マイクロプラスチックの測定値を読むとき、まず確かめるべきことがあります。その数字は、個数ですか、質量ですか。
「1 L あたり 3 個」と「1 L あたり 0.5 µg」は、どちらもマイクロプラスチックの濃度です。しかし この 2 つは換算できません。単位が違うから、ではありません。同じ試料に対して、逆向きの重みを掛けているからです。
粒子の質量は径の 3 乗に比例します。一方、小さい粒子ほど数は多い。だから 個数は小さい粒子に支配され、 質量は大きい粒子に支配される。この記事では、粒径分布をべき乗則でモデル化して、その落差を数値にします。 結論を先に書くと、50 µm 未満の粒子は個数の 98 % を占めながら、質量では 0.014 % にしかなりません (α = 2.07 の場合。モデルと仮定は 4 節に明記します)。
そしてこの話は、理屈の遊びではありません。カリフォルニア州は飲料水中のマイクロプラスチックを 「1 µm 超〜5,000 µm 未満」と定義したうえで、下限 50 µm の赤外法と下限 20 µm のラマン法を、 同じ日に 2 つとも公定法として採択しています。定義と方法のあいだにも、方法どうしのあいだにも、 はっきりした段差があります。
この記事の読み方
これから学ぶ方は 1〜5 節を読んでください。何をマイクロプラスチックと呼び、それをどう数えていて、 なぜ個数と質量が別物なのかが分かります。
実際に測る立場の方は 6〜11 節が本題です。検出下限の決まり方、ブランクの扱い、 何を同定しているのか、熱分解 GC-MS が答える問いの違いを扱います。
計算はすべてモデルと仮定を明示したうえでの筆者計算です。実測値ではありません。
1. 定義は 1 µm から始まっている
カリフォルニア州水資源管理委員会(State Water Resources Control Board)が 2020 年に示した定義を、 省略せずに引用します。
‘Microplastics in Drinking Water’ are defined as solid polymeric materials to which chemical additives or other substances may have been added, which are particles which have at least two dimensions that are greater than 1 and less than 5,000 micrometers (µm). Polymers that are derived in nature that have not been chemically modified (other than by hydrolysis) are excluded.
―― State Water Resources Control Board, Proposed Definition of ‘Microplastics in Drinking Water’, 2020年3月19日
読み落としやすい点が 3 つあります。
(1)下限は 1 µm。「マイクロ」という語感から 1 µm〜1 mm を思い浮かべがちですが、上限は 5,000 µm=5 mm です。
(2)「少なくとも 2 つの寸法が」(at least two dimensions)。繊維のように一方向だけ長いものをどう扱うかが、 この一句で決まります。
(3)天然由来で化学的に未修飾の高分子は除く。セルロース繊維のような、見た目は同じでも規制対象でないものを 外すための条項です。ただし加水分解による修飾は除外されません。
2. ところが、公定法の下限は 50 µm と 20 µm である
同じ州が採択した標準作業手順は 2 つあります。どちらも 2022 年 5 月 27 日改訂版です。
SWB-MP1(赤外分光):
This method is for the determination of microplastics … greater than 50 µm in size in treated drinking water using visual microscopy for particle counts, and Infrared (IR) spectroscopy for chemical identification of counted particles. IR spectroscopy can include, but is not limited to, Fourier Transform IR (FTIR), Laser Direct Infrared (LDIR) Imaging, Optical-Photothermal IR (O-PTIR), and other techniques capable of measuring microplastic particles as small as 50 µm.
SWB-MP2(ラマン分光):
This method is for the determination of microplastics … greater than 20 µm in size in treated drinking water using visual microscopy for particle counts, and Raman spectroscopy for chemical identification of counted particles.
どちらの方法も、自分の下限をこう明記しています。
The lowest particle size reliably detected by this method is 50 µm[MP2 では 20 µm], with a maximum size of 5,000 µm … While the extraction procedures in this method have been applied to particles <50 µm[<20 µm](De Frond et al., 2022), this method has not been validated for this size fraction.
