NMR を習うとき、ほぼ必ずこう教わります。化学シフト δ は磁場によらない量である。スピン-スピン結合定数 J も 磁場によらず、ヘルツで表す。どちらも正しく、日本薬局方にもそう書いてあります。
ところが同じ日本薬局方が、確認試験の条文でこう続けます。
したがって,シグナルの多重度は,測定装置の磁場の大きさを考慮して判断する.
―― 第十九改正日本薬局方 一般試験法〈2.21〉核磁気共鳴スペクトル測定法 4.1
化学シフトと面積強度比は「規定された値に適合するか」をそのまま照合してよいのに、多重度だけは装置の磁場を 考慮せよという。δ も J も磁場によらないのに、なぜその2つから作られるはずの見た目だけが装置で変わるのか。
答えは、見えるパターンを決めているのが δ でも J でもなく、その比だからです。この記事では二つのスピンが 結合した系の厳密解を数値で解いて、同じ試料が 60 MHz では実質一重線に、400 MHz では二重線が2組に見える 境目がどこにあるのかを、Hz 単位で示します。あわせて、「0 ppm」を決めている物質そのものが溶媒で 0.7 ppm 動いていること、そして「面積は核の数に比例する」という前提が待ち時間ひとつで 52 % 崩れることを扱います。
この記事の読み方
入門者の方は 1〜5 節で「化学シフトとは何を測った数値なのか」を押さえてください。ppm という数字が どこを原点にしているのかが分かると、あとの話が全部つながります。
日常的に NMR を回している方は、7〜10 節(多重度と Δν/J)と 11〜12 節(積分と緩和)が本題です。 とくに 8 節の表は、手元のスペクトルで「これは一次で読んでよいのか」を判断する目安になります。
この記事の計算値は、すべてモデルと仮定を明示したうえでの筆者計算です。実測値ではありません。 条件は各節に書きます。
1. 局方が言う「NMR から得られる 4 つのパラメータ」
まず、何が測れるのかを公定法の言葉で確認します。〈2.21〉はこう書いています。
NMRスペクトルからは基本的には化学シフト,スピン-スピン結合定数,シグナル面積強度(1H核では数に 比例するが,13C核などでは核オーバーハウザー効果(NOE)及び緩和などの影響を受ける),緩和時間の 四つのパラメータが得られ,これらを利用して物質の構造解析,確認又は定量を行うことができる.
化学シフト・結合定数・面積強度・緩和時間の4つ。この記事が扱うのは前の3つです(緩和時間は 11 節で 面積強度の前提として登場します)。
注目すべきは、面積強度のところにだけ最初から括弧書きの但し書きが付いていることです。局方は 「1H では核の数に比例する」と言い切りつつ、13C については NOE と緩和で崩れると、 同じ文の中で予防線を張っています。この非対称は 12 節で回収します。
2. 化学シフトの定義に 106 は入っていない
〈2.21〉が定義する化学シフトはこうです。
共鳴周波数は磁場に比例して変化するので,磁場によらない量として,化学シフトを次式のとおり定義する.
δ = (νS - νR) / νR + δR
νS:試料核の共鳴周波数 νR:基準核の共鳴周波数 δR:基準核の化学シフト(0でない場合)
ここで見落としやすいのが、式に 106 が掛かっていないことです。多くの教科書は δ =(νS − νR)/νR × 106 と書きますが、局方の式に 106 はありません。
これは局方の書き間違いではなく、IUPAC の定義に一致しています。IUPAC の 2008 年勧告は、2001 年勧告が 定義を改めた点をこう説明しています。
δsample(X) = [νsample(X) – νreference(X)]/νreference(X)
Equation 1 differs from previous definitions in deleting a factor of 106, for reasons explained in ref. [4]. Because the numerator is normally expressed in Hz whereas the denominator is given in MHz, this formulation leads to values readily expressed in ppm.
―― IUPAC Recommendations 2008, Section 1
分子を Hz、分母を MHz で書けば、比の値がそのまま ppm の数値になる。だから 106 を式から外し、 "ppm" という接尾語のほうに 10−6 を担わせる ―― という整理です。同勧告は「ppm は ×10−6 と 交換可能であり、% が ×0.01 と交換可能なのと同じである」とも書いています。
なお、局方の式には IUPAC 式に無い + δR の項があります。基準物質のシグナル位置を 0 に できない場合に、あらかじめ定められた化学シフトで補正するための項です。IUPAC は同じ問題を、後述する Ξ(クサイ)という別の仕組みで処理します。同じ量を定義しているのに、逃げ道の作り方が違うわけです。
3. 「0 ppm」を決めているのは、TMS という一つの化合物である
δ の式を見れば分かるとおり、化学シフトは差です。差である以上、引き算の相手がいります。 〈2.21〉が指定する基準物質は次のとおりです。
| 核種・溶媒 | 局方が指定する基準物質 |
|---|---|
| 1H・13C(有機溶媒) | テトラメチルシラン(TMS) |
| 1H・13C(重水) | DSS または TSP |
| 15N | ニトロメタン |
| 19F | トリクロロフルオロメタン |
| 31P | リン酸 |
出典:〈2.21〉2. 操作法。
IUPAC はさらに踏み込んで、すべての核種の原点を1つの物質に統一しました。
Also recommended [4] was a unified scale for reporting chemical shifts of any nuclide X (other than 1H) in any sample relative to a primary internal reference, viz. the proton resonance of tetramethylsilane (TMS) in a dilute solution in CDCl3 (volume fraction ϕ < 1 %).
