RoHS対応の分析実務 ― 判定は白と黒ではなく三値で、臭素とクロムには「不合格」の欄がそもそも無い【2026年版】
元素・表面分析

RoHS対応の分析実務 ― 判定は白と黒ではなく三値で、臭素とクロムには「不合格」の欄がそもそも無い【2026年版】

RoHS の「0.1 %」は製品中の濃度ではない。ネジを外し、切り、砕いた先の「均質材料」中の濃度である。同じ機器が分母の取り方だけで 37 ppm にも 370,000 ppm にもなる。さらに XRF スクリーニングの判定表は三値で書かれており、臭素とクロムには「不合格」の欄が存在しない。IEC 62321-3-1 は 2026 年 5 月に改訂され、対象が 5 物質から 9 元素に広がった。

RoHS の鉛は 0.1 %、カドミウムは 0.01 % ―― ここまでは誰でも知っています。問題はその先です。

0.1 % とは、何に対する 0.1 % なのか。

指令の答えははっきりしています。製品でも部品でもなく、「均質材料」中の重量濃度です。そして均質材料とは、 ネジを外す・切る・砕く・挽く・研磨するといった機械的な操作では、もうそれ以上ちがう材料に分けられないもの と定義されています。つまり どこまで分解したかが、そのまま分母になる。

この記事では、鉛入りはんだが 1 か所だけ残った機器を例に、分母の取り方だけで 37 ppm(適合)から 370,000 ppm(370 倍の不適合)まで答えが動くことを計算で示します。

そのうえで、測る側の話に入ります。RoHS の判定は「合格/不合格」の二値ではありません。XRF スクリーニングの 判定表も、六価クロムの確認試験も、どちらも 「白・灰・黒」の三値で書かれています。しかも 臭素とクロムの行には、「黒」(不合格)の欄がそもそも存在しません。なぜ存在しないのか、それが この記事のいちばんの主題です。

この記事の読み方

本記事の読み進め方を示す図。規制をこれから学ぶ方は1〜5節、実際に測る立場の方は6〜13節、とくに7〜9節と11節を読む。本記事の計算はすべて仮定を明示したうえでの筆者計算である
図解:規制を学ぶなら 1〜5 節、測る立場なら 6〜13 節。

規制をこれから学ぶ方は 1〜5 節を読んでください。何が、いくつ、いつから規制されているのかと、 その数値がどの単位に対するものなのかが分かります。

実際に測る立場の方は 6〜13 節が本題です。とくに 7〜9 節の判定表と、11 節の前処理の落とし穴は、 そのまま実務の判断材料になります。

なお、本記事の計算はすべて仮定を明示したうえでの筆者計算です。実測値ではありません。

1. 指令が実際に書いていること ― 10 物質と、2 つの閾値

RoHS 指令(Directive 2011/65/EU)の第 4 条第 1 項は、こう書いています。

Member States shall ensure that EEE placed on the market, including cables and spare parts for its repair, its reuse, updating of its functionalities or upgrading of its capacity, does not contain the substances listed in Annex II.

―― Directive 2011/65/EU, Article 4(1)

そして第 2 項が、この記事の出発点です。

For the purposes of this Directive, no more than the maximum concentration value by weight in homogeneous materials as specified in Annex II shall be tolerated.

―― Directive 2011/65/EU, Article 4(2)

「均質材料中の重量あたりの最大濃度」。製品中でも部品中でもありません。

その Annex II が挙げる物質と閾値は次の 10 個です(見出しからして 「Restricted substances referred to in Article 4(1) and maximum concentration values tolerated by weight in homogeneous materials」= 均質材料中の重量濃度、と明記されています)。

物質 閾値 ppm 換算
鉛(Lead) 0.1 % 1,000
水銀(Mercury) 0.1 % 1,000
カドミウム(Cadmium) 0.01 % 100
六価クロム(Hexavalent chromium) 0.1 % 1,000
ポリ臭化ビフェニル(PBB) 0.1 % 1,000
ポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE) 0.1 % 1,000
フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(DEHP) 0.1 % 1,000
フタル酸ブチルベンジル(BBP) 0.1 % 1,000
フタル酸ジブチル(DBP) 0.1 % 1,000
フタル酸ジイソブチル(DIBP) 0.1 % 1,000

出典:Directive 2011/65/EU, Annex II(2015/863 による差し替え後)。

カドミウムだけが 10 倍厳しい。この非対称は分析の設計にそのまま効きます。あとで見るとおり、 XRF の灰色ゾーンがいちばん問題になるのもカドミウムです。

2. 「均質材料」の定義が、分母を決めている

均質材料の定義を示す図。完成した機器を、ネジを外す・切る・砕く・挽く・研磨するという5つの機械的操作で分けていくと、それ以上分けられない材料の単位に至る。どこまで分解したかが、そのまま濃度の分母になる
図解:条文が挙げる機械的操作は 5 つ。分けられるなら分けよ、という設計になっている。

指令第 3 条第 20 号の定義を、省略せずに引用します。

‘homogeneous material’ means one material of uniform composition throughout or a material, consisting of a combination of materials, that cannot be disjointed or separated into different materials by mechanical actions such as unscrewing, cutting, crushing, grinding and abrasive processes;

