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12 件の記事

分取HPLCとスケールアップ ― 断面積比で伸ばすのは流量と負荷量、守るのはカラム容量あたりのグラジエント容量【2026年版】

分取HPLCとスケールアップ ― 断面積比で伸ばすのは流量と負荷量、守るのはカラム容量あたりのグラジエント容量【2026年版】

分析カラムで決めた分離を分取カラムへ移す規則は、どのメーカーの資料も同じ一文に集約される。「流量と注入量をカラム断面積に比例させる」。ただし、それが成り立つのは分取カラムに幾何比どおりの流量を流せるときだけで、Agilent の移管例では 2.1 mm から 21.2 mm へ移すときの計算上の流量 36.7 mL/分を装置の都合で 25 mL/分に落とし、代わりにグラジエントの時間軸を 12.2 倍に伸ばしている。この 12.2 は「カラム容量比 305.7 ÷ 流量比 25」で、守られているのは流量ではなくカラム容量あたりのグラジエント容量である(筆者計算)。負荷量を 4.6 mm カラムで先に見極める手順(島津・ジーエルサイエンス・YMC)、過負荷で三角になるピークの意味、フォーカストグラジエントで純度 98 %・回収率 93 % に至った例、温度・ポンプ・溶媒コスト・リサイクルまでを、メーカー一次資料と査読論文の原文で整理する。

グラジエント最適化の実務 ― 勾配を緩める操作は、608 時間かけてもカラムを倍にした 17 分に届かない【2026年版】

グラジエント最適化の実務 ― 勾配を緩める操作は、608 時間かけてもカラムを倍にした 17 分に届かない【2026年版】

分離が足りないとき、まず勾配を緩めるのは合理的に見える。しかし線形溶媒強度モデルを数値で解くと、勾配を緩める操作には天井がある。基準条件から勾配時間を 4,096 倍(608 時間)にしても分離度は 1.40 倍で止まり、同じ改善をカラム長 2 倍なら 17 分で超える。グラジエントは「溶質ごとにばらばらな保持係数を一つの値に揃える装置」であり、揃えたあとに残る手は限られている。

クロマトグラムの積分とピーク処理 ― 同じ不純物が、積分モードしだいで 0.028 % にも 0.104 % にもなる【2026年版】
データ解析

クロマトグラムの積分とピーク処理 ― 同じ不純物が、積分モードしだいで 0.028 % にも 0.104 % にもなる【2026年版】

クロマトグラフィーの最後の一歩、ピーク積分は「読み取り」ではなく「決定」である。 同じ電気泳動図の同じ不純物ピークを4つの積分モードで処理した査読論文の実測では、 真値 0.100 area% に対して 0.104 %・0.071 %・0.041 %・0.028 % という4つの答えが出て、 誤差は +4.2 % から −72.1 % まで広がった。どのモードも正しい値を返していない。 本記事は、この「決定」がどこで効くのかを、垂直分割の誤差の自前計算(分離度と テーリングファクターで表にした)、CDSの積分パラメータ、局方の記述、 そして手動積分を名指しした FDA ウォーニングレターと MHRA の生データ定義まで、 一次資料で追う。

移動相・緩衝液調製の実務 ― その pH は、どこで測った値か

移動相・緩衝液調製の実務 ― その pH は、どこで測った値か

「移動相の pH は ±0.2 以内」。薬局方が許す調整範囲としてよく引かれる数字だが、その pH が どこで測った値なのかは意外に意識されていない。日本薬局方は「移動相の水系組成の pH」、 USP は「移動相の調製に用いる水性緩衝液の pH」と書いている ―― どちらも有機溶媒を混ぜる前の値である。 ところが分析種の解離を実際に支配するのは混合後の pH で、両者は別物だ。混合溶媒中の pH には 三つのスケールがあり、しかも熱力学的に正しいスケールは 25℃ 以外では標準緩衝液が存在しないため 直接測れない。2024年には「異なる組成の移動相の pH は本来比較できない」として統一 pH の提案も出た。 本記事は JP19 と USP〈621〉の条文、pH スケールの原著、緩衝塩の溶解限界の実測データを原典で確認し、 緩衝液の選び方・濃度・析出・混合方式・調製法までを整理する。

