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ネイティブMS徹底解説 ― 横軸の m/z の値が、そのまま「分けられない質量差」になる【2026年版】
質量分析

ネイティブMS徹底解説 ― 横軸の m/z の値が、そのまま「分けられない質量差」になる【2026年版】

ネイティブMSは質量を直接測っていない。測っているのは m/z で、質量は電荷の割り当てから逆算した値である。この構造には計算できる限界がある。質量 M・電荷 z のイオンは、M よりちょうど M/z だけ重い z+1 価のイオンと同じ位置に来る。つまり分けられない質量差の大きさは、そのピークが出ている m/z の値そのものである。AAV カプシドではこの閾値 21〜25 kDa が、VP1→VP3 置換の質量差 21.9 kDa と一致してしまう。

JASIS 2026 は何が並んだのか ― 主催者が掲げた「AI×分析・計測」に触れた演題は、318 件中 23 件だった
データ解析

JASIS 2026 は何が並んだのか ― 主催者が掲げた「AI×分析・計測」に触れた演題は、318 件中 23 件だった

JASIS 2026 の公式プログラムに載った出展社セミナー 318 件を機械的に数えた。主催者が今年の見どころに掲げた「AI×分析・計測」に触れる演題は 23 件(7.2 %)、「フィジカルAI」を名乗るのは 1 件だった。いちばん多いのはクロマトグラフィーの 79 件で、AI の 3.4 倍。あわせて、公式が公表している来場者数が「重複なし 19,750 名」と「1日1カウント 22,926 名」の2通りあることも確認した。本記事は会場取材ではなく、公式発表と公開プログラムの集計に基づく。

結晶構造解析の最前線 ― 47年ひとつだと信じられた医薬品の多形は、R 因子 0.19 の構造で二つに分かれた【2026年版】

結晶構造解析の最前線 ― 47年ひとつだと信じられた医薬品の多形は、R 因子 0.19 の構造で二つに分かれた【2026年版】

日本薬局方〈2.58〉には「8. 単結晶構造解析」という節がある。中身は3文しかなく、そのうち1文は 「有機結晶では…その構造解析を行うことは容易ではない」という警告である。判定値はゼロ。電子線回折・中性子・ 放射光・絶対配置は、一般試験法473ページを全文検索して1件も出てこない。ところがその「容易ではない」側では、 2022年にインドメタシンの多形がひとつではなく二つだったことが判明した ―― 1974年の報告から47年後、 幅 0.5〜2 µm の結晶から、R 因子 0.19 という X線なら受理されない数字で。本記事は、必要な結晶体積が 10⁵ → 10³ → 10⁻² µm³ と7桁下がった経緯、X線・電子線・中性子が「別のもの」を測っているために水素の位置が 食い違う仕組み(筆者集計:MicroED の実測376本は10種類すべてで中性子側に近い)、SPring-8 と NanoTerasu の 公称値の差、そして結晶構造予測が第7回ブラインドテストでどこまで届いたかを、すべて一次資料の数値で追う。

GC×GC徹底解説 ― 変調周期を決めた瞬間に、一次元で稼いだ分離をどれだけ捨てるかが決まる【2026年版】

GC×GC徹底解説 ― 変調周期を決めた瞬間に、一次元で稼いだ分離をどれだけ捨てるかが決まる【2026年版】

GC×GC(包括的二次元ガスクロマトグラフィー)は、極性の違う 2 本のカラムを変調器でつなぐ手法である。 だが「包括的(comprehensive)」は装置の名前ではない。満たすべき条件の名前である。 総説の定義はこうだ ――「(i) 試料のあらゆる部分が 2 つの異なる分離を受けるか、二次元クロマトグラムが 試料全体を代表しており、かつ (ii) 一次元で得られた分離(分離度)が本質的に保たれていること」。 この (ii) を落とすと、二次元の絵は出るが一次元で稼いだ分離を壊しているだけになる。 条件は変調周期が握っており、目安は「一次元ピークの標準偏差以下(tmod ≤ 1σt)」=1 ピークあたり 4 回以上の切り出し。ただし Blumberg は 2〜3 回で足りると導いており、この 4 という数字自体が確定していない。 実際、Davis-Stoll-Carr の式に代入すると、tmod = 1σ なら分離能の損失は 9 % だが、tmod = 3σ では 41 % を失う。本記事は、包括的の定義、変調周期と MR、ラップアラウンド、熱変調と流路変調のハードウェア (液体窒素は 1 日 150 ユーロ、"cryogenic" という言葉の誤用まで)、検出器に課される 100 Hz の要求、 そして GC³ が到達した 35,000 のピークキャパシティまでを、原著の数値で追う。