つまり CDCl3 に体積分率 1 % 未満で溶かした TMS のプロトン共鳴。溶媒と濃度まで指定された、 たった1つの条件です。
しかも同勧告は脚注で、その「TMS のプロトン共鳴」が何を指すのかまで詰めています。
To be more precise, the dominant proton resonance line from 12C41H1228Si. Resonances at slightly different chemical shifts can be observed from other isotopomers (usually as 13C and 29Si "satellites").
同位体組成まで指定した1本の線が、世界中の ppm 軸の原点になっています。13C や 29Si を含む TMS 分子(サテライトとして見える成分)は、わずかに違う位置に出るので原点ではない、 ということです。
4. その TMS 自身が、溶媒で 0.7 ppm 動いている
ここが、この記事でいちばん意外なところかもしれません。
TMS を試料と同じ溶液に溶かして使う限り(内部基準法)、TMS の化学シフトは定義上つねに厳密に 0です。 IUPAC の言い方はこうです。
The proton chemical shift of TMS in any solvent is by definition (eq. 1) exactly zero when TMS is used as an internal reference.
しかし、TMS のプロトンが実際に受けている遮蔽そのものは、溶媒で変わります。IUPAC の作業部会は、 磁化率補正またはマジック角回転(MAS)で溶媒間の比較ができるようにしたうえで、10 種の溶媒で測りました。
| 溶媒 | δ(磁化率補正)/ ppm | δ(MAS 実測)/ ppm |
|---|---|---|
| クロロホルム-d(基準) | 0.00 | 0.000 |
| DMSO-d6 | +0.07 | +0.062 |
| アセトニトリル-d3 | −0.01 | −0.011 |
| THF-d8 | −0.10 | −0.109 |
| メタノール-d4 | −0.11 | −0.106 |
| TMS(無溶媒) | −0.15 | −0.124 |
| アセトン-d6 | −0.16 | −0.160 |
| トルエン-d8 | −0.42 | 未測定 |
| ベンゼン-d6 | −0.45 | 未測定 |
| ニトロベンゼン-d5 | −0.64 | 未測定 |
出典:IUPAC Recommendations 2008, Table 2。MAS 列は磁化率補正が不要な測定。
IUPAC 自身の要約はこうです。
the 1H resonance of TMS in a variety of non-aromatic solvents varies over a range of more than 0.2 ppm at RT (25 °C). For aromatic solvents, the variation is appreciably larger, as expected because of well-known ring current effects.
表を端から端まで取れば +0.07 から −0.64 まで、0.71 ppm の幅です。400 MHz なら 284 Hz、 800 MHz なら 568 Hz に相当します。芳香族溶媒に換えるだけで、原点そのものが半 ppm 動いている。
ただし誤解しないでください。これは「化学シフトが信用できない」という話ではありません。IUPAC は むしろこう釘を刺しています。
Provided the measurements are made as described in the preceding paragraph, no measured chemical shift is more "correct" than another.