整理するとこうなります。
| 定義 | SWB-MP1(IR) | SWB-MP2(ラマン) | |
|---|---|---|---|
| 下限 | 1 µm 超 | 50 µm 超 | 20 µm 超 |
| 上限 | 5,000 µm 未満 | 5,000 µm | 5,000 µm |
| 得られる量 | ― | 粒子数(同定は IR) | 粒子数(同定はラマン) |
定義が対象としている 1〜20 µm の帯域を、どちらの公定法も見ていません。そして 20〜50 µm の帯域は、 ラマン法では数えられ、赤外法では数えられません。
ここで重要なのは、これが方法の欠陥ではないということです。方法は自分の限界を正確に書いています。 問題は、この 2 つの方法で得た数字を並べて比べてよいと思ってしまうことのほうです。
3. 下限が違うと、同じ試料の粒子数は桁で変わる
どのくらい変わるのかを計算します。
モデルと仮定:粒径 d の個数密度がべき乗則 n(d) ∝ d−α に従うとします。粒径の範囲は 州の定義に合わせて 1〜5,000 µm。α の値は文献で幅があるため、1.6 / 2.07 / 2.6 の 3 通りで計算します。 α は本記事で原典から確認した値ではなく、結論が α に依存しないことを示すための仮定です。
| α | 50 µm 以上を 1 としたとき | 20 µm 以上 | 1 µm 以上 |
|---|---|---|---|
| 1.60 | 1.0 | 1.8 倍 | 11 倍 |
| 2.07 | 1.0 | 2.7 倍 | 66 倍 |
| 2.60 | 1.0 | 4.3 倍 | 523 倍 |
筆者計算。
赤外法(50 µm〜)で 1 個数えられた試料は、ラマン法(20 µm〜)なら 2〜4 個になり、 定義どおり 1 µm から数えれば 11〜523 個になります。
同じ水です。同じ粒子です。変わったのはどこから数え始めたかだけです。
4. 個数は小さい粒子に、質量は大きい粒子に支配される
ここがこの記事の中心です。
同じべき乗則のモデルに、もう 1 つだけ仮定を足します。粒子は等方的で密度が一定なので、 1 個の質量は d3 に比例する。すると、ある径 D より小さい粒子が全体に占める割合は、 個数で見るか質量で見るかで、まったく違う値になります。
| α | 20 µm 未満が占める個数 | 20 µm 未満が占める質量 | 50 µm 未満が占める個数 | 50 µm 未満が占める質量 |
|---|---|---|---|---|
| 1.60 | 83.93 % | 0.0002 % | 90.99 % | 0.0016 % |
| 2.07 | 95.96 % | 0.0023 % | 98.49 % | 0.0138 % |
| 2.60 | 99.17 % | 0.0433 % | 99.81 % | 0.1578 % |
筆者計算。粒径範囲 1〜5,000 µm。
α をどう取っても結論は変わりません。小さい側は、個数のほぼ全部を占めながら、質量ではほぼゼロです。 α = 2.07 なら 50 µm 未満は個数の 98.49 %、質量の 0.0138 %。4 桁の落差があります。
裏を返せば、質量は上限側の数個の大きな粒子でほとんど決まります。5,000 µm の粒子 1 個は、 1 µm の粒子 1011 個分の質量に相当します(径比 5,000 の 3 乗)。
5. だから「個数」と「質量」は換算できない
4 節の表が意味することを、はっきり書きます。
個数で測る方法(顕微分光)と質量で測る方法(熱分解 GC-MS)は、同じ試料の別の部分を見ています。
- 顕微分光の数字は、小さい粒子が何個あったかでほぼ決まる。
- 熱分解 GC-MS の数字は、大きい粒子が何個あったかでほぼ決まる。
したがって、両者の比を取っても、片方からもう片方を推定しても、意味のある量にはなりません。 換算するには、粒径分布そのものを知っていなければならない。そして粒径分布を知るには、 結局どちらかの方法で全域を測る必要があります ―― それができないから 2 つの方法があるわけです。
この構図は、この分野に限りません。同じ試料を、違う重みで積分している 2 つの数字を並べてはいけない。 クロマトグラムの積分でも、同じことが起きます (クロマトグラムの積分とピーク処理)。
6. 検出下限は「粒子の個数」で決まっている
公定法の検出下限の書き方も、通常の化学分析とは違います。SWB-MP1/MP2 はどちらもこう書いています。
The MRL for this method is the minimum detectable amount (MDA), which is the minimum number of microplastic particles that must present in a sample to give a specified power, 1-β, of 0.95, for Type II errors (false negatives, MARLAP, 2004). MDA values … ranges from 47 to 88 particles for the sizes of particles covered by this method, and is dependent on the size fraction. These values are independent of the extracted water volume.