―― Directive 2011/65/EU, Article 3(20)

条文が挙げている「機械的な操作」は 5 つです ―― ネジを外す(unscrewing)、切る(cutting)、 砕く(crushing)、挽く(grinding)、研磨する(abrasive processes)

つまり定義は、材料の側ではなく操作の側から書かれています。「分けられるなら分けよ。分けた先の それぞれが、規制値を守っているか」。ここが RoHS の設計思想です。

そして、これは分析の言葉に翻訳するとこうなります。規制が指定しているのは、濃度の分子ではなく分母のほうです。

3. 分母を変えると、同じ機器が適合にも不適合にもなる

同じ鉛を異なる分母で割った結果を示す図。鉛入りはんだが1か所(20 mg、鉛37質量%)だけ残った200 gの機器では、機器まるごとで37 ppm(適合)、基板ごとで296 ppm(適合)、はんだそのものでは370,000 ppm(不適合・370倍)になる。均質材料が規制値ちょうどのとき、それが製品の0.40 %なら製品全体では4.0 ppm(250倍の希釈)、1 %なら10 ppm(100倍)、5 %なら50 ppm(20倍)、12.5 %なら125 ppm(8倍)、100 %なら1,000 ppm(1倍)
図解:指令が要求しているのは 3 行目だけ。上の 2 行は規制上の答えになっていない。

具体的に計算します。

モデルと仮定:質量 200 g の機器を考えます。中の基板の質量は 25 g。その基板の上に、鉛入りはんだの 接合部が 1 か所だけ残っているとします。接合部のはんだ質量は 20 mg、組成は Sn-Pb 共晶はんだ (鉛 37 質量 %)と仮定します。この 1 か所以外に鉛は無いものとします。

その 1 か所に含まれる鉛は 20 mg × 0.37 = 7.4 mg です。これを何で割るか。

測る単位(=分母) 質量 鉛濃度 1,000 ppm に対して
機器まるごと 200 g 37 ppm 適合
基板ごと 25 g 296 ppm 適合
はんだそのもの = 均質材料 20 mg 370,000 ppm 不適合(370 倍)

筆者計算。仮定は上記のとおり。

同じ 1 個の機器が、分母の取り方だけで「適合」にも「370 倍の不適合」にもなります。そして指令が 要求しているのは 3 行目だけです。上の 2 行は、規制上は答えになっていません。

逆向きにも見ておきます。均質材料がちょうど規制値(1,000 ppm)だったとき、上位の単位ではいくらに見えるか。

その均質材料が製品に占める質量比 機器全体での見かけの濃度 希釈率
0.40 %(はんだ 0.8 g / 200 g) 4.0 ppm 250 倍
1 % 10 ppm 100 倍
5 % 50 ppm 20 倍
12.5 %(基板 25 g / 200 g) 125 ppm 8 倍
100 % 1,000 ppm 1 倍

筆者計算。

小さい部品ほど、製品全体で薄まる倍率が大きい。だから「製品を丸ごと粉砕して測る」という一見公平な やり方は、規制の意図と正反対の方向に系統誤差を持ちます。必ず見逃す側に外れるからです。

4. フタル酸エステル 4 種には、2 つの適用日がある

2015 年の改正(Delegated Directive (EU) 2015/863)で追加された 4 つのフタル酸エステルには、 他の 6 物質と違って適用開始日の但し書きが付いています。Annex II の脚注を引用します。

The restriction of DEHP, BBP, DBP and DIBP shall apply to medical devices, including in vitro medical devices, and monitoring and control instruments, including industrial monitoring and control instruments, from 22 July 2021.

The restriction of DEHP, BBP, DBP and DIBP shall not apply to cables or spare parts for the repair, the reuse, the updating of functionalities or upgrading of capacity of EEE placed on the market before 22 July 2019, and of medical devices … placed on the market before 22 July 2021.

つまり同じ製品でも、カテゴリ(医療機器・監視制御機器かどうか)と、いつ上市されたかで、 フタル酸エステルの適用可否が変わります。分析の依頼を受ける側から見ると、「この試料はどの カテゴリで、いつの製品か」を確認しないと、測っても判定できないということです。

5. 除外項目には期限がある

RoHS には Annex III・Annex IV という除外リストがあり、特定の用途については規制値を超えても 認められています。ここで見落としやすいのが、多くの除外項目に有効期限が書かれていることです。

指令本文には、次のような表現が並びます。

… expires on 21 July 2021.

For categories 8 and 9 other than in vitro diagnostic medical devices and industrial monitoring and control instruments expires on 21 July 2021.

For category 8 in vitro diagnostic medical devices expires on 21 July 2023.

For category 9 industrial monitoring and control instruments, and for category 11 expires on 21 July 2024.

