分析

マトリックス効果とイオン化抑制の対処 ― 犯人はリン脂質だけではないし、動くし、重水素標識の内標準にも穴がある

マトリックス効果の教科書的な説明は「液滴表面や気相で電荷を奪い合う」だが、Merck の機構研究は 「気相反応が主因である可能性は低く、不揮発性溶質が液滴の溶液物性を変えることが主因」と結論している。 対処も同じくらい誤解されている。希釈の効果は希釈倍率の対数にしか比例しない(初期抑制 80% を 20% 未満にするには 25〜40 倍)。リン脂質除去プレートは回収率と再現性を大きく改善するが、マトリックスファクターは液液抽出と同等だった。 そして最後の砦とされる安定同位体標識内標準にも穴がある ― 重水素標識は同位体効果で保持時間がわずかにずれ、 分析種と内標準が違う抑制を受けて比が崩れた実例が報告されている。本記事は原著論文とメーカー技術資料を 原典で確認し、犯人の特定・4つの対処の定量的な効き目・規制が実際に要求していることを整理する。

イオン源の選び方 ― 専用ESIと専用APCIは「別の89%」を拾う【2026年版】
質量分析

イオン源の選び方 ― 専用ESIと専用APCIは「別の89%」を拾う【2026年版】

イオン源の選定は「極性と分子量のチャートを見て決める」と教わる。しかし Agilent が公表した実測では、 医薬品と中間体のテストセットに対し専用APCI源が 89%、専用ESI源が 89% を検出し、しかもその 89% は 「別の 89%」だった。つまり ESI か APCI かの選択は、必ず取りこぼしを生む。本記事は NIST WebBook のプロトン親和力・イオン化エネルギーを一次データとして、ESI・APCI・APPI・EI・CI・NCI が 「気相でイオンにできる条件」を数値で整理し、そのうえで流量(ESI は 10 nL/min → 1 mL/min で 消費量 10万倍・シグナル 20倍)、マトリックス効果(イオン抑制で血漿濃度が最大 5.5 倍の過小評価)、 複合イオン源の妥協点、そして GC 側の 70 eV EI が抱える「NIST ライブラリの約 30% に分子イオンが無い」 という代償までを、メーカー技術資料と査読論文の原典から確認して示す。

質量分析計の選び方 ― QqQ・Q-TOF・Orbitrap・TOFを、公表スペックの読み方から比較する【2026年版】
質量分析

質量分析計の選び方 ― QqQ・Q-TOF・Orbitrap・TOFを、公表スペックの読み方から比較する【2026年版】

質量分析計の選定は「どれが一番高感度か」では決まらない。測る対象が決まっているなら トリプル四重極(QqQ)のMRMが依然として定量の王道であり、決まっていないなら高分解能精密質量 (Orbitrap・Q-TOF)でしか後戻りできない。本記事は、Thermo・Agilent・SCIEX・Waters の 公表スペックを原典から拾って比較したうえで、カタログの感度スペックが なぜメーカー間で横並び比較できないのか(S/NとIDL、測定化合物と注入量、ノイズの定義)を 具体的に示し、目的別の選択基準と、導入前に確認すべき設置条件までを整理する。

元素不純物とICP-MS ― JP19〈2.66〉が三薬局方調和になり、日局独自規定が見えるようになった【2026年版】
質量分析

元素不純物とICP-MS ― JP19〈2.66〉が三薬局方調和になり、日局独自規定が見えるようになった【2026年版】

第十九改正日本薬局方(JP19)で一般試験法〈2.66 元素不純物〉が改正された。改正されたのは 「II. 元素不純物試験法」で、薬局方調和国際会議において新規に調和合意された内容が反映され、 三薬局方で調和された部分と日本薬局方が独自に規定する部分が条文上で区別されるようになった。 JP18と条文を突き合わせると判定基準の数値は変わっていない――変わったのは位置づけである。 本記事では改正の中身を原文で示し、あわせて元素不純物分析の実務を整理する。クラスとPDE、 目標限度値とJ、分析手順1(ICP-OES)と手順2(ICP-MS)の使い分け、密閉容器マイクロ波分解、 アルゴン塩化物によるヒ素の干渉とコリジョン/リアクションセル、そしてバリデーション要件まで。

ICH M10バイオアナリシス実務 ― 旧2通知は廃止、移行期間も終わった今の判定基準【2026年版】
質量分析

ICH M10バイオアナリシス実務 ― 旧2通知は廃止、移行期間も終わった今の判定基準【2026年版】

生体試料中の薬物濃度を測るバイオアナリシスは、ICH M10ガイドラインが2024年12月4日に 国内通知され、従来のクロマトグラフィー法・リガンド結合法の2通知は廃止された。旧通知でも よいとされた移行期間は令和7年9月30日開始分までで、すでに終了している。つまり現在はM10一本である。 本記事では通知と原文を根拠に、適用範囲、フル/パーシャル/クロスバリデーションの使い分け、 検量線の6濃度・75%ルール、真度精度の±15%(定量下限±20%)、実試料分析の受入基準、 マトリックス効果とキャリーオーバー、そしてISR(実試料再分析)の実施規模と判定基準までを実務の順に整理する。