検出下限は「濃度」ではなく「粒子の個数」で定義されていて、しかも採水量によらない。 つまり濃度としての検出下限は、採水量で割った値になります。
| 採水量 | MDA = 47 粒子のとき | MDA = 88 粒子のとき |
|---|---|---|
| 0.450 L(州間比較試験の条件) | 104.4 個/L | 195.6 個/L |
| 1 L | 47.0 個/L | 88.0 個/L |
| 20 L(本法が想定する実験室での上限) | 2.35 個/L | 4.40 個/L |
| 1,500 L(インライン篩過) | 0.03 個/L | 0.06 個/L |
筆者計算(MDA を採水量で割ったもの)。
採水量を 0.45 L から 1,500 L に増やすと、濃度としての検出下限は 3,300 倍下がります。 マイクロプラスチックの測定で「何 L 採ったか」が決定的なのは、このためです。 方法も、インライン篩過なら 1,500 L まで採りうると書いています。
7. ブランクは消せない ― 方法が自分でそう書いている
分析法の文書が「汚染は防げない」と明言することは、あまりありません。この方法は書いています。
Microplastics are present in indoor air, and it is impossible to eliminate background contamination from airborne particles, plastic or otherwise, within the laboratory. This method includes suggestions for improvements in facilities and analytical techniques to maximize the ability of the laboratory to report reliable microplastic particle counts and minimize particle contamination throughout sample processing and analysis.
「除去できない」ことを前提に、「最大化」「最小化」という言葉で書かれている。 だから 6 節の MDA も、ブランク試料の測定に基づいて決められています(州間比較試験の 単一濃度ブランク試料 0.450 L)。
実務的な含意ははっきりしています。マイクロプラスチックの測定値は、ブランクを引いた残りである。 ブランクの水準と変動を報告していない測定値は、解釈しようがありません。
8. 何を同定しているのか ― 数えるのは顕微鏡、決めるのは分光
公定法の構成をもう一度見ます。どちらの方法も
using visual microscopy for particle counts, and [IR / Raman] spectroscopy for chemical identification of counted particles
という 2 段構えです。数えるのは顕微鏡、種類を決めるのは分光。この分担は重要です。
- 顕微鏡で見つからなかった粒子は、分光にも回りません。下限サイズを決めているのは、多くの場合 分光の性能ではなく、粒子を粒子として認識できるかどうかです。
- 分光が答えるのは「これは何の高分子か」であって「いくつあるか」ではありません。
赤外法が LDIR や O-PTIR を明示的に許容していることも、押さえておく価値があります。 どちらも異物分析の文脈で扱った手法です(異物分析の手法選択)。 公定法が「FTIR に限らない」と書いているのは、50 µm という下限を満たせるなら手法は問わないという 性能規定の書き方です。
9. 熱分解 GC-MS が答える問いは、そもそも違う
質量側の方法に移ります。熱分解 GC-MS(Py-GC/MS)は、試料を熱分解して生じる特徴的な分解生成物を GC-MS で定量し、高分子ごとの質量を出します。粒子を 1 個ずつ見ないので、個数は出ません。 その代わり、顕微鏡で認識できない小さな粒子も、質量としては積算されます。
最近の報告(Anal. Chem. 2025)は、熱分解 GC を三連四重極 MS につないで 12 種の高分子をナノグラム水準(1〜126 ng)で定量したとしています。同報告が示す 検出下限(S/N = 3)は高分子ごとに次のとおりです。
| 高分子 | 検出下限 |
|---|---|
| ナイロン 6(PA) | 1 ng |
| PET | 7 ng |
| ポリカーボネート(PC) | 10 ng |
| ポリプロピレン(PP) | 12 ng |
| ナイロン 66(N-66) | 30 ng |
| PMMA | 31 ng |
| ポリ塩化ビニル(PVC) | 41 ng |
| ポリエチレン(PE) | 60 ng |
出典:Gahn ら, Anal. Chem. 2025, Table 1。
同報告はもう 1 つ、実務上重要な干渉を挙げています。
Lipids in the tissues interfered with the quantification of PE, PP, and N-66 by producing similar precursor ions with identical fragmentation patterns. For accurate quantification of these plastics, a correction based on total lipid content was necessary.
