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2D-NMRの読み方 ― HMBC の相関が「無い」ことは、結合が無いことの証拠にならない【2026年版】
NMR

2D-NMRの読み方 ― HMBC の相関が「無い」ことは、結合が無いことの証拠にならない【2026年版】

COSY・HSQC・HMBC・NOESY は同じ「相関」という言葉を使うが、返している物理量はまったく違う。HSQC が信頼できるのは 1J(CH) が 120〜250 Hz と桁違いに大きく、しかも狭く固まっているからで、HMBC が信頼できないのは nJ(CH) が 10 Hz 以下に散らばっているからである。HMBC の交差ピーク強度は |sin(π·J·Δ2)| に従うので、遅延 Δ2 を 65 ms から 100 ms に変えるだけで、10 Hz の相関は強度 0.89 から 0.00 へ完全に消え、15 Hz の相関は 0.08 から 1.00 へ現れる。二面角が 90° に近ければ 3 結合でも消え、4 結合や 5 結合の相関はごく普通に現れる。そして 2J と 3J は 0〜8 Hz で範囲が重なるため、出てきた相関が何結合かも HMBC 単独では決まらない。「相関が無いから結合が無い」という推論が、どれだけ構造を間違えてきたかを原典で追う。

非標的分析と未知構造推定 ― 答えが全部わかっている試料でも、当てられたのは46%だった【2026年版】
質量分析

非標的分析と未知構造推定 ― 答えが全部わかっている試料でも、当てられたのは46%だった【2026年版】

高分解能MSで「未知のピーク」を追う非標的分析は、環境・食品・医薬・法科学に急速に広がった。 だが米国EPAが主催した共同試験ENTACTでは、何が入っているかを全部わかっている合成混合物を目隠しで 分析させたところ、異性体を除いた真陽性率は最良でも46%、答えを見てからやり直しても65%にとどまった。 本記事は「なぜ当たらないのか」を二段階に分けて追う。第一に、質量精度をいくら上げても分子式は 一意にならない(Kind & Fiehn が2006年に論文タイトルで宣言している)。第二に、分子式が決まっても 構造は決まらない。そのうえで、この不確かさを隠さずに申告するために作られた Schymanski の5段階、 PFAS向けに枝分かれした信頼度スケール、そして ICH Q3A の「未同定不純物」と ICH Q3E の AET という 規制側のしきい値までを、すべて原典の数値で整理する。

AI・機械学習が変える分析化学 ― スペクトル自動解析の最前線【2026年版】
データ解析

AI・機械学習が変える分析化学 ― スペクトル自動解析の最前線【2026年版】

AI・機械学習は、分析化学の「測る」より下流――スペクトルや クロマトグラムを読み解く解析工程を急速に変えつつある。NMRからの構造推定、 質量分析による未知化合物・ペプチドの同定、クロマトの保持時間予測、そして 複数手法をまたぐ「基盤モデル」まで、2026年時点の最前線を手法別に整理し、 あわせて過学習・データリーケージ・再現性といった避けて通れない落とし穴と、 分析者が果たすべき役割を、入門者と現場の研究者の両方に向けて解説する。