適切に測られた化学シフトのあいだに、より正しいものと劣るものはない。あるのは条件の違いだけです。 だからこそ局方は、〈2.21〉3 で測定溶媒を記載せよと求めています。ppm は絶対的な物差しではなく、 「その溶液の中で 0 と決めた点からの差」だからです。
なお温度については、TMS の温度係数は約 −5 × 10−4 ppm/K(−20 〜 80 ℃ で使用推奨)で、 IUPAC は「20 K の温度変化でも通常 0.01 ppm にとどまる」としています。溶媒の効き方(0.7 ppm)と 温度の効き方(0.01 ppm / 20 K)は、桁が2つ違います。
5. 13C の 0 ppm は「TMS の炭素シグナル」ではない
13C スペクトルの 0 ppm も TMS だと習います。半分正しく、半分ずれています。
IUPAC の統一スケールでは、1H 以外の核 X の基準は、その核の共鳴周波数を、同じ磁場での CDCl3 中 TMS のプロトン周波数で割った比として定義されます。この比を Ξ(クサイ)と呼びます。
Ξ = νobs(X) / νobsTMS
つまり 13C の原点は「TMS の炭素シグナルの位置」として素朴に定義されているのではなく、 プロトンの周波数に対する比という8桁の数で与えられています。
| 核種 | Ξ / % | 基準化合物と条件 |
|---|---|---|
| 1H | 100.000 000 | Me4Si(CDCl3, ϕ = 1 %) |
| 2H | 15.350 609 | (CD3)4Si(無溶媒) |
| 13C | 25.145 020 | Me4Si(CDCl3, ϕ = 1 %) |
| 15N | 10.136 767 | MeNO2 |
| 19F | 94.094 011 | CCl3F |
| 29Si | 19.867 187 | Me4Si(CDCl3, ϕ = 1 %) |
| 31P | 40.480 742 | H3PO4(外部基準) |
出典:IUPAC Recommendations 2008, Appendix 1(2001 年勧告の表を要約したもの)。
この比があれば、装置の 1H 周波数から他核の基準周波数が一意に決まります。筆者が 上表の Ξ から計算した値は次のとおりです。
| 1H = 400.130 MHz の装置 | 1H = 600.130 MHz の装置 |
|---|---|
| 13C : 100.612 769 MHz | 13C : 150.902 809 MHz |
| 19F : 376.498 366 MHz | 19F : 564.686 388 MHz |
| 31P : 161.975 593 MHz | 31P : 242.937 077 MHz |
同じ TMS でも、基準の取り方が違えば Ξ も違います。IUPAC は同じ文書で 3 通りを並べています。
- Ξ(13C, CDCl3 中 TMS 体積分率 0.1 %) = 25.145 020 %
- Ξ(13C, 無溶媒の TMS) = 25.145 004 %
- Ξ(13C, D2O 中 10 mmol/dm3 の DSS) = 25.144 953 %
差は 6 桁目・7 桁目です。日常の構造解析には効きませんが、固体 NMR や異核相関で基準をまたぐときには 効きます。だから IUPAC は「Ξ に条件を明記せよ」という勧告(Recommendation 7)をわざわざ立てています。
固体 NMR での基準の取り方については、固体NMRの最新応用例 も あわせてご覧ください。
6. スピン結合 ― J は Hz で、磁場によらない
もう一つの軸に移ります。〈2.21〉の記述はこうです。
核磁石間の化学結合によるカップリングによってシグナルは分裂する.この分裂の間隔をスピン-スピン結合 定数J という.J はヘルツ(Hz)単位で表す.J は外部磁場の大きさに依存せず,分裂のパターンは相互作用 する核の数が増すにつれ複雑になる.
ここで、δ と J の性質の違いをはっきりさせておきます。
| 磁場を上げると | 単位 | |
|---|---|---|
| 化学シフト δ | 変わらない(定義上、周波数差を基準周波数で割っているため) | ppm |
| 化学シフト差 Δν | 磁場に比例して大きくなる | Hz |
| 結合定数 J | 変わらない(物理量として磁場非依存) | Hz |
| J を ppm に直した値 | 磁場に反比例して小さくなる | ppm |
具体的な換算です(J = 7.0 Hz の場合)。
| 装置(1H) | 1 ppm | J = 7.0 Hz は何 ppm か |
|---|---|---|
| 60 MHz | 60 Hz | 0.117 ppm |
| 400 MHz | 400 Hz | 0.0175 ppm |
| 600 MHz | 600 Hz | 0.0117 ppm |
| 800 MHz | 800 Hz | 0.00875 ppm |
| 1200 MHz | 1200 Hz | 0.00583 ppm |
磁場を上げても J は縮まない。縮んで見えるのは ppm 軸のほうです。逆に言えば、Δν は磁場に比例して 広がるのに J は広がらないので、Δν と J の比だけが磁場とともに変わります。次節からが本題です。
7. 局方は「多重度だけ」に条件を付けている
〈2.21〉の確認方法 4.1 を、省略せずに引用します。
確認しようとする物質の化学シフト,多重度,各シグナルの面積強度比が医薬品各条で定められている場合, 規定された全てのシグナルの化学シフト,多重度及び各シグナルの面積強度比が適合するとき,試料と確認 しようとする物質の同一性が確認される.ただし,シグナルの多重度は,測定装置の磁場の大きさが異なる とき,機器の分解能の差,及びスピン-スピン結合の大きさとスピン-スピン結合した核どうしの共鳴周波数 の差との相対的関係から,異なって観測される場合がある.したがって,シグナルの多重度は,測定装置の 磁場の大きさを考慮して判断する.