同じ除外項目でも、製品カテゴリごとに失効日が違う。「去年は適合だった設計が、今年は不適合になる」 という事態が、材料も測定値も一切変わらないまま起こりえます。

分析側の含意ははっきりしています。測定値そのものは、それだけでは合否を決めない。除外の有無と その期限を突き合わせて初めて判定になります。

6. 測る前に ― 試料はどれだけ要るか

IEC 62321シリーズが定める最小試料量の表。XRFは厚さがmmオーダー、水銀は0.5 g(検出下限5 mg/kg未満のとき)、鉛・カドミウム同時測定は0.5 g(同50 mg/kg未満)または1 g(同5 mg/kg未満)、PBB・PBDEは100 mg(同一元素群の検出下限100 mg/kg未満)、六価クロムは高分子・電子機器で0.1〜0.15 g(同15 mg/kg未満)、クロム被覆金属では50平方センチメートル(同0.02 mg/kg未満)、フタル酸エステルはスクリーニング分析で0.2〜0.5 mg
図解:六価クロムのクロム被覆金属だけ、単位が質量ではなく面積になっている。

ここから測る側の話です。日立グループが公開している「Analysis Guideline for the RoHS Directive Ver. 4.0」 (2018 年 3 月)は、IEC 62321 シリーズが定める最小試料量を次のように整理しています。

対象 最小試料量 条件
XRF による分析 厚さが mm オーダー 装置と形状で変わる
水銀 0.5 g 検出下限 < 5 mg/kg のとき
鉛・カドミウム(同時測定) 0.5 g 検出下限 < 50 mg/kg のとき
鉛・カドミウム(同時測定) 1 g 検出下限 < 5 mg/kg のとき
PBB・PBDE 100 mg 同一元素群の検出下限 < 100 mg/kg のとき
六価クロム(高分子・電子機器) 0.1〜0.15 g 検出下限 < 15 mg/kg のとき
六価クロム(クロム被覆金属) 50 cm2 検出下限 < 0.02 mg/kg のとき
フタル酸エステル 0.2〜0.5 mg スクリーニング分析の場合

出典:Hitachi Group, Analysis Guideline for the RoHS Directive Ver. 4.0, 4.3.2.1(IEC 62321-2 Ed.1:2013 の 5.7.2 を参照)。

ここで目を引くのが 2 点あります。

(1)六価クロムのクロム被覆金属だけ、単位が質量ではなく面積(50 cm2)です。理由は 10 節で扱います。

(2)フタル酸エステルのスクリーニングは 0.2〜0.5 mg で足りる。他が 0.1〜1 g のオーダーなのに、 3 桁小さい。熱分解 GC-MS 系の手法が使えるためです。

そして 3 節で見たとおり、このわずかな試料を「どこから」取るかが分母を決めます。均質材料まで分けて から採取しないと、量が足りていても答えが違ってきます。

7. XRF スクリーニングの判定は、三値である

IEC 62321-3-1の判定基準を示す図。判定はBL(白・下限以下)、X(灰色ゾーン・判定不能)、OL(黒・上限超過)の三値。元素ごとの式は、カドミウムが高分子・金属でBL≦(70−3σ)<X<(130+3σ)≦OL、複合材料でLOD<X<(150+3σ)≦OL。水銀と鉛は高分子・金属でBL≦(700−3σ)<X<(1300+3σ)≦OL、複合材料でBL≦(500−3σ)<X<(1500+3σ)≦OL。臭素は高分子でBL≦(300−3σ)<X、金属は適用外、複合材料でBL≦(250−3σ)<X。クロムは高分子・金属でBL≦(700−3σ)<X、複合材料でBL≦(500−3σ)<X
図解:臭素とクロムの行にだけ、OL(不合格)の項が無い。

RoHS 対応の一次スクリーニングは、非破壊で速い XRF が担います。その方法を定めるのが IEC 62321-3-1 です。

ここで多くの人が誤解しているのが、XRF が「合格」「不合格」を出す装置だと思っていることです。 規格の判定はそうなっていません。前掲の日立ガイドラインが、IEC 62321-3-1 Ed.1:2013 の Annex A から 判定基準を引用しています。

元素 高分子 金属 複合材料
カドミウム(Cd) BL ≦ (70−3σ) < X < (130+3σ) ≦ OL BL ≦ (70−3σ) < X < (130+3σ) ≦ OL LOD < X < (150+3σ) ≦ OL
水銀(Hg) BL ≦ (700−3σ) < X < (1300+3σ) ≦ OL BL ≦ (700−3σ) < X < (1300+3σ) ≦ OL BL ≦ (500−3σ) < X < (1500+3σ) ≦ OL
鉛(Pb) BL ≦ (700−3σ) < X < (1300+3σ) ≦ OL BL ≦ (700−3σ) < X < (1300+3σ) ≦ OL BL ≦ (500−3σ) < X < (1500+3σ) ≦ OL
臭素(Br) BL ≦ (300−3σ) < X 適用外 BL ≦ (250−3σ) < X
クロム(Cr) BL ≦ (700−3σ) < X BL ≦ (700−3σ) < X BL ≦ (500−3σ) < X

X = 灰色ゾーン、BL = below limit(下限以下)、OL = over limit(上限超過)、LOD = 検出下限。 単位は mg/kg。出典:Hitachi Group, Analysis Guideline Ver. 4.0, Table 5.2(IEC 62321-3-1 Ed.1:2013 Annex A からの抜粋)。