生体試料の脂質が、PE・PP・ナイロン 66 と同じ前駆イオンを出し、同じ壊れ方をする。 熱分解 GC-MS は「高分子そのもの」ではなく「熱分解生成物」を見ているので、 別の起源から同じ分解生成物が出れば区別できません。これは 質量側の方法が抱える、 顕微分光には無い弱点です。
10. 定義のほうが動く ― 方法に合わせて変わると書いてある
1 節で引用した定義には、脚注が付いています。
Evidence concerning the toxicity and exposure of humans to microplastics is nascent and rapidly evolving, and the proposed definition of ‘Microplastics in Drinking Water’ is subject to change in response to new information. The definition may also change in response to advances in analytical techniques and/or the standardization of analytical methods.
定義のほうが、分析技術の進歩や方法の標準化に応じて変わりうる、と明記されている。
通常の規制分析では、規制値が先にあって分析法が追いかけます(RoHS対応の分析実務 は その典型です)。マイクロプラスチックでは順序が逆で、測れる範囲が定義の範囲を決めている局面がある、 と当局自身が認めていることになります。
分析者にとっての含意は 1 つです。いま報告している数字は、いまの方法で見える範囲の数字である。 方法が変われば、同じ水から違う数字が出ます。過去の測定値と比較するときは、必ず下限サイズと 方法を揃える。
11. では、何を報告すればよいか
ここまでを、報告書に書くべき項目に落とします。
| 報告項目 | それが無いと起きること |
|---|---|
| 単位(個数か質量か) | 換算できない 2 つの数字が並ぶ(4〜5 節) |
| 下限サイズ | 同じ試料でも桁で違う個数が比較される(3 節) |
| 上限サイズ | 定義の 5,000 µm を超える破片の扱いが不明になる |
| 採水量 | 濃度としての検出下限が決まらない(6 節) |
| ブランクの水準と変動 | 差し引き前の生の値かどうかが分からない(7 節) |
| 同定手法と判定基準 | 「プラスチックとした根拠」が追跡できない(8 節) |
| 対象高分子の一覧 | 熱分解 GC-MS では、測っていない高分子は 0 として扱われる(9 節) |
とくに最後の 1 行は見落とされがちです。熱分解 GC-MS の「合計質量」は、 検量線を作った高分子の合計であって、試料に含まれるプラスチックの総量ではありません。
分析者の視点
- 数字を見たら、まず単位を見る。個数か質量か。単位が違えば、比較も換算もできない。
- 下限サイズを必ず併記する。50 µm と 20 µm では、同じ試料の個数が 2〜4 倍違う(本記事のモデル計算)。
- 「検出されなかった」は「その下限より上には無かった」という意味しかない。定義の 1 µm まで 見た結果ではない。
- 採水量を先に決める。MDA は粒子数で決まっているので、濃度としての下限は採水量でしか下げられない。
- ブランクを毎回測る。方法自身が「室内空気からの汚染は除去できない」と書いている。
- 顕微鏡で見つからないものは、分光にも回らない。下限を決めているのは分光の性能とは限らない。
- 熱分解 GC-MS では、脂質など別起源の干渉を疑う。同じ前駆イオン・同じ壊れ方をするものがある。
- 対象高分子の一覧を報告する。測っていない高分子は 0 になる。
- 過去のデータと比べるときは方法を揃える。定義そのものが方法に合わせて動きうる。
まとめ
- カリフォルニア州の定義は「少なくとも 2 つの寸法が 1 µm 超 5,000 µm 未満の固体高分子材料」。 天然由来で化学的に未修飾のものは除く。
- 同州が採択した公定法は 2 つで、赤外法 SWB-MP1 は 50 µm 超、ラマン法 SWB-MP2 は 20 µm 超。 どちらもそれ未満の画分については妥当性を確認していないと明記している。
- 定義の 1〜20 µm を、どちらの公定法も見ていない。
- べき乗則のモデルで計算すると、50 µm 以上を 1 としたとき、20 µm 以上で 1.8〜4.3 倍、 1 µm 以上で 11〜523 倍の個数になる(α = 1.6〜2.6)。
- 個数は小さい粒子に、質量は大きい粒子に支配される。α = 2.07 では 50 µm 未満が個数の 98.49 % を占めながら、質量では 0.0138 %。4 桁の落差があり、 α を変えても結論は変わらない。