この但し書きは、驚くほど具体的です。局方は多重度が変わる理由として2つを挙げています。
- 機器の分解能の差
- スピン-スピン結合の大きさと、結合した核どうしの共鳴周波数の差との相対的関係
2 番目は、記号で書けば J と Δν の比、すなわち Δν / J のことです。公定法が、比の形で判定条件を 書いている。化学シフトにも面積強度比にも、こんな但し書きは付いていません。
なぜ多重度だけなのか。δ は磁場によらないよう定義され、J も磁場によらない物理量だからこそ、 両者はそのまま照合できます。ところが見た目のパターンは δ と J そのものではなく、Δν / J で決まり、 Δν だけが磁場に比例する。したがって多重度だけが装置に依存します。
では、その境目はどこにあるのか。次節で数値にします。
8. 二スピン系の厳密解 ― 同じ試料を、磁場を変えて測る
計算のモデルと仮定を先に書きます。
- 結合した 2 つのスピン(I = 1/2)だけを考えます。ハミルトニアンは H/h = νAIAz + νBIBz + J(IA·IB) とし、 4 × 4 の行列を数値的に対角化して固有値と固有ベクトルを求めました(近似は使っていません)。
- 遷移周波数は固有値の差、強度は横磁化演算子の行列要素の 2 乗としました。
- 線幅・緩和・不均一磁場は含めていません。
- 妥当性の確認:Δν = 1000 Hz、J = 7 Hz(Δν/J = 143)とすると 4 本の線が現れ、隣接間隔はすべて 7.000 Hz、強度比は 0.986 : 1 : 1 : 0.986 になりました。Δν = 0 では 1 本に縮退し、外側 2 本の強度が ゼロになりました。どちらも既知の極限と一致します。
そのうえで、「化学シフト差 0.050 ppm、J = 7.0 Hz の2つのプロトン」という同一の試料を、磁場だけ 変えて測ったらどう見えるかを計算しました。
| 装置(1H) | Δν / Hz | Δν / J | 外側と内側の間隔 / Hz | 内側 2 本の間隔 / Hz | 見かけの Δδ / ppm | 誤差 | 内側 / 外側 の高さ |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 60 MHz | 3.0 | 0.43 | 7.000 | 0.616 | 0.12693 | +154 % | 23.7 |
| 100 MHz | 5.0 | 0.71 | 7.000 | 1.602 | 0.08602 | +72 % | 9.7 |
| 300 MHz | 15.0 | 2.14 | 7.000 | 9.553 | 0.05518 | +10.4 % | 2.5 |
| 400 MHz | 20.0 | 2.86 | 7.000 | 14.190 | 0.05297 | +5.9 % | 2.0 |
| 600 MHz | 30.0 | 4.29 | 7.000 | 23.806 | 0.05134 | +2.7 % | 1.6 |
| 800 MHz | 40.0 | 5.71 | 7.000 | 33.608 | 0.05076 | +1.5 % | 1.4 |
| 1200 MHz | 60.0 | 8.57 | 7.000 | 53.407 | 0.05034 | +0.7 % | 1.3 |
筆者計算。真の Δδ = 0.050 ppm、J = 7.0 Hz。
読み取ってほしい点が3つあります。
(1)「外側と内側の間隔」はどの磁場でも 7.000 Hz。局方が言う「J は外部磁場の大きさに依存せず」が、 厳密解の上でもそのとおりに出ています。二次スペクトルであっても、この間隔は J そのものです。
(2)60 MHz では、内側 2 本の間隔が 0.616 Hz しかない。よく調整された小分子のスペクトルの線幅は おおよそ 0.5 Hz 前後ですから、この 2 本は分離しません。しかも外側の線は内側の 1/23.7 = 4.2 % の高さで、 実際には見えません。つまり 60 MHz では、この試料は事実上「一重線」に見えます。同じ試料が 400 MHz では 内側 2 本が 14.2 Hz 離れ、外側も内側の 50 % の高さで立つので、「二重線が 2 組」とはっきり読めます。
(3)これがまさに局方 4.1 の言う事態です。同一物質・同一溶媒でも、装置の磁場が違えば多重度は 違って観測される。だから局方は多重度に条件を付けているわけです。
9. 「見かけの化学シフト差」は必ず真の値より大きい
前の表の「誤差」の列は、すべてプラスでした。これは偶然ではありません。
2 つの二重線の中心の間隔(=スペクトルから素朴に読み取る化学シフト差)は、厳密解では √(Δν² + J²) になります。J² は必ず正なので、見かけの Δν は真の Δν より必ず大きく出ます。 過小評価は原理的に起こりません。