σ は「規制値付近の濃度でその装置が示す繰り返し精度の標準偏差」と定義されています。つまり 判定の境目は装置ごとに違う。同じ規格に従っていても、精度の悪い装置ほど灰色ゾーンが広くなります。

XRF が返す答えは 3 つです。白(BL=これ以上調べなくてよい)、灰(X=分からない)、黒(OL=不合格)。 灰色に落ちたら ICP などの定量分析に回します。

8. 灰色の幅は、マトリックスで変わる

上の式は装置の σ が入るので、数値を入れないと実感が湧きません。日立ガイドラインは、 同社の装置(EA1000VX、測定時間 100 秒、10 回測定)での実測 3σ を使った具体例を挙げています。 カドミウム(規制値 100 ppm)の場合です。

マトリックス 使った標準物質 BL(白)の上限 OL(黒)の下限 灰色の幅
高分子 PE 中 Cd 100 ppm 5 ppm 65 ppm 135 ppm 70 ppm
金属 黄銅 GBR6 中 Cd 136 ppm 20 ppm 50 ppm 150 ppm 100 ppm
複合材料 Sb 2 %・Br なし 10 ppm 6 ppm 160 ppm 154 ppm

出典:Hitachi Group, Analysis Guideline Ver. 4.0, 5.1(複合材料の行は、PE 中の Cd の検出下限 3 ppm が マトリックス効果で 2 倍になるとして 6 ppm、3σ も 2 倍の 10 ppm として 150+10 = 160 ppm としたもの)。

同じカドミウム、同じ規制値 100 ppm なのに、灰色の幅は 70 ppm・100 ppm・154 ppm と変わります。 複合材料の灰色は高分子の 2.2 倍です。

もっと効くのが下限です。複合材料では 6 ppm 以上あればもう灰色です。これは規制値 100 ppm の 16.7 分の 1。言い換えると、複合材料でカドミウムが少しでも検出されれば、ほぼ必ず ICP に回る ということです。

なぜ複合材料だけ下限が「BL」ではなく「LOD」なのか。共存元素の影響で、どこまでを「白」と言えるかが 決められないからです。表の式をよく見ると、複合材料のカドミウムの行だけ左端が BL ≦ ではなく LOD < になっています。規格が「白と言える範囲を定義しない」と明言しているわけです。

9. 臭素とクロムには、「不合格」の欄がそもそも無い

XRFが測るものと RoHS が規制しているものの食い違いを示す図。XRFが測るのは全臭素と全クロムという元素の総量だが、RoHS が規制しているのはPBB・PBDEという特定の臭素化合物と、六価クロムという特定の酸化数である。XRF は元素を見る装置なので、化合物も酸化数も区別できない。したがって「白」とは言えるが「黒」とは言えない
図解:元素の総量は上限を与えるが、下限は与えない。

7 節の表をもう一度見てください。カドミウム・水銀・鉛の行には ≦ OL が付いています。 臭素とクロムの行には付いていません。式は BL ≦ (300−3σ) < X で終わっていて、その先がない。

これは印刷漏れではありません。XRF では臭素とクロムについて「不合格」と言えないからです。理由は 規制されている物質が何かを見れば分かります。

XRF が測るもの RoHS が規制しているもの ずれ
全臭素(total Br) PBB・PBDE という特定の臭素化合物 難燃剤以外の臭素、規制対象外の臭素系難燃剤も同じように光る
全クロム(total Cr) 六価クロム Cr(VI) という特定の酸化数 XRF は酸化数を区別しない。三価クロムも六価クロムも同じ Cr として出る

XRF は元素を見る装置であって、化合物も酸化数も見ていません。だから臭素が 5,000 mg/kg 出たとしても、 それが PBDE 由来なのか、規制対象外の臭素系難燃剤なのか、あるいは別の臭素化合物なのかは分かりません。 クロムが 2,000 mg/kg 出ても、その中の六価クロムが何 mg/kg なのかは分かりません。

一方で、「無い」ことは言えます。全臭素が (300−3σ) mg/kg 以下なら、その中に含まれる PBB・PBDE は 当然それ以下です。全クロムが (700−3σ) mg/kg 以下なら、六価クロムも当然それ以下です。

臭素とクロムについて、XRF は「白」とは言えるが「黒」とは言えない。 規格の表に「黒」の欄が無いのは、その原理的な限界をそのまま書き写したものである。

これは分析化学の基本形です。元素の総量は、その元素を含む特定の化学種の量の上限を与えるが、 下限は与えない。同じ構図は 2D-NMRの読み方 でも扱いました (相関が「無い」ことは結合が無いことの証拠にならない ―― あちらは逆向きの非対称です)。

なお、金属材料の臭素が「適用外」になっているのは、金属に PBB/PBDE のような有機臭素難燃剤が 入ることを想定していないためと読めます(規格の理由づけまでは本記事では確認できていません)。

10. 六価クロムだけ、単位が違う

IEC 62321-7-1による六価クロムの確認試験の流れと判定基準を示す図。35 ℃以上での強制乾燥やアルカリ処理は不可、50 mLの沸騰水で10分間抽出、ジフェニルカルバジド吸光光度法で測定する。判定は0.10 µg/cm²未満が適合、0.10〜0.13 µg/cm²が保留、0.13 µg/cm²超が不適合
図解:ここでも三値。しかも単位は質量分率ではなく µg/cm2