揮発性成分をGCに入れる4つの方法の選び方 ― 試料量を増やしても感度が上がらない理由

揮発性成分をGCに入れる4つの方法の選び方 ― 試料量を増やしても感度が上がらない理由

静的ヘッドスペースで感度が足りないとき、まず試料量を増やそうとする。しかしそれが効くのは 分配係数 K が相比 β よりずっと小さいときだけで、水によく溶ける成分では何も変わらない。 逃げ道は3方向しかない ― 濃縮を足す(SPME・ITEX)、平衡を捨てる(パージ&トラップ)、 気体を直接捕まえる(熱脱着)。それぞれ別の代償を払う。本記事は DFG MAK 委員会の分析法文書、 EPA TO-17、査読論文を原典で確認し、支配式 cg = c0/(K+β) から始めて、SPME の収着相が 0.6 µL しかないという制約、吸着剤を表面積で選ぶ根拠、相対湿度 90% 超では安全サンプリング量を 10 分の 1 にするという規定、そして固体試料で唯一まともに定量できる MHE までを、数値で整理する。

LC検出器の選び方 ― 「ダイナミックレンジ4桁」は「直線範囲4桁」ではない【2026年版】

LC検出器の選び方 ― 「ダイナミックレンジ4桁」は「直線範囲4桁」ではない【2026年版】

LC検出器の選定は、まず「発色団があるか」で分岐する。無ければ RI・ELSD・CAD といったユニバーサル検出器に 進むが、そこからカタログの数字が急に読みにくくなる。CAD の「ダイナミックレンジ4桁」は、Thermo 自身の技術資料に 「準直線なのは 1.5〜2 桁だけ」と書かれている。ELSD の検出限界は減衰設定ごとに変わる。そして両者とも非線形なので、 高濃度標準1点から S/N を外挿した検出限界は「completely meaningless」だと、そのメーカー自身が明言している (実測では外挿値と実測値が 5〜13 倍ずれた)。本記事は Agilent・Waters・Thermo の仕様書と技術資料、 そして査読論文を原典で確認し、ノイズ仕様がなぜ横並び比較できないのか、光路長と分散のトレードオフ、 蛍光検出器のカタログに「>500」と「>3000」が併記される理由、そして UHPLC でセル容量とデータ収集速度が どこまで効くのかを、数値で整理する。

UHPLCカラム技術の深掘り ― メーカーが言う「最大 50 % 低背圧」は、有効粒子径の定義から計算で出てくる【2026年版】

UHPLCカラム技術の深掘り ― メーカーが言う「最大 50 % 低背圧」は、有効粒子径の定義から計算で出てくる【2026年版】

コアシェルカラムの広告文句「sub-2 µm 並みの効率を、低い背圧で」は、メーカー自身が公開している 有効粒子径(de)の定義から計算で出てくる。Phenomenex の資料は Kinetex 2.6 µm の de を 1.7 µm と書き、 van Deemter 式の A 項には物理粒子径 dp を、C 項には de を使う。背圧は dp の 2 乗に反比例するので、 同じ効率を出すときの圧力比は (2.6/1.7)² = 2.34、つまり 57 % 低い(筆者計算)。同じ資料の粒子寸法 (固体核 1.9 µm・シェル 0.35 µm)から多孔体積を出すと全多孔粒子の 61 % しかなく、これが分取で 負荷量が落ちる理由になる。摩擦熱も同じく計算できる。圧力の仕事が全部熱になるなら 1000 bar で水は 24 ℃、 アセトニトリルは 57 ℃ 上がるが、実測(赤外サーモ、2018)は水 +16.6 ℃・ACN +12.8 ℃ と順序が逆転する。 その理由まで、一次資料と査読論文で確かめる。