400 MHz に固定して、真の化学シフト差を変えたときの誤差を計算しました。
| 真の Δδ / ppm | Δν / Hz | Δν / J | 見かけの Δδ / ppm | 誤差 | 外側の線の高さ(内側=100) |
|---|---|---|---|---|---|
| 0.005 | 2.0 | 0.29 | 0.01820 | +264 % | 2.0 % |
| 0.010 | 4.0 | 0.57 | 0.02016 | +102 % | 7.1 % |
| 0.020 | 8.0 | 1.14 | 0.02658 | +33 % | 20.6 % |
| 0.030 | 12.0 | 1.71 | 0.03473 | +16 % | 33.0 % |
| 0.050 | 20.0 | 2.86 | 0.05297 | +5.9 % | 50.3 % |
| 0.100 | 40.0 | 5.71 | 0.10152 | +1.5 % | 70.6 % |
| 0.200 | 80.0 | 11.43 | 0.20076 | +0.4 % | 84.0 % |
| 0.500 | 200.0 | 28.57 | 0.50031 | +0.06 % | 93.2 % |
筆者計算。400 MHz、J = 7.0 Hz。
近い 2 本ほど、読み取り値が大きく外れます。Δδ が 0.02 ppm しかない 2 つのプロトンを 400 MHz で 測ると、スペクトル上では 0.027 ppm 離れているように見えます。33 % の過大評価です。しかもこのとき 外側の線は内側の 20 % しかないので、ベースラインが荒れていれば見落とし、「一重線が 2 本」と 読み違える危険があります。
10. 屋根効果は、一次近似の境目でも 22 % 残っている
「屋根効果(roof effect)」は、結合した 2 つの多重線が互いに向き合う側で高くなる現象です。上の表の 「外側の線の高さ」がそれを表しています。
Δν / J だけを変えて、この効き方を並べました。
| Δν / J | 見かけの Δν の誤差 | 内側 / 外側 の高さ | 外側の高さ(内側=100) |
|---|---|---|---|
| 0.5 | +124 % | 17.9 | 5.6 % |
| 1 | +41 % | 5.83 | 17.2 % |
| 2 | +11.8 % | 2.62 | 38.2 % |
| 3 | +5.4 % | 1.93 | 51.9 % |
| 5 | +2.0 % | 1.49 | 67.2 % |
| 7 | +1.0 % | 1.33 | 75.2 % |
| 10 | +0.50 % | 1.22 | 81.9 % |
| 15 | +0.22 % | 1.14 | 87.5 % |
| 20 | +0.12 % | 1.11 | 90.5 % |
| 50 | +0.02 % | 1.04 | 96.1 % |
筆者計算。J = 7.0 Hz。
教科書でよく見る「Δν / J > 10 なら一次スペクトルとして読んでよい」という目安は、この表では 化学シフト差の読み取り誤差 0.5 % に相当します。妥当な線引きです。
ただし同じ Δν / J = 10 で、内側の線は外側より 22 % 高いままです。「一次として扱ってよい」は 「屋根が消える」という意味ではありません。屋根の傾きは、どちらの隣と結合しているかを教えてくれる 情報なので、消えないことはむしろ好都合です。二重線が非対称に見えたら「相手はこちら側にいる」と 読み取れます。
一方で Δν / J が 1 を下回ると、外側の線は 17 % 以下に落ちます。このとき見えている 2 本は 「二重線」ではなく「AB 四重線の内側 2 本」です。その間隔は J ではありません(8 節の表の 「内側 2 本の間隔」の列)。ここを取り違えると、報告する結合定数がまるごと間違います。
多重線の帰属を確かめる手段としては、二次元法が確実です。COSY で結合相関を直接見る手順は 2D-NMRの読み方 で扱っています。
11. 積分は「核の数」ではなく「回復した磁化」に比例する
三つ目の軸、面積強度に移ります。〈2.21〉の冒頭は、こう書いています。
どのような環境の核に対しても吸収の係数(遷移の確率)は一定であるので,得られたNMRシグナル強度は 基本的に共鳴核の数に比例する.
無条件の言い切りに見えます。ところが同じ章の 5 節では、条件が付きます。
一次元1H NMRでは,定量性を確保した条件で測定したとき,スペクトル上に観察される化合物中の 原子核の数の比がピーク面積比に対応する特性を持つ.