- したがって 個数と質量は換算できない。換算には粒径分布そのものが必要で、それを知るには 結局どちらかの方法で全域を測るしかない。
- 検出下限は MDA = 47〜88 粒子という「個数」で定義され、採水量によらない。 濃度としての下限は採水量で決まり、0.450 L なら 104〜196 個/L、1,500 L なら 0.03〜0.06 個/L。
- 方法自身が「室内空気由来の汚染は除去できない」と書いている。測定値はブランクを引いた残りである。
- 公定法は「数えるのは顕微鏡、同定するのは分光」の 2 段構え。赤外法は FTIR に限らず LDIR・O-PTIR も明示的に許容している。
- 熱分解 GC-MS は質量を出すが個数は出ない。Anal. Chem. 2025 の報告では 12 高分子を 1〜126 ng 水準で 定量。ただし生体試料の脂質が PE・PP・ナイロン 66 と同じ前駆イオン・同じ開裂パターンを出す。
- 定義の脚注は「分析技術の進歩や方法の標準化に応じて定義が変わりうる」と明記している。 規制値が先で分析法が追う通常の順序と逆である。
用語集
- マイクロプラスチック:ここではカリフォルニア州の飲料水中の定義(少なくとも 2 つの寸法が 1 µm 超 5,000 µm 未満の固体高分子材料)を指す。定義は法域によって異なる。
- SWB-MP1 / SWB-MP2:カリフォルニア州水資源管理委員会が採択した標準作業手順。前者が赤外分光、 後者がラマン分光による粒子計数法。
- MDA(minimum detectable amount):偽陰性に対する検出力 1−β = 0.95 を与えるために試料中に 存在しなければならない最小の粒子数。濃度ではなく個数で定義されている。
- MRL(minimum reporting level):データ品質目標を満たす最小の報告濃度。本法では MDA と同一とされる。
- べき乗則の粒径分布:粒径 d の個数密度が d−α に比例する分布。本記事ではモデルとしてのみ用いる。
- LDIR(レーザー直接赤外イメージング):量子カスケードレーザーを用いた高速赤外イメージング。
- O-PTIR(光-光熱赤外分光):可視プローブ光で光熱効果を検出する赤外分光。回折限界を超えた分解能を得る。
- 熱分解 GC-MS(Py-GC/MS):試料を熱分解し、生じた特徴的な分解生成物を GC-MS で定量する手法。 高分子ごとの質量が得られるが、粒子の個数は得られない。
- 前駆イオン / プロダクトイオン:タンデム質量分析で、選択して壊す側のイオンと、壊れて生じるイオン。
- インライン篩過:現場で配管から直接、篩を通して大量の水をろ過する採水方法。本法は 1,500 L までの例を挙げている。
出典
- State Water Resources Control Board(カリフォルニア州水資源管理委員会) 「Proposed Definition of ‘Microplastics in Drinking Water’」(2020年3月19日) ―― 定義の逐語、および「分析技術の進歩に応じて定義が変わりうる」という脚注。 https://www.waterboards.ca.gov/drinking_water/certlic/drinkingwater/documents/microplastics/definition_microplastics.pdf
- SWB-MP1-rev1「Standard Operating Procedures for Extraction and Measurement by Infrared Spectroscopy of Microplastic Particles in Drinking Water」(2022年5月27日改訂、35ページ) ―― 下限 50 µm、IR・LDIR・O-PTIR の許容、MDA 47〜88 粒子、室内空気由来汚染に関する記述。 https://www.waterboards.ca.gov/drinking_water/certlic/drinkingwater/documents/microplastics/swb-mp1-rev1.pdf
- SWB-MP2-rev1「Standard Operating Procedures for Extraction and Measurement by Raman Spectroscopy of Microplastic Particles in Drinking Water」(2022年5月27日改訂、35ページ) ―― 下限 20 µm。 https://www.waterboards.ca.gov/drinking_water/certlic/drinkingwater/documents/microplastics/swb-mp2-rev1.pdf