LC-MSトラブルシューティング ― 感度低下・イオン抑制・ゴーストピークを切り分ける【2026年版】
質量分析

LC-MSトラブルシューティング ― 感度低下・イオン抑制・ゴーストピークを切り分ける【2026年版】

LC-MSが「昨日まで出ていた感度が出ない」「ブランクにピークが出る」となったとき、勘に頼らず 原因を切り分けるための実践ガイド。まずダイレクトインフュージョンでLC側とMS側を分離する divide-and-conquerの手順を示し、感度低下の最頻原因であるイオン源汚染、見えない感度低下= イオン抑制とマトリックス効果、その定量評価法(ポストカラムインフュージョンとMatuszewskiの ポストエクストラクション添加法、ICH M10の受容基準±15%)、ゴーストピークとキャリーオーバーの 発生源特定、TFAがシグナルを殺す機構、PEG・フタル酸エステルなど背景汚染の代表m/z、 アダクトとインソース分解による誤同定までを、原因→診断→対策の順に整理する。

【2026年4月施行】PFAS分析の実務ガイド ― 水質基準50 ng/L対応とLC-MS/MSの勘所
質量分析

【2026年4月施行】PFAS分析の実務ガイド ― 水質基準50 ng/L対応とLC-MS/MSの勘所

2026年4月1日、PFOS・PFOAが水道水の水質基準項目に格上げされ、水質検査が努力義務から 法的義務になる。基準値は合算50 ng/L、検査頻度はおおむね3か月に1回以上。本記事は、告示法 (別表第45)の改正で何が変わったか(濃縮倍率10〜1000倍の柔軟化、標準液の冷凍6か月保存)を 押さえたうえで、ng/Lオーダーの定量を成立させる4つの技術的勘所 ― 固相抽出(WAX系/SDVB系)、 13C標識内部標準による同位体希釈法、PTFE排除とデイレイカラムによる装置由来汚染対策、 分岐異性体の扱い ― を実務目線で解説する。さらにTOPアッセイ・AOFといった総量指標と、 それらが捉えられない超短鎖TFAという死角、EPA・ISO・EU DWDとの国際比較までを整理する。

AI・機械学習が変える分析化学 ― スペクトル自動解析の最前線【2026年版】
データ解析

AI・機械学習が変える分析化学 ― スペクトル自動解析の最前線【2026年版】

AI・機械学習は、分析化学の「測る」より下流――スペクトルや クロマトグラムを読み解く解析工程を急速に変えつつある。NMRからの構造推定、 質量分析による未知化合物・ペプチドの同定、クロマトの保持時間予測、そして 複数手法をまたぐ「基盤モデル」まで、2026年時点の最前線を手法別に整理し、 あわせて過学習・データリーケージ・再現性といった避けて通れない落とし穴と、 分析者が果たすべき役割を、入門者と現場の研究者の両方に向けて解説する。

MALDIイメージング質量分析(MSI)の最前線 ― 組織を分子で見る空間オミクス
質量分析

MALDIイメージング質量分析(MSI)の最前線 ― 組織を分子で見る空間オミクス

組織切片の「どこに、どの分子が、どれだけ」あるかを標識フリーで可視化するMALDIイメージング質量分析(MSI)を、 原理から最前線まで出典つきで解説する。5〜10µmから単一細胞・サブミクロンへ進む空間分解能、 MALDI-2ポストイオン化とイオンモビリティ(timsTOF fleX)による高感度・異性体分離、SpaceM等の単一細胞メタボロミクス、 顕微鏡やイメージングマスサイトメトリーとのマルチオミクス統合、創薬の薬物分布や病理応用まで、入門者にも専門家にも届く形でまとめる。

【2026年版・徹底解説】質量分析の最新技術動向 ― Astralの原理から4Dプロテオミクス・ネイティブMS・空間オミクスまで
質量分析

【2026年版・徹底解説】質量分析の最新技術動向 ― Astralの原理から4Dプロテオミクス・ネイティブMS・空間オミクスまで

質量分析(MS)の最新動向を、アナライザーの動作原理から徹底解説する保存版。 Orbitrap Astralの「30mの非対称トラックとロスレス伝送(80%超)」がなぜ約10倍の速度・感度・分解能を生むのか、 timsTOFのTIMS/PASEFによる4Dプロテオミクス(保持時間×CCS×m/z×強度)、EAD/UVPD/SIDなど解離法の多様化、 DDA/DIA/狭窓DIAの取得戦略、メガダルトンを測るネイティブMS・電荷検出MS(CDMS)とAAV遺伝子治療QC、 そして単一細胞・空間オミクスのMSイメージングまで、2023〜2026年の最前線を入門者と専門家の双方に届ける。