「定量性を確保した条件で測定したとき」。では、その条件を外すと何が起きるのか。局方は数値を 書いていないので、計算します。
モデルと仮定:90° パルスを一定の繰り返し時間 T(緩和遅延 + 取込み時間)で連打する定常状態を考えます。 横磁化は次のパルスまでに完全に消えるものとし、縦緩和だけを見ます。このとき観測される信号は S / S0 = 1 − exp(−T / T1) に比例します。T1 の値は例示であり、 実測値ではありません。
| 繰り返し時間 T | T1 = 0.5 s | 1 s | 2 s | 5 s | 10 s |
|---|---|---|---|---|---|
| 3 s | 99.8 % | 95.0 % | 77.7 % | 45.1 % | 25.9 % |
| 5 s | 100.0 % | 99.3 % | 91.8 % | 63.2 % | 39.3 % |
| 10 s | 100.0 % | 100.0 % | 99.3 % | 86.5 % | 63.2 % |
| 30 s | 100.0 % | 100.0 % | 100.0 % | 99.8 % | 95.0 % |
筆者計算。値は完全回復(S0)に対する百分率。
T = 3 秒で測ると、T1 = 5 秒のプロトンは T1 = 1 秒のプロトンの 47.5 % しか 信号が出ません。プロトンの数は同じでも、積分値は 52.5 % 小さく出ます。1H が 2H に見えるどころか、 2H が 1H 弱に見える水準です。
なぜ「5〜7 倍」がよく言われるのかも、この式から出ます。
- T = 5 × T1 のとき回復率 99.326 %
- T = 7 × T1 のとき回復率 99.909 %
13C qNMR の総説(J. Pharm. Anal. 2026)も、緩和遅延 D1 について "D1 should be set to ≥ 5 T1, where T1 should be measured using the inversion recovery pulse sequence" と書いています。「5 倍」は経験則ではなく、指数関数から出る数字です。
なお、実務でよく使われる 30° 前後の小さいフリップ角では回復の様子が変わり、同じ繰り返し時間でも より均一な応答が得られます(本記事の計算は 90° パルスに限った話です)。定量目的で積分を使う場合の 実務手順は 定量NMR(qNMR)入門 に整理しています。
12. 13C の積分は、そのまま使ってはいけない
1 節で触れた局方の但し書き ―― 「13C核などでは核オーバーハウザー効果(NOE)及び緩和などの 影響を受ける」 ―― の中身です。
13C 測定では通常、1H を広帯域デカップリングします。これは信号を単純化すると同時に NOE による感度向上をもたらすと〈2.21〉5 も書いています。問題は、その増強の大きさが炭素ごとに違う ことです。総説(J. Pharm. Anal. 2026)の記述はこうです。
The nuclear overhauser enhancement (NOE) effect can enhance signal intensity of 13C. However, the enhancement varies depending on the type of 13C (from primary to quaternary). This variability makes the enhancement difficult to predict and quantify, rendering the NOE effect unsuitable for achieving accurate quantitative results in practical 13C NMR spectra.
1 級炭素から 4 級炭素まで、増強度が違う。予測も定量もできないので、実務の 13C スペクトルで 正確な定量には使えない。同じ総説は 13C の性質をこう整理しています。
| 13C NMR の性質 | 内容 |
|---|---|
| 感度 | 天然存在比 1.1 %、磁気回転比は 1H の 1/4 → 感度は 1H の 1/5,700 |
| 分解能 | 化学シフト範囲がおよそ 0〜300 ppm で、1H の約 20 倍広い |
| 検出対象 | 水素の付いていない 4 級炭素も見える |
| 緩和 | T1 が比較的長く、信号が完全な強度に達しないことが多い |
| NOE | 増強されるが、炭素の種類で増強度が変わる |
出典:J. Pharm. Anal. 2026, 3.1 節。
つまり 13C スペクトルは、位置の情報としては 1H の 20 倍精密なのに、高さの情報は そのままでは使えないという非対称を抱えています。ピークの本数と位置は信じてよい。面積は信じない。 これが実務の線引きです(定量したいなら、逆ゲートデカップリングなど専用の条件が要ります)。
13. では、何を記録すればよいか
ここまでの話は、すべて〈2.21〉3 の記載事項に帰着します。
測定条件の違いによりスペクトルは異なるので,スペクトルの比較などを適切に行うために,測定に用いた 装置名,装置の周波数,測定溶媒,測定温度,試料濃度,基準物質,測定手法などの測定条件を記載する.
7 項目です。この記事の内容と対応づけると、それぞれが「なぜ必須なのか」がはっきりします。
| 記録項目 | それが無いと再現できないこと |
|---|---|
| 装置の周波数 | 多重度(Δν / J が決まらない → 8 節) |
| 測定溶媒 | 化学シフトの原点(TMS 自身が溶媒で動く → 4 節) |
| 測定温度 | 化学シフトの微小変動(TMS で 0.01 ppm / 20 K → 4 節) |
| 基準物質 | どの物質のどの線を 0 としたか(→ 3 節・5 節) |
| 試料濃度 | 溶質どうしの相互作用による化学シフト変化 |
