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8 件の記事

プロテオミクスのDDA/DIA ― タンパク質の「FDR 1%」が妥当だと確かめられた組み合わせは、24件中ゼロだった【2026年版】
質量分析

プロテオミクスのDDA/DIA ― タンパク質の「FDR 1%」が妥当だと確かめられた組み合わせは、24件中ゼロだった【2026年版】

プロテオミクスの論文と報告書には、ほぼ例外なく「FDR 1%」と書いてある。だがその1%が本当に1%であることを、 分野はほとんど検証してこなかった。2024〜2025年にエントラップメント実験で検証されたとき、 タンパク質レベルの1% FDR 制御が「妥当」と判定できたツールとデータセットの組み合わせは、24件中ゼロだった。 本記事は、target-decoy を作った本人が「この値は個々の同定については何も言っていない」と書いている出発点から、 DDA が何を測っていないか、DIA が何を先に持ち込んでいるか、そしてペプチドの1%がなぜタンパク質の1%にならないかを、 一次資料と筆者自身の計算で順に追う。

定量LC-MS/MSのメソッド開発 ― MRM最適化に「最大化してよい量」はひとつもない【2026年版】
質量分析

定量LC-MS/MSのメソッド開発 ― MRM最適化に「最大化してよい量」はひとつもない【2026年版】

MRM の最適化は「感度を最大にする作業」だと思われている。だが実際に最大化できる量はひとつもない。 ドウェル時間を伸ばせばサイクル時間が延びてピークの点数が減り、点数を稼ごうとドウェルを削れば イオン統計が痩せる。トランジションを増やせば同時監視数が増えて両方が悪化する。メーカー自身の 技術資料が「多重化を3倍にする2つの方法」として示している図は、どちらを選んでも別の何かが壊れる という図である。本記事は SANTE のイオン選択条文、SCIEX のサイクル時間の式、島津の実測 %RSD、 Thermo の血清中103トランジションのデータを原典で確認し、トランジション選択・コリジョンエネルギー・ Q1分解能・ドウェルとサイクルの算術・スケジュール MRM・クロストークまでを、装置の前で決める順序に沿って整理する。

マトリックス効果とイオン化抑制の対処 ― 犯人はリン脂質だけではないし、動くし、重水素標識の内標準にも穴がある
質量分析

マトリックス効果とイオン化抑制の対処 ― 犯人はリン脂質だけではないし、動くし、重水素標識の内標準にも穴がある

マトリックス効果の教科書的な説明は「液滴表面や気相で電荷を奪い合う」だが、Merck の機構研究は 「気相反応が主因である可能性は低く、不揮発性溶質が液滴の溶液物性を変えることが主因」と結論している。 対処も同じくらい誤解されている。希釈の効果は希釈倍率の対数にしか比例しない(初期抑制 80% を 20% 未満にするには 25〜40 倍)。リン脂質除去プレートは回収率と再現性を大きく改善するが、マトリックスファクターは液液抽出と同等だった。 そして最後の砦とされる安定同位体標識内標準にも穴がある ― 重水素標識は同位体効果で保持時間がわずかにずれ、 分析種と内標準が違う抑制を受けて比が崩れた実例が報告されている。本記事は原著論文とメーカー技術資料を 原典で確認し、犯人の特定・4つの対処の定量的な効き目・規制が実際に要求していることを整理する。

前処理・SPEカラムの選び方 ― pKaで収着剤が決まり、ベッド質量で上限が決まる【2026年版】

前処理・SPEカラムの選び方 ― pKaで収着剤が決まり、ベッド質量で上限が決まる【2026年版】

SPEカートリッジのカタログは、収着剤名と充填量が並ぶだけで「どれを選べばいいか」を教えてくれない。 しかし選択のロジック自体は単純で、分析対象の pKa が収着剤の種類を決め、収着剤の質量が 処理できる試料量の上限を決め、ベッドボリュームが必要な溶媒量を決める。 本記事は、シリカC18をポリマー系が置き換えた理由(水濡れ性)、強/弱イオン交換を pKa で選ぶ規則、 「ベッド質量の5%(シリカ)〜10%(ポリマー)」という容量則、乾固を省くµElutionの実測差、 そしてSPE・SLE・LLEを同一試料で比較したメーカー実測データを、一次資料で確認して整理する。 あわせて、ICH M10 が回収率について何を要求し、何を要求していないかを条文で確認する。

HILIC徹底解説 ― 逆相で保持しない極性化合物を、水層と平衡化から攻略する【2026年版】

HILIC徹底解説 ― 逆相で保持しない極性化合物を、水層と平衡化から攻略する【2026年版】

逆相で保持しない極性化合物を分離する手段がHILIC(親水性相互作用クロマトグラフィー)である。 高有機溶媒の移動相を使い、固定相表面に形成される水に富んだ層への分配で保持する——という説明が 広く使われてきたが、2023年の定量的な研究は、分配が支配的な化合物と表面吸着が支配的な化合物が 混在することを示している。本記事では保持機構を最新の知見で整理し、固定相・移動相・緩衝液の選び方、 そして実務で最も事故が多い「試料希釈液」と「平衡化」——新品カラムに60〜80カラム容量が必要という 逆相の常識との違い——を、メーカー公式ガイドと論文を根拠に解説する。 あわせて、その60〜80カラム容量が実際に何分なのかを寸法と流量から計算し、 100検体のバッチで再平衡だけに何時間消えるかまで数字にする。