- M. B. Gahn, M. Wharton, A. Mortuza, D. Hala, C. D. Marshall, K. Kaiser, "Rapid and Sensitive Quantification of Nano- and Microplastics in Water, Sediment, and Biological Tissue by Pyrolysis-Gas Chromatography Tandem Mass Spectrometry with Dynamic Reaction Monitoring", Analytical Chemistry 2025, doi:10.1021/acs.analchem.5c05604(CC-BY 4.0) ―― 12 高分子のナノグラム水準定量、高分子別の検出下限、脂質による干渉。 https://www.ebi.ac.uk/europepmc/webservices/rest/PMC12809636/fullTextXML
- A. A. Koelmans, N. H. Mohamed Nor, E. Hermsen, M. Kooi, S. M. Mintenig, J. De France, "Microplastics in freshwaters and drinking water: Critical review and assessment of data quality", Water Research 2019, 155, 410–422(CC BY) ―― 「小さい粒子ほど数が多い」ことと、検出限界が採水量と対象粒径範囲に依存することの一般的記述。 https://www.ebi.ac.uk/europepmc/webservices/rest/PMC6449537/fullTextXML
計算は、本文中に明示したモデル(べき乗則の粒径分布、質量 ∝ d3、粒径範囲 1〜5,000 µm)に もとづく筆者の自作である。
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未確認・限界
- 本記事の計算はすべてモデル計算であり、実測値ではありません。3〜5 節はべき乗則の粒径分布と 質量 ∝ d3 を仮定した理想化です。ご自身の試料の予測値として使わないでください。
- べき乗則の指数 α(1.6 / 2.07 / 2.6)は、本記事で原典から確認した値ではありません。 文献に幅があることを踏まえた仮定値であり、「結論が α に依存しないこと」を示す目的で 3 通り置いています。 特定の水系の実測指数として引用しないでください。
- 粒子を等方的(3 寸法が同程度)と仮定しています。繊維状・フィルム状の粒子では質量 ∝ d3 は 成り立ちません。定義が「少なくとも 2 つの寸法」と書いているのは、まさにこの多様性のためです。
- 密度が高分子によらず一定と仮定しています。実際には PE(約 0.92)と PVC(約 1.4)で 5 割以上違います。
- 本記事が扱ったのはカリフォルニア州の定義と公定法です。EU の飲料水指令に基づく測定方法、 ISO 24187 などの国際規格、日本の状況は本記事では扱っていません。いずれも一次情報にあたれていません。
- EU の飲料水指令に関連する文書は EUR-Lex 経由でしか入手できず、本記事の執筆時にアクセスできませんでした (HTTP 202 で本文が返らない)。
- SWB-MP1 / MP2 の Table 1(サイズ画分別の MDA)は本記事では引用していません。本文が示す 「47〜88 粒子」という範囲のみを用いました。
- Anal. Chem. 2025 の検出下限には、報告内に軽微な不一致があります。本文は「LOD … ranged from 2 to 126 ng」と書いていますが、Table 1 のナイロン 6 は 1 ng です。本記事は Table 1 の値を掲載し、 要旨の「1–126 ng」という表現に合わせました。
- 同定の判定基準(スペクトルの一致度をどこで切るか)は本記事では扱っていません。公定法にも 数値基準の記載を確認できていません。ここは分析結果を大きく左右する部分です。
- 前処理(消化・密度分離・ろ過)の具体的手順は範囲外としました。本記事は「何を数え、何を測っているか」に 絞っています。
- ナノプラスチック(1 µm 未満)は範囲外です。州の定義自体が 1 µm 超を対象としています。
制作メモ:ディープリサーチで周辺情報を収集したうえで、記載した数値・逐語はすべて編集側で原典(州の定義文書、 2 つの標準作業手順 PDF、Europe PMC の全文)にあたって検証し、計算は仮定を明示した自作である。