| 測定手法 | 積分の意味(緩和遅延・パルス角・デカップリング → 11・12 節) |
| 装置名 | 上記を追跡するための識別 |
局方が求める 7 項目は事務的な形式ではなく、この記事で見てきた「条件で動く量」を1つずつ塞ぐための リストになっています。
なお、溶媒に残る水素(残留プロトン)を基準物質の代わりに使う方法も〈2.21〉は認めています。 その際の実際の数値と注意点は NMR試料調製と重溶媒 を 参照してください。
分析者の視点
- δ と J は磁場によらない。だから照合してよい。多重度は照合しない。局方 4.1 はそれを明文で書いている。 他社データや文献値と多重度が食い違ったときは、まず両者の装置周波数を確認する。
- 二重線を見たら、内側と外側の高さを比べる。差が明らかなら Δν / J が小さい領域にいる。 その 2 本の間隔は J ではないかもしれない。
- 近い 2 本の化学シフト差は、必ず大きめに読める。過小評価は起こらない。報告する Δδ が 0.02 ppm 前後なら、400 MHz では 30 % 程度過大になっていると考えてよい。
- 「一次として読める」と「屋根が無い」は別。Δν / J = 10 でも内側は 22 % 高い。屋根の向きは 結合相手を教える情報なので、消そうとしない。
- 積分を数として使う前に、繰り返し時間と T1 の関係を見る。T = 3 秒・T1 = 5 秒で 52 % 減る。「積分が合わない」の相当部分はここに原因がある。
- 13C は位置を信じ、面積を信じない。NOE の増強度が炭素の種類で変わるため、 通常のデカップリング条件では定量に使えない。
- 溶媒を書く。温度を書く。周波数を書く。この 3 つが無いスペクトルは、あとから誰も再現できない。 局方の 7 項目はそのためにある。
まとめ
- 局方〈2.21〉は化学シフト・結合定数・面積強度・緩和時間の 4 つのパラメータを挙げ、面積強度にだけ 「13C では NOE と緩和の影響を受ける」という但し書きを付けている。
- 化学シフトの定義式に 106 は入っていない。局方も IUPAC も同じ形で、ppm 側が 10−6 を担う。
- ppm の原点は CDCl3 中に体積分率 1 % 未満で溶かした TMS のプロトン共鳴という、 同位体組成まで指定された 1 本の線。
- その TMS 自身の遮蔽は溶媒で +0.07 〜 −0.64 ppm(幅 0.71 ppm)動く。内部基準で使う限り定義上は 厳密に 0 だが、原点は絶対的な物差しではない。
- 13C の 0 ppm は Ξ = 25.145 020 % という比で定義されている。基準の取り方を変えると 6 桁目から変わる。
- 局方は多重度にだけ「測定装置の磁場の大きさを考慮して判断する」と条件を付け、その理由として 「結合の大きさと共鳴周波数の差との相対的関係」= Δν / J を挙げている。
- 厳密解で計算すると、Δδ = 0.050 ppm・J = 7.0 Hz の 2 プロトンは 60 MHz では内側 2 本の間隔が 0.616 Hz で分離せず実質一重線、400 MHz では 14.2 Hz 離れて二重線 2 組に見える。外側と内側の 間隔はどの磁場でも 7.000 Hz で、J は確かに磁場によらない。
- 見かけの化学シフト差は √(Δν² + J²) なので、必ず真の値より大きい。400 MHz で真の Δδ = 0.020 ppm なら +33 % 過大。
- 「Δν / J > 10 なら一次」は読み取り誤差 0.50 % に相当する妥当な目安だが、そこでも屋根は 22 % 残る。
- 積分は核の数ではなく回復した磁化に比例する。T = 3 秒では T1 = 5 秒のプロトンが T1 = 1 秒のプロトンの 47.5 % にしかならない(52.5 % 過小)。5 × T1 で 99.326 %、7 × T1 で 99.909 %。
- 13C は分解能が 1H の約 20 倍広く 4 級炭素も見えるが、感度は 1/5,700 で、 NOE 増強が炭素の種類ごとに違うため通常条件では定量に使えない。
用語集
- 化学シフト(δ):基準核との共鳴周波数の差を、基準核の共鳴周波数で割った量。磁場によらない値になる ように定義されている。通常 ppm で表す。
- スピン-スピン結合定数(J):化学結合を介した核スピン間の相互作用によって生じる分裂の間隔。 Hz で表し、外部磁場の大きさに依存しない。
- Δν:結合した 2 つの核の共鳴周波数の差。Hz で表すと磁場に比例して大きくなる。
- Δν / J:多重線の見え方を決める比。この値が大きいほど一次スペクトルに近づく。
- 一次スペクトル(first-order spectrum):多重線の分裂パターンを「n + 1 則」などの単純な規則で 読めるスペクトル。Δν / J が十分大きいときに成り立つ。
- 屋根効果(roof effect):結合した 2 つの多重線が、互いに向き合う側で高くなる現象。Δν / J が 小さいほど顕著。
- AB 系:Δν が J と同程度に小さい 2 スピン系。4 本の線が現れ、内側 2 本の間隔は J ではない。
- TMS:テトラメチルシラン。有機溶媒中の 1H・13C の基準物質。
- DSS / TSP:重水中で TMS の代わりに用いる基準物質。
- Ξ(クサイ):ある核の共鳴周波数を、同じ磁場での CDCl3 中 TMS のプロトン周波数で 割った比。百分率で表す。IUPAC の統一スケールの中核。
- T1(縦緩和時間):励起された核スピンが熱平衡分布に戻るまでの時定数。積分の定量性を 左右する。
- NOE(核オーバーハウザー効果):空間的に近いスピン間の磁化移動によって信号強度が変わる現象。 13C の広帯域デカップリングでは感度を上げるが、増強度が炭素ごとに違う。
- 内部基準法 / 外部基準法:基準物質を試料と同じ溶液に溶かす方法/細管などで物理的に分けて置く方法。 後者は磁化率の違いによる補正が要る。