分光分析の全体像 ― FTIR・ラマン・UV-Vis・NIR は「違う深さ」を見ている【2026年版】
分光

分光分析の全体像 ― FTIR・ラマン・UV-Vis・NIR は「違う深さ」を見ている【2026年版】

FTIR・ラマン・UV-Vis・NIR の使い分けは、たいてい「何を測りたいか」で説明される。 だが実務でいちばん効くのは別の軸である ―― この4つは同じ固体を測っても、見ている深さが3桁違う。 ATR-FTIR の潜り込み深さは 1000 cm⁻¹ で約2 µm、2000 cm⁻¹ では約1 µm しかない。 一方で日本薬局方〈2.27〉は、近赤外について「粉体を含む固体試料中、数mmの深さまで侵入することができる」と書く。 表面の2 µm を見る装置と、内部の数 mm を見る装置は、同じ試料の別のものを測っている。 本記事は選択律と相互排除則、ATRの潜り込み深さ、ラマンの励起波長のλ⁻⁴問題、 近赤外が「代替法」として同等性確認を求められる理由、そして日本薬局方・USP・欧州薬局方の 公定要件までを原典で確認し、4手法を選ぶ順序として整理する。

ラボ自動化とLIMS/ELNの選び方 ― 選定でいちばん効くのは「出るときの条件」【2026年版】
データ解析

ラボ自動化とLIMS/ELNの選び方 ― 選定でいちばん効くのは「出るときの条件」【2026年版】

LIMS や ELN の選定は、機能比較表を並べる作業だと思われている。だが導入から10年後に効いてくるのは、 入れた機能ではなく「そのシステムからデータを取り戻せるか」である。しかもこれは筆者の意見ではない。 EU が2025年に公開した GMP Annex 11 改訂ドラフトは、外部サービスとの契約に 「規制当事者がシステムデータの管理を保持できる出口戦略」を定めよと明記した。PIC/S は メタデータが失われる恐れがあるなら PDF 化は禁止されるべきと書き、移行によって動的機能が 失われうることを認めている。本記事は 21 CFR Part 11・PIC/S PI 041-1・EU Annex 11 改訂ドラフト・ 厚労省コンピュータ化システム適正管理ガイドラインを原典で読み、LIMS/ELN/LES/SDMS/CDS の役割分担、 カテゴリ分類とカスタマイズの代償、機器接続の標準(SiLA 2・AnIML・Allotrope)、 そして自律実験ラボの現在地までを、選定の順序に沿って整理する。

イオンモビリティMS徹底解説 ― CCSは「測った値」ではない【2026年版】
質量分析

イオンモビリティMS徹底解説 ― CCSは「測った値」ではない【2026年版】

イオンモビリティMSは m/z に「形・大きさ」の軸を足す技術として普及したが、その軸の目盛である 衝突断面積(CCS)が何なのかは、しばしば誤解されている。分野の報告ガイドラインは一行でこう述べる ―― 「イオンモビリティが測っているのは移動度であって、表面積ではない」。移動度 K は SI にトレーサブルだが、 CCS はそこから数学モデルを通して導かれた量で、SI にトレーサブルではない。だからガイドラインは 「較正は CCS ではなく移動度で行え」と勧告する。分解能の数字にも同じ種類の罠があり、時間軸で測った Rp と CCS 軸で測った Rp は別物になる。本記事は報告ガイドライン原文・相互ラボ検証・2026年の SLIM対サイクリック直接比較を原典で確認し、DTIMS/TWIMS/TIMS/DMA/FAIMS の違い、分解能の読み方、 CCS がどこまで同定に使えるか、そして2026年の装置動向までを整理する。