7〜9 節は「均質材料中に何 mg/kg」という世界の話でした。ところが 金属の防錆皮膜の六価クロムだけは、 まったく別の単位で判定されます。

IEC 62321-7-1(2015 年)が定める確認試験は、こういう手順です。

  1. 表面の汚れ・油膜・指紋を溶剤で拭き取る。ただし 35 ℃ 以上での強制乾燥やアルカリ処理は不可。 高分子で覆われている場合は、粒度 800 番のサンドペーパーで高分子層だけを削り、防錆皮膜は残す。
  2. 表面積 50 ± 5 cm2 の試料を、50 mL の沸騰水で 10 分間抽出する。 50 cm2 に満たない場合は複数個を合わせてよいが、合計 25 cm2 以上は必要 (そのときの沸騰水量は 1 cm2 あたり 1 mL)。
  3. ジフェニルカルバジド吸光光度法で発色させ、吸光度を測る。

そして判定です。日立ガイドラインの記述はこうです。

Being different from the other specific hazardous substances, the concentration of hexavalent chromium in the sample solution is not measured by the prepared calibration curve but its conformity/nonconformity is judged by comparing with the absorbance of the sample solution of a certain concentration …

検量線で濃度を求めるのではなく、既知濃度の溶液の吸光度と比べて合否を判定する。その基準がこれです。

吸光光度法による六価クロム 判定
< 0.10 µg/cm2 相当 適合とみなす
0.10 〜 0.13 µg/cm2 相当 保留(灰色ゾーン)。可能なら試料表面をさらに 3 回測定し、平均で評価する
> 0.13 µg/cm2 相当 不適合とみなす

出典:Hitachi Group, Analysis Guideline Ver. 4.0, Table 5.3(IEC 62321-7-1 Ed.1:2015 による)。

ここでも三値です。そして単位は µg/cm2 ―― 質量分率ではなく単位面積あたりの量。 防錆皮膜は薄すぎて「均質材料として切り出して秤量する」ことが現実的でないため、面積で規定されています。

同じ RoHS の中に、mg/kg で判定する物質と µg/cm2 で判定する物質が同居している。 形状が複雑な試料(たとえばネジ)では表面積そのものを推定する必要があり、IEC 62321-7-1 は 皿頭ネジの表面積の典型的な計算方法まで示しています。

11. 定量へ ― 硫酸で分解すると、鉛が消える

湿式分解の落とし穴を示す図。硫酸と鉛から硫酸鉛ができて鉛が失われるため、硫酸を使う湿式分解は鉛の定量に適さない。またフッ素樹脂系の試料には適用できず、十分な精度が得られない
図解:RoHS で最も測る機会が多い鉛が、硫酸で失われる。

灰色に落ちた試料は ICP-OES / ICP-MS / AAS による定量に回します(IEC 62321-5)。ここで 前処理の落とし穴が 1 つあります。日立ガイドラインの記述です。

Wet decomposition method … The sample is decomposed by acids like sulfuric acid, nitric acid, hydrofluoric acid, hydrogen peroxide or phosphoric acid. This method is not suitable for the quantitative determination of lead as the loss of lead in the sample may take place due to the formation of lead sulfate.

硫酸を使うと硫酸鉛ができて、鉛が失われる。RoHS で最も測る機会が多い元素が鉛であることを考えると、 これは致命的です。分解法は硝酸系(乾式灰化、あるいは密閉系のマイクロ波分解)を選ぶことになります。

同ガイドラインはもう 1 つ、フッ素樹脂系の試料には上記の分解法を適用しないとも書いています。 分解しにくいうえ分解温度が高く、目的成分の昇華や飛散が起こって十分な精度が得られないためです。

分解法の選び方そのものは 試料分解法の選び方 で扱っています。 残渣が出たら遠心分離やろ過で分け、残渣の側に目的元素が残っていないことを確認するという原則は、 RoHS でも同じです。

12. 機械的に分けられない材料は、分析だけでは保証できない

分析と設計・工程管理の役割分担を天秤で示す図。分析は確認する役割であり、証明・保証は設計と工程管理の側が担う。機械的に分けられないのに組成が一様でない材料では、分析と測定だけで保証を得るのは極めて難しい
図解:分析は確認であって証明ではない、という線引き。

2 節の定義には裏があります。「機械的な操作で分けられないもの」が均質材料である以上、 分けられないのに組成が一様でない材料が現実には存在します。日立ガイドラインは、この場合に 分析でできることの限界をはっきり書いています。

Such material cannot be disintegrated mechanically. For the components or constituents not having the uniform chemical composition, the content control for each composition is required … In this case, it is extremely difficult to get the security only by the analysis and measurement.

Namely, it becomes necessary to work out a scheme like establishing the control standard based on the designed values and implementing the control of such standard values at the factory.