- 磁化率(bulk magnetic susceptibility):物質が磁場中で示す磁化のしやすさ。外部基準法では 試料と基準で値が違うため、観測シフトに系統的なずれを生む。
出典
- 厚生労働省「第十九改正日本薬局方」一般試験法〈2.21〉核磁気共鳴スペクトル測定法(p. 52–54) ―― 化学シフトの定義式、基準物質、J の磁場非依存性、4 つのパラメータ、確認方法 4.1 の多重度に関する 但し書き、記載すべき 7 項目。 https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/001689414.pdf
- R. K. Harris, E. D. Becker, S. M. Cabral de Menezes, P. Granger, R. E. Hoffman, K. W. Zilm, "Further conventions for NMR shielding and chemical shifts (IUPAC Recommendations 2008)", Pure and Applied Chemistry 2008, 80, 59–84, doi:10.1351/pac200880010059 ―― δ の定義から 106 を外した理由、統一スケールと Ξ、TMS の溶媒依存性(Table 2)と 温度係数、Ξ 値の一覧(Appendix 1)。 https://bmrb.io/standards/iupac_2008.pdf
- Q. Tang, S. Wang, X. Zhai et al., "Applications of quantitative 13C NMR in pharmaceutical analysis: From small molecule drugs to biopolymers", Journal of Pharmaceutical Analysis 2026, doi:10.1016/j.jpha.2025.101346 ―― 13C NMR の感度・分解能・T1・NOE の性質、緩和遅延を 5 × T1 以上に 取る根拠。 https://www.ebi.ac.uk/europepmc/webservices/rest/PMC12861247/fullTextXML
- J. L. Markley, A. Bax, Y. Arata, C. W. Hilbers, R. Kaptein, B. D. Sykes, P. E. Wright, K. Wüthrich, "Recommendations for the presentation of NMR structures of proteins and nucleic acids (IUPAC Recommendations 1998)", Pure and Applied Chemistry 1998, 70, 117–142 ―― 水溶液系で DSS を基準とする勧告(IUPAC 2008 の参考文献 [3])。 https://bmrb.io/standards/iupac.pdf
計算に用いたスクリプトは、本文中に記したモデルと仮定(2 スピン系ハミルトニアンの数値対角化、 縦緩和のみを考慮した定常状態)にもとづく筆者の自作です。
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未確認・限界
- 本記事の計算値はすべてモデル計算であり、実測スペクトルではありません。8〜10 節は線幅・緩和・ 磁場不均一を含まない理想化した 2 スピン系、11 節は 90° パルスと縦緩和だけを考えた定常状態です。 ご自身の試料の予測値として使わないでください。
- 8 節で「60 MHz では内側 2 本が分離しない」と述べた根拠のうち、線幅 0.5 Hz 前後という前提は 一般的な目安であり、特定の出典に基づく値ではありません。実際の分離可否はシム・試料・処理条件で 変わります。
- 11 節の T1 の値(0.5〜10 秒)は計算のための例示です。特定の化合物の実測値ではありません。
- 実務で広く使われる 30° 前後のフリップ角の場合、定常状態の式は本記事のものと異なります。 本記事は 90° パルスに限定しています。
- IUPAC 2001 年勧告(Pure Appl. Chem. 73, 1795–1818)の原文 PDF は、IUPAC のサーバーから 取得できませんでした(403)。本記事が引用した 2001 年勧告の内容(δ の再定義、統一スケール、Ξ の定義、 Ξ 値の表)は、すべて2008 年勧告が本文中で引用・要約している範囲に限っています。2001 年原文に 当たっての確認はできていません。
- IUPAC 2008 の Table 2 について、勧告自身が「複数の独立した研究による批判的評価データほどの 定量的信頼性を持つものとみなすべきではなく、将来訂正されうる」と注意しています。0.71 ppm という 幅も、その前提で読んでください。
- 芳香族溶媒(ベンゼン-d6、トルエン-d8、ニトロベンゼン-d5)の MAS 実測値は Table 2 では未測定です。磁化率補正値のみを掲載しました。また メタノールの MAS 値 (−0.106 ppm)は、原典の脚注により重水素化していないメタノールを溶媒として測定された値です。
- 13C の定量測定(逆ゲートデカップリング、緩和試薬の添加など)の具体的手順は本記事の 範囲外です。
- 3 スピン以上の系(ABX、ABC など)は扱っていません。局方が言う「相互作用する核の数が増すにつれ 複雑になる」領域は、本記事の 2 スピン厳密解では説明しきれません。
制作メモ:ディープリサーチで周辺情報を収集したうえで、記載した数値・逐語はすべて編集側で原典(日本薬局方 一般試験法 PDF、IUPAC 勧告 PDF、Europe PMC の全文)にあたって検証し、計算は自作スクリプトで再現可能な 形にしたうえで執筆した。