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非標的分析と未知構造推定 ― 答えが全部わかっている試料でも、当てられたのは46%だった【2026年版】
質量分析

非標的分析と未知構造推定 ― 答えが全部わかっている試料でも、当てられたのは46%だった【2026年版】

高分解能MSで「未知のピーク」を追う非標的分析は、環境・食品・医薬・法科学に急速に広がった。 だが米国EPAが主催した共同試験ENTACTでは、何が入っているかを全部わかっている合成混合物を目隠しで 分析させたところ、異性体を除いた真陽性率は最良でも46%、答えを見てからやり直しても65%にとどまった。 本記事は「なぜ当たらないのか」を二段階に分けて追う。第一に、質量精度をいくら上げても分子式は 一意にならない(Kind & Fiehn が2006年に論文タイトルで宣言している)。第二に、分子式が決まっても 構造は決まらない。そのうえで、この不確かさを隠さずに申告するために作られた Schymanski の5段階、 PFAS向けに枝分かれした信頼度スケール、そして ICH Q3A の「未同定不純物」と ICH Q3E の AET という 規制側のしきい値までを、すべて原典の数値で整理する。

CHN元素分析とハロゲン・硫黄分析 ― 燃やして出てくるのは、元素の量ではなく「手順が決めた量」【2026年版】

CHN元素分析とハロゲン・硫黄分析 ― 燃やして出てくるのは、元素の量ではなく「手順が決めた量」【2026年版】

試料を燃やして炭素・水素・窒素を測る。原理は 100 年前から変わらない。だから「元素の絶対量が出る」と 思われがちだが、実際に出てくるのはそうではない。合成化学の論文で純度の証拠として使われる ±0.4% という 判定線は、文献をたどっても誰がいつ決めたのか分からない。同じ高純度試薬を 18 のラボへ送った 2022 年の 国際共同試験では、436 のデータ点のうち 10.78 % がその線を外れ、炭素だけなら 16.44 % が外れた。試料は どれも表示どおり純粋だったのに、である。さらに 2024 年の試算では、完璧に測ったとしてもトリプトファンの 分子式を 26 % の確率で取り違える。一方ハロゲン・硫黄側では、米国 EPA が PFAS スクリーニング法の冒頭に 「AOF は手法そのものが定義する量(method-defined parameter)である」と明記した。炭素数 4 未満は活性炭に 残らず、炭素数 8 超は容器壁に貼りつく。どちらの側でも、燃焼分析が返すのは「元素の量」ではなく 「その手順で捕まえられた分」である。CHN の判定線、燃え残ったフッ素が窒素に化ける仕組み、酸素フラスコ 燃焼法から燃焼イオンクロマトグラフィーへの流れ、そしてケルダールとデュマで窒素の値がずれる理由までを、 一次資料の数値で追う。

FTIR とラマンの使い分け ― 選ぶ基準は「何が見えるか」ではなく「何に殺されるか」【2026年版】
分光

FTIR とラマンの使い分け ― 選ぶ基準は「何が見えるか」ではなく「何に殺されるか」【2026年版】

FTIR とラマンの使い分けは「官能基なら赤外、骨格ならラマン」と説明される。だが実務でその説明が 役に立つ場面は少ない。相互排除則があるので、そもそも両者は競合していないからである。 実際に選択を決めているのは「何が見えるか」ではなく「何がその測定を殺すか」である。 FTIR を殺すのは水、深さ、そして容器 ―― ATR は表面 2 µm しか見ず、赤外の回折限界は 7.4〜3.7 µm で、実用上 20 µm 未満の粒子は捉えにくく、容器越しには測れない。 ラマンを殺すのは蛍光と焼損 ―― 着色試料や環境試料では蛍光がスペクトルを覆い、 焦点のパワー密度は試料を分解しうる。一方でラマンだけが容器を開けずに中身を同定でき、 これが原料の全数受入試験を成立させている。本記事は両者の失敗モードを原典の数値で並べ、 決定フローとして整理する。

イオンクロマトグラフィー徹底解説 ― 感度を決めているのはカラムではなくサプレッサである【2026年版】

イオンクロマトグラフィー徹底解説 ― 感度を決めているのはカラムではなくサプレッサである【2026年版】

イオンクロマトグラフィー(IC)は「HPLCの一種」と説明されがちだが、 実際には検出の問題を解くために独自の装置系を発達させた別種の技術である。 溶離液そのものが導電性なので、電気伝導度で検出するには溶離液を先に消す必要がある。 この「消す」装置がサプレッサで、ICの感度・ベースライン・トラブルのほとんどはここで決まる。 本記事は、サプレッサ電流の計算式(メーカーマニュアルの実式)、電解式溶離液生成の到達濃度、 4 µm粒子カラムが高圧ICを要求する理由、EPA/ISO公定法の検出限界の実数、 そしてマトリックス除去カートリッジの「洗いすぎると回収率が落ちる」実測表までを、 一次資料で確認して整理する。

【2026年4月施行】PFAS分析の実務ガイド ― 水質基準50 ng/L対応とLC-MS/MSの勘所
質量分析

【2026年4月施行】PFAS分析の実務ガイド ― 水質基準50 ng/L対応とLC-MS/MSの勘所

2026年4月1日、PFOS・PFOAが水道水の水質基準項目に格上げされ、水質検査が努力義務から 法的義務になる。基準値は合算50 ng/L、検査頻度はおおむね3か月に1回以上。本記事は、告示法 (別表第45)の改正で何が変わったか(濃縮倍率10〜1000倍の柔軟化、標準液の冷凍6か月保存)を 押さえたうえで、ng/Lオーダーの定量を成立させる4つの技術的勘所 ― 固相抽出(WAX系/SDVB系)、 13C標識内部標準による同位体希釈法、PTFE排除とデイレイカラムによる装置由来汚染対策、 分岐異性体の扱い ― を実務目線で解説する。さらにTOPアッセイ・AOFといった総量指標と、 それらが捉えられない超短鎖TFAという死角、EPA・ISO・EU DWDとの国際比較までを整理する。