分析と測定だけで保証を得るのは極めて難しい。設計値に基づく管理基準を作り、工場で管理する仕組みが要る。

これは分析者にとって重要な線引きです。RoHS 適合は分析で「証明」するものではなく、 設計・調達・工程管理で作り込んだものを、分析で「確認」するものである ―― 少なくとも、 均質材料に分けきれない部位についてはそうです。

13. IEC 62321-3-1 は 2026 年 5 月に改訂された ― 5 物質から 9 元素へ

IEC 62321-3-1 の Edition 2.0(2026年5月)で追加された対象元素を示す図。従来の5物質に、全リン(P)がTCEPとトリキシリルホスフェートの代理指標として、全塩素(Cl)がSCCPの代理指標として、全スズ(Sn)が有機スズ化合物の代理指標として、全アンチモン(Sb)がパイロクロアと黄鉛の代理指標として加わり、9元素になった
図解:追加された 4 元素は、いずれも「その元素の出どころが特定の規制物質である」という仮定つきの代理指標。

最後に、いま起きている変化です。IEC 62321-3-1 は 2026 年 5 月に Edition 2.0 が発行されました。 適用範囲がはっきり広がっています。

Edition 1.0(2013 年 6 月)の適用範囲:

Part 3-1 of IEC 62321 describes the screening analysis of five substances, specifically lead (Pb), mercury (Hg), cadmium (Cd), total chromium (Cr) and total bromine (Br) in uniform materials found in electrotechnical products, using the analytical technique of X-ray fluorescence (XRF) spectrometry.

Edition 2.0(2026 年 5 月)の適用範囲:

This part of IEC 62321 describes the screening analysis of substances, specifically lead (Pb), mercury (Hg), cadmium (Cd), total chromium (Cr), total bromine (Br), total phosphorus (P), assuming the source of P is related to TCEP …, Trixylyl-phosphate …, total chlorine (Cl), assuming the source of Cl is related to SCCP …, TCEP …, TBTC …, total tin (Sn), assuming the source of Sn is related to restricted organo-tin compounds, total antimony (Sb), assuming the source of Sb is related to Pyrochlore, and antimony lead yellow …

5 元素から 9 元素へ。追加されたのはリン・塩素・スズ・アンチモンです。

そして、追加分の書き方に注目してください。すべて 「その元素の出どころが特定の規制物質であると仮定して」 という条件つきです。9 節で見た構図がそのまま拡張されています ―― 全リンは TCEP やトリキシリルホスフェートの代理指標、全塩素は SCCP の代理指標、全スズは有機スズ化合物の 代理指標、全アンチモンはパイロクロアと黄鉛の代理指標。元素を測って化合物を推し量る、という設計です。

さらに Edition 2.0 は、重要原材料(critical raw materials)のスクリーニングにも同じ方法論が使える と明記し、アンチモン・ビスマス・コバルト・ガリウム・ゲルマニウム・インジウム・ニオブ・タンタル・ タングステン・バナジウム・白金族・希土類などを列挙しています。

RoHS の 6 物質を見る道具だった XRF スクリーニングが、REACH の制限物質群と資源確保の両方を 見る道具に広がりつつある ―― これが 2026 年の位置づけです。

なお両版とも、対象を "uniform materials"(均一材料)と書いており、指令の言う "homogeneous material" と用語は使い分けられています。規格が扱うのは、あくまで 分析にかけられる状態にした材料です。

分析者の視点

分析者が持つべき9つの視点を示す図。分母の確認(どこまで分解したか)、製品粉砕の罠(必ず見逃す側へ外れる)、三値判定(白・灰・黒)、灰色の幅は装置のσで決まる、臭素とクロムは上限のみで不合格を出さない、六価クロムは面積で測る、硫酸を使わない(鉛が失われる)、測定値だけでは判定にならない、設計と工程で管理する
図解:9 つの視点 ― まず分母を確認し、最後は設計と工程に返す。
  1. 依頼を受けたら、まず「どこまで分解したか」を聞く。分母が違えば答えは 3 桁変わる。 製品丸ごとや基板ごとの測定値は、規制上は判定に使えない。
  2. 製品を粉砕して測る方式は、必ず見逃す側に外れる。均質材料の質量比が小さいほど希釈率が大きい (0.4 % なら 250 倍)。「安全側」ではないことを理解しておく。
  3. XRF の答えは 3 つある。白・灰・黒。灰色に落ちた試料を「たぶん大丈夫」で通さない。
  4. 灰色の幅は自分の装置の σ で決まる。規格の式に入っている σ は自分で測るもの。 標準物質で 3σ を実測していない運用は、判定の境目を知らないまま運用していることになる。
  5. 臭素とクロムで「不合格」を出さない。XRF が示せるのは上限だけ。PBB/PBDE は GC-MS、 六価クロムは IEC 62321-7-1/7-2 に回す。
  6. 六価クロムは面積で測る。単位が µg/cm2 であること、35 ℃ 以上で乾かしてはいけないこと、 800 番のサンドペーパーで高分子層だけを削ることを、手順書に明記する。
  7. 鉛の定量に硫酸を使わない。硫酸鉛として失われる。
  8. 測定値だけでは判定にならない。除外項目の有無と失効日、製品カテゴリ、上市日を突き合わせて初めて答えになる。
  9. 分けきれない材料は、設計と工程で管理する。分析は確認であって証明ではない、という線引きを持つ。