AI・機械学習が変える分析化学 ― 正解率 69.6 % は、15 個の候補のどれかが当たった割合である【2026年版】
データ解析

AI・機械学習が変える分析化学 ― 正解率 69.6 % は、15 個の候補のどれかが当たった割合である【2026年版】

1D NMR から構造を当てる機械学習の報告は「69.6 %」という数字を出している。ただしこれは 1 発で当たる確率ではなく、候補を 15 個出したうちのどれかに正解が入っていた割合で、 裏返せば 15 個並べても約 3 割は正解を含まない。それでも探索空間は最大 11 桁縮む。 AI・機械学習は分析化学の「測る」より下流――スペクトルやクロマトグラムを読み解く 解析工程を急速に変えつつある。NMR からの構造推定、質量分析による未知化合物・ペプチドの同定、 クロマトの保持時間予測、複数手法をまたぐ「基盤モデル」までを手法別に整理し、あわせて 過学習・データリーケージ・再現性といった落とし穴と、分析者が果たすべき役割を解説する。

HPLC/UHPLCカラムの選び方 ― α を 0.05 上げた分を段数で買うなら、カラムは 3.6 倍の長さになる【2026年版】

HPLC/UHPLCカラムの選び方 ― α を 0.05 上げた分を段数で買うなら、カラムは 3.6 倍の長さになる【2026年版】

分離度の式を日本薬局方〈2.00〉の定義から組み立てると、分離係数 α を 1.05 から 1.10 に動かした効果を 理論段数で埋め合わせるには、段数を 3.6 倍=カラムを 3.6 倍の長さにする必要がある。だからカラム選びは 「長さ」より先に「固定相」で決まる。HPLC/UHPLCのカラム選びを、分離モード(逆相/HILIC/SEC・IEX)→固定相化学 (C18/C8/フェニル/PFP/HILIC)とUSP L分類→シリカ・ハイブリッド(BEH)・コアシェル→粒子径とvan Deemter・背圧→ 細孔径(小分子100Å/タンパク質300Å)→カラム寸法→メソッド移管の順に、局方と査読論文の原文にあたって整理する。

SFC徹底解説 ― 溶かす力は液体並みなのに、粘度は 10 分の 1 しかない【2026年版】

SFC徹底解説 ― 溶かす力は液体並みなのに、粘度は 10 分の 1 しかない【2026年版】

SFC の強みは「液体並みの溶解力と気体並みの低粘度を併せ持つ」と説明されるが、その中身は数字で押さえられる。島津の公式ガイドの物性表では、超臨界流体の密度は 0.2〜0.8 g/cm³(液体は 1)、粘度は液体の 10 分の 1、拡散係数は 3 桁大きい。だから同じ流速でも van Deemter の C 項が効きにくく、トコフェロール 4 成分では順相 HPLC の分離度 1.328 に対し SFC が 1.703 を出す。移動相は CO₂:MeOH=90:10 で有機溶媒は 1 割、CO₂ 消費は 10 分の分析で約 30 g。物性・移動相設計・固定相・SFC-MS・キラル分取までを公式資料の原文にあたって整理する。

クロマトグラフィー最新技術動向 ― 2.7 µm のコアシェル粒子は、sub-2 µm と同じ効率を半分の圧力で出す【2026年版】

クロマトグラフィー最新技術動向 ― 2.7 µm のコアシェル粒子は、sub-2 µm と同じ効率を半分の圧力で出す【2026年版】

クロマトグラフィーの最新動向を、装置カタログの紹介にとどめず「なぜそうなるか」の物理から解説する保存版。 van Deemter式とピークキャパシティの基礎、表面多孔質(コアシェル)粒子がsub-2µm全多孔質に背圧半分で匹敵する理由、 UHPLCの摩擦熱と系内拡散の限界、二次元分離(LC-LC/mLC-LC/LC×LC)の直交性とアクティブ溶媒モジュレーション、 mAb・オリゴ核酸のバイオ医薬応用、SFC/UPC2、GCの水素キャリアガス移行とGC×GC、検出器とグリーン分析化学まで、 入門者の足場と専門家の読み応えを両立させて2024〜2026年の最前線を整理する。

オリゴ核酸医薬の