タグ: #最新機器

4 件の記事

ICP-MS/MSとコリジョン・リアクションセル ― 局方が許す酸化物3%は、セリウムがガドリニウムの13%に化けることを許している【2026年版】
質量分析

ICP-MS/MSとコリジョン・リアクションセル ― 局方が許す酸化物3%は、セリウムがガドリニウムの13%に化けることを許している【2026年版】

第十九改正日本薬局方の一般試験法〈2.63〉は、ICP-MS の装置性能の目安として「酸化物イオン生成比 CeO⁺/Ce⁺ が 0.03 以下、二価イオン生成比 Ce²⁺/Ce⁺ が 0.05 以下となることが望ましい」と書いている。この二つの比を濃度に翻訳すると、3 % はセリウムがガドリニウムの 13 % に化けることを、5 % はガドリニウムがセレンの 4.3 % に化けることを許す数字になる(筆者計算)。MRI 造影剤の Gd を打った患者の血清では、これがセレン真値の 17〜86 倍に達しうる。コリジョン・リアクションセルは、この「化ける」現象を消す装置ではなく、化学反応そのものを測定側に取り込む装置である。ヘリウム KED が質量ではなく衝突断面積で分けていること、四重極を1本増やすことの意味が感度でも分解能でもなく「セルに入る前に質量を決める」ことであること、動かすのが分析種とは限らないことを、局方原文・Agilent の70元素反応データ・PNNL の査読論文・2026年6月発売の Agilent 9500 の技術資料から数値で追う。

結晶構造解析の最前線 ― 47年ひとつだと信じられた医薬品の多形は、R 因子 0.19 の構造で二つに分かれた【2026年版】

結晶構造解析の最前線 ― 47年ひとつだと信じられた医薬品の多形は、R 因子 0.19 の構造で二つに分かれた【2026年版】

日本薬局方〈2.58〉には「8. 単結晶構造解析」という節がある。中身は3文しかなく、そのうち1文は 「有機結晶では…その構造解析を行うことは容易ではない」という警告である。判定値はゼロ。電子線回折・中性子・ 放射光・絶対配置は、一般試験法473ページを全文検索して1件も出てこない。ところがその「容易ではない」側では、 2022年にインドメタシンの多形がひとつではなく二つだったことが判明した ―― 1974年の報告から47年後、 幅 0.5〜2 µm の結晶から、R 因子 0.19 という X線なら受理されない数字で。本記事は、必要な結晶体積が 10⁵ → 10³ → 10⁻² µm³ と7桁下がった経緯、X線・電子線・中性子が「別のもの」を測っているために水素の位置が 食い違う仕組み(筆者集計:MicroED の実測376本は10種類すべてで中性子側に近い)、SPring-8 と NanoTerasu の 公称値の差、そして結晶構造予測が第7回ブラインドテストでどこまで届いたかを、すべて一次資料の数値で追う。

JASIS 2026 の歩き方 ― 「AI×分析・計測」で何が変わるのかを見に行く
データ解析

JASIS 2026 の歩き方 ― 「AI×分析・計測」で何が変わるのかを見に行く

アジア最大級の分析・科学総合展「JASIS 2026」が2026年9月2日〜4日に幕張メッセで開かれる。 主催者が今年の見どころに挙げたのは「AI×分析・計測」――測定・解析・制御を自動でつなぐ ラボオートメーションと、自律的に判断・作動するフィジカルAIである。LabDXゾーンに集まる11社、 生成AIや食品・半導体をテーマにした注目セミナー、島津の「AX」やJASCOの分光・SFCといった 出展内容を、主催者・出展社の公式発表だけを根拠に整理し、分析化学者としてどこを見て何を 持ち帰るべきかを、開幕前に組み立てておく。

NMRの最新機器まとめ ― 1.3 GHz超高磁場からベンチトップまで【2026年版】
NMR

NMRの最新機器まとめ ― 1.3 GHz超高磁場からベンチトップまで【2026年版】

核磁気共鳴(NMR)装置はいま「超高磁場(1.2〜1.3 GHz)」と「ベンチトップ(60〜100 MHz)」の 両極に大きく広がっている。Brukerの1.3 GHz機・Ascend Evoマグネット、JEOL ECZ Luminous、 Oxford X-PulseやNanalysisのベンチトップ機、そして感度を底上げするクライオプローブ・DNP超偏極まで、 2025〜2026年時点の最新機器と技術トレンドを、入門者にも分析現場の専門家にも届く形で整理する。 あわせて、磁場・クライオプローブ・超偏極という桁のちがう数字を「等価磁場」と「測定時間」という ひとつの物差しに乗せ、1.2 GHzから1.3 GHzへ上げて増える感度が1.13倍であることを計算で示す。