まとめ

本記事の要点をまとめた図。RoHSの閾値は均質材料中の重量濃度であること、分母だけで結論が反転すること、判定は三値(BL / X / OL)であること、臭素とクロムにはOL(不合格)が無いこと、六価クロムだけ単位がµg/cm²であること、IEC 62321-3-1が5元素から9元素へ広がったこと
図解:分母の話と、判定が三値である話。この 2 つが記事の芯。
  • RoHS 指令の閾値は 「均質材料中の重量濃度」(Article 4(2))であり、製品中の濃度ではない。
  • 「均質材料」は ネジを外す・切る・砕く・挽く・研磨するという機械的操作で分けられない単位として、 操作の側から定義されている(Article 3(20))。
  • 規制物質は 10 物質カドミウムだけ 0.01 %(100 ppm)で、他の 9 物質は 0.1 %(1,000 ppm)= 10 倍の差
  • 鉛入りはんだが 1 か所(20 mg、Pb 37 %)残った 200 g の機器では、機器ごと 37 ppm(適合)/ 基板ごと 296 ppm(適合)/はんだそのもの 370,000 ppm(370 倍の不適合)。分母だけで結論が反転する。
  • 均質材料が規制値ちょうどのとき、それが製品の 0.4 % なら製品全体では 4 ppm にしか見えない(250 倍の希釈)。
  • フタル酸 4 種には 2019 年 7 月 22 日 / 2021 年 7 月 22 日という 2 つの適用日があり、 除外項目には カテゴリごとに違う失効日(21 July 2021 / 2023 / 2024 など)がある。
  • XRF スクリーニングの判定は三値(BL / X / OL)。境目には装置の が入るので、判定の境目は装置ごとに違う。
  • カドミウムの灰色の幅は 高分子 70 ppm・金属 100 ppm・複合材料 154 ppm。 複合材料では 6 ppm 以上でもう灰色(規制値の 16.7 分の 1)で、ほぼ必ず ICP に回る。
  • 臭素とクロムの行には OL(不合格)が無い。XRF は全臭素・全クロムしか見ておらず、 PBB/PBDE という化合物も、六価クロムという酸化数も区別できない。「白」とは言えるが「黒」とは言えない。
  • 六価クロムだけ単位が µg/cm2< 0.10 が適合、0.10〜0.13 が保留、> 0.13 が不適合。 ここでも三値であり、検量線ではなく既知濃度との吸光度比較で判定する。
  • 鉛の湿式分解に硫酸は使えない(硫酸鉛として失われる)。フッ素樹脂も対象外。
  • 分けきれない材料は分析だけでは保証できない(設計値に基づく管理基準が要る)。
  • IEC 62321-3-1 は 2026 年 5 月に Edition 2.0 になり、対象が 5 元素から 9 元素へ (P・Cl・Sn・Sb を追加)。いずれも「その元素の出どころが特定の規制物質である」という仮定つきの代理指標。

用語集

  • RoHS 指令:電気電子機器における特定有害物質の使用制限に関する EU 指令。現行は Directive 2011/65/EU(RoHS 2)。
  • 均質材料(homogeneous material):一様な組成の材料、または機械的操作で別の材料に分けられない材料。 RoHS の濃度規制はこの単位に対して適用される。
  • 上市(placing on the market):製品を EU 市場に初めて供給すること。適用日の判定基準になる。
  • Annex II:制限物質と、その均質材料中の最大許容濃度を定めた附属書。
  • Annex III / IV:用途を限って規制を免除する除外リスト。多くの項目に失効日がある。
  • XRF(蛍光X線分析):試料に X 線を当て、元素固有の蛍光X線から元素の種類と量を求める手法。 非破壊・迅速だが、元素しか分からず化学形や酸化数は区別できない。
  • BL / X / OL:IEC 62321-3-1 の判定区分。BL は below limit(これ以上調べなくてよい)、 X は灰色ゾーン(判定不能)、OL は over limit(不合格)。
  • σ(標準偏差):ここでは、規制値付近の濃度でその装置が示す繰り返し精度の標準偏差。判定の境目に入る。
  • LOD(検出下限):その手法で「有る」と言える最小量。複合材料のカドミウムでは、BL の代わりにこれが使われる。
  • 全臭素・全クロム(total Br / total Cr):化学形や酸化数を問わない元素の総量。XRF が測れるのはこちら。
  • PBB / PBDE:ポリ臭化ビフェニル/ポリ臭化ジフェニルエーテル。臭素系難燃剤で、RoHS の制限物質。
  • 六価クロム Cr(VI):クロムの酸化数 +6 の化学種。防錆皮膜(クロメート処理)に使われてきた。
  • ジフェニルカルバジド吸光光度法:六価クロムと 1,5-ジフェニルカルバジドの発色反応を利用した比色法。
  • IEC 62321 シリーズ:電気電子製品中の特定物質の測定方法を定める国際規格群。 -2 が試料調製、-3-1 が XRF スクリーニング、-5 が ICP/AAS による定量、-7-1/-7-2 が六価クロム、-8 がフタル酸エステル。
  • SCCP / TCEP / 有機スズ:短鎖塩素化パラフィン/トリス(2-クロロエチル)ホスフェート/有機スズ化合物。 IEC 62321-3-1 Ed.2.0 で、それぞれ全塩素・全リン・全スズの代理指標として想定されている規制物質。