JASIS 2026 の歩き方 ― 「AI×分析・計測」で何が変わるのかを見に行く
データ解析

JASIS 2026 の歩き方 ― 「AI×分析・計測」で何が変わるのかを見に行く

アジア最大級の分析・科学総合展「JASIS 2026」が2026年9月2日〜4日に幕張メッセで開かれる。 主催者が今年の見どころに挙げたのは「AI×分析・計測」――測定・解析・制御を自動でつなぐ ラボオートメーションと、自律的に判断・作動するフィジカルAIである。LabDXゾーンに集まる11社、 生成AIや食品・半導体をテーマにした注目セミナー、島津の「AX」やJASCOの分光・SFCといった 出展内容を、主催者・出展社の公式発表だけを根拠に整理し、分析化学者としてどこを見て何を 持ち帰るべきかを、開幕前に組み立てておく。

UHPLCカラム技術の深掘り ― メーカーが言う「最大 50 % 低背圧」は、有効粒子径の定義から計算で出てくる【2026年版】

UHPLCカラム技術の深掘り ― メーカーが言う「最大 50 % 低背圧」は、有効粒子径の定義から計算で出てくる【2026年版】

コアシェルカラムの広告文句「sub-2 µm 並みの効率を、低い背圧で」は、メーカー自身が公開している 有効粒子径(de)の定義から計算で出てくる。Phenomenex の資料は Kinetex 2.6 µm の de を 1.7 µm と書き、 van Deemter 式の A 項には物理粒子径 dp を、C 項には de を使う。背圧は dp の 2 乗に反比例するので、 同じ効率を出すときの圧力比は (2.6/1.7)² = 2.34、つまり 57 % 低い(筆者計算)。同じ資料の粒子寸法 (固体核 1.9 µm・シェル 0.35 µm)から多孔体積を出すと全多孔粒子の 61 % しかなく、これが分取で 負荷量が落ちる理由になる。摩擦熱も同じく計算できる。圧力の仕事が全部熱になるなら 1000 bar で水は 24 ℃、 アセトニトリルは 57 ℃ 上がるが、実測(赤外サーモ、2018)は水 +16.6 ℃・ACN +12.8 ℃ と順序が逆転する。 その理由まで、一次資料と査読論文で確かめる。

クロマトグラフィー最新技術動向 ― 2.7 µm のコアシェル粒子は、sub-2 µm と同じ効率を半分の圧力で出す【2026年版】

クロマトグラフィー最新技術動向 ― 2.7 µm のコアシェル粒子は、sub-2 µm と同じ効率を半分の圧力で出す【2026年版】

クロマトグラフィーの最新動向を、装置カタログの紹介にとどめず「なぜそうなるか」の物理から解説する保存版。 van Deemter式とピークキャパシティの基礎、表面多孔質(コアシェル)粒子がsub-2µm全多孔質に背圧半分で匹敵する理由、 UHPLCの摩擦熱と系内拡散の限界、二次元分離(LC-LC/mLC-LC/LC×LC)の直交性とアクティブ溶媒モジュレーション、 mAb・オリゴ核酸のバイオ医薬応用、SFC/UPC2、GCの水素キャリアガス移行とGC×GC、検出器とグリーン分析化学まで、 入門者の足場と専門家の読み応えを両立させて2024〜2026年の最前線を整理する。

質量分析の最新技術動向 ― 1 検体 4.8 分で、8,400 種を超えるタンパク質が同定できる【2026年版】
質量分析

質量分析の最新技術動向 ― 1 検体 4.8 分で、8,400 種を超えるタンパク質が同定できる【2026年版】

質量分析(MS)の最新動向を、アナライザーの動作原理から徹底解説する保存版。 Orbitrap Astralの「30mの非対称トラックとロスレス伝送(80%超)」がなぜ約10倍の速度・感度・分解能を生むのか、 timsTOFのTIMS/PASEFによる4Dプロテオミクス(保持時間×CCS×m/z×強度)、EAD/UVPD/SIDなど解離法の多様化、 DDA/DIA/狭窓DIAの取得戦略、メガダルトンを測るネイティブMS・電荷検出MS(CDMS)とAAV遺伝子治療QC、 そして単一細胞・空間オミクスのMSイメージングまで、2023〜2026年の最前線を入門者と専門家の双方に届ける。