ICH M10バイオアナリシス実務 ― ISR の「±20 %」は平均で割る式なので、普通の相対差なら +22 % と −18 % になる【2026年版】
質量分析

ICH M10バイオアナリシス実務 ― ISR の「±20 %」は平均で割る式なので、普通の相対差なら +22 % と −18 % になる【2026年版】

ISR(実試料再分析)の判定基準「乖離度 ±20 % 以内」は、差を初回値ではなく初回値と再分析値の平均で割る式で定義されている。 そのため許される比は 1.22 倍で、普通の相対差に直すと高い側 +22.2 %・低い側 −18.2 % になる(筆者計算)。 同じ式で LBA の ±30 % は 1.35 倍、+35.3 %/−26.1 %。初回値を分母にして計算すると、本来合格の試料を不合格と数える。 実施規模の規定も数字を追うと性格が見える。1000 試料までは 10 %、超えた分は 5 % なので、10,000 試料の試験では再分析率が 5.5 % まで下がる。 実試料分析の受入基準「2/3 かつ各濃度 50 %」も、3 濃度 × 2 重測定なら 2 個が外れる 15 通りのうち 3 通り(同じ濃度で 2 個とも外れる場合)だけが不合格になる。 生体試料中の薬物濃度を測るバイオアナリシスは、ICH M10ガイドラインが2024年12月4日に 国内通知され、従来のクロマトグラフィー法・リガンド結合法の2通知は廃止された。旧通知でも よいとされた移行期間は令和7年9月30日開始分までで、すでに終了している。つまり現在はM10一本である。 本記事では通知と原文を根拠に、適用範囲、フル/パーシャル/クロスバリデーションの使い分け、 検量線の6濃度・75%ルール、真度精度の±15%(定量下限±20%)、実試料分析の受入基準、 マトリックス効果とキャリーオーバー、そしてISR(実試料再分析)の実施規模と判定基準までを実務の順に整理する。

LC-MSトラブルシューティング ― 同じ 0.01 % のキャリーオーバーが、検量線を 3 桁から 4 桁に広げただけで不合格になる【2026年版】
質量分析

LC-MSトラブルシューティング ― 同じ 0.01 % のキャリーオーバーが、検量線を 3 桁から 4 桁に広げただけで不合格になる【2026年版】

ICH M10 はキャリーオーバーの受容基準を「ULOQ の直後のブランクで、LLOQ の応答の 20 % 以下」と書いている。 この基準は装置のキャリーオーバー率そのものではなく、検量線の幅で合否が決まる。ULOQ の 0.01 % が残る装置は、 検量線が 3 桁なら LLOQ の 10 % で合格、4 桁に広げると 100 % で不合格になる(筆者計算)。内標は「IS 応答の 5 %」で、 こちらは検量線の幅に依らない。本記事はこの一点を軸に、LC-MS が「昨日まで出ていた感度が出ない」「ブランクにピークが出る」 となったとき、勘に頼らず原因を切り分ける手順を整理する。ダイレクトインフュージョンで LC 側と MS 側を分ける divide-and-conquer、 感度低下の最頻原因であるイオン源汚染、見えない感度低下=イオン抑制(Bonfiglio 1999 のポストカラムインフュージョン、 Matuszewski 2003 の絶対/相対マトリックス効果、M10 の ±15 %)、TFA がシグナルを殺す機構と Apffel 1995 の対処、 PEG・フタル酸エステルなど背景汚染の代表 m/z、アダクトとインソース分解による誤同定までを、一次資料の原文で確認して書く。

【2026年4月施行】PFAS分析の実務ガイド ― 同位体希釈法で測る 40 物質のうち、自分の標識体を持つのは 24 物質しかない
質量分析

【2026年4月施行】PFAS分析の実務ガイド ― 同位体希釈法で測る 40 物質のうち、自分の標識体を持つのは 24 物質しかない

2026年4月1日、PFOS・PFOAが水道水の水質基準項目に格上げされ、水質検査が努力義務から 法的義務になる。基準値は合算50 ng/L、検査頻度はおおむね3か月に1回以上。ng/L の定量を成立させる 同位体希釈法は「目的物質と同じ挙動をする標識体」が前提だが、米国 EPA Method 1633A が測る 40 物質のうち 自分自身の標識体で補正できるのは 24 物質で、残り 16 物質は別の化合物の標識体で代用している。本記事は、告示法 (別表第45)の改正で何が変わったか(濃縮倍率10〜1000倍の柔軟化、標準液の冷凍6か月保存)を 押さえたうえで、ng/Lオーダーの定量を成立させる4つの技術的勘所 ― 固相抽出(WAX系/SDVB系)、 13C標識内部標準による同位体希釈法、PTFE排除とデイレイカラムによる装置由来汚染対策、 分岐異性体の扱い ― を実務目線で解説する。さらにTOPアッセイ・AOFといった総量指標と、 それらが捉えられない超短鎖TFAという死角、EPA・ISO・EU DWDとの国際比較までを整理する。