出典

  1. Directive 2011/65/EU(RoHS 2)― Article 3(20) の均質材料の定義、Article 4(1)(2) の制限、 Annex II の 10 物質と閾値およびフタル酸エステルの適用日、Annex III の除外項目と失効日。 本文は英国政府の法令サイトが公開する EU 指令版を用いた。 https://www.legislation.gov.uk/eudr/2011/65/contents
  2. IEC 62321-3-1 Edition 1.0 (2013-06)「Determination of certain substances in electrotechnical products – Part 3-1: Screening – Lead, mercury, cadmium, total chromium and total bromine by X-ray fluorescence spectrometry」公開プレビュー ― 適用範囲(5 物質)と試験済み濃度範囲。 https://cdn.standards.iteh.ai/samples/18139/491949f489d64395a80972b94fbf29d1/IEC-62321-3-1-2013.pdf
  3. IEC 62321-3-1 Edition 2.0 (2026-05) 公開プレビュー ― 適用範囲の拡大(P・Cl・Sn・Sb の追加、 重要原材料への言及)、試験済み濃度範囲の表構成。 https://cdn.standards.iteh.ai/samples/iec/iec-62321-3-1-2026/eaf4c33526fc4ee8b1c651404baff5a0/iec62321-3-1-ed2-0-en.pdf
  4. Hitachi Group「Analysis Guideline for the RoHS Directive Ver. 4.0」(Analysis Guideline Revision Working Group、2018 年 3 月)― IEC 62321 シリーズの最小試料量、XRF スクリーニングの判定基準 (Table 5.2)とカドミウムの実測例、六価クロムの評価基準(Table 5.3)と前処理条件、 硫酸による鉛の損失、分けきれない材料の扱い。 https://www.hitachi.com/procurement/csr/environment/pdf/green_analysisguide_en.pdf

計算は、本文中に明示した仮定(機器 200 g・基板 25 g・はんだ 20 mg・Pb 37 質量 %)にもとづく筆者の自作である。

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未確認・限界

  • EUR-Lex(eur-lex.europa.eu)には本記事の執筆時にアクセスできなかった。HTML・PDF・ELI いずれの 形式でも HTTP 202 が返り、本文が取得できない。そのため指令本文は 英国政府の法令サイト(legislation.gov.uk)が公開している EU 指令版を用いた。同サイトは 「EU 離脱後、英国による改正を反映して最新化している」と明記しているため、引用した条文が 現行の EU 版と完全に一致することは確認できていない。引用した Annex II の 10 物質と閾値、 Article 3(20) の定義、Article 4 の条文は、いずれも 2015/863 による改正後の内容と整合している。
  • IEC 62321-3-1 の本文は購読が必要で、本記事が参照できたのは公開プレビュー(各版とも 15 ページ)に 限られる。7 節の判定基準(Table 5.2)は、IEC 62321-3-1 Ed.1:2013 の Annex A を日立グループの ガイドラインが引用したものであり、規格原文で再確認していない。
  • Edition 2.0(2026-05)で判定基準が変わったかどうかは確認できていない。Table A.2 「Screening limits in mg/kg for regulated elements in various matrices」は規格の 30 ページにあり、 公開プレビューには含まれていない。本記事の 7〜9 節は Edition 1.0 に基づく記述である。
  • 8 節の 3σ・検出下限は、日立ハイテクの特定の装置(EA1000VX、測定時間 100 秒、10 回測定)での実測値 であり、他社装置・他条件を代表するものではない。灰色ゾーンの幅は自分の装置で測り直す必要がある。
  • 日立グループのガイドラインは 2018 年 3 月の Ver. 4.0 であり、参照している規格は IEC 62321-2/-3-1/-5 とも Ed.1:2013、六価クロムが Ed.1:2015/2017 である。それ以降の改訂は反映されていない。
  • 3 節の計算は完全に仮想の例である。Sn-Pb 共晶はんだの鉛含有率 37 質量 % は一般的な組成値として 置いたもので、特定製品の実測ではない。
  • 9 節で「金属材料の臭素が適用外である理由」は、規格の理由づけを確認できていない。本文に書いた 解釈は筆者の推測であり、そのように明示した。
  • 日本の J-Moss(JIS C 0950)、中国 RoHS(GB/T 26572)、REACH の SVHC 0.1 % 閾値は、本記事では扱っていない。 いずれも一次情報にあたれていない。
  • フタル酸エステルの分析(IEC 62321-8、熱分解 GC-MS 系)の具体的手順は範囲外とした。 6 節で最小試料量に触れたにとどまる。
  • 除外項目(Annex III / IV)の個別の内容と最新の失効日は追跡していない。本記事が示したのは 「カテゴリごとに失効日が違う」という構造だけである。実務では必ず現行の Annex を確認すること。

制作メモ:ディープリサーチで周辺情報を収集したうえで、記載した数値・逐語はすべて編集側で原典(指令本文、 IEC 規格の公開プレビュー、メーカー公式ガイドライン PDF)にあたって検証し、計算は仮定を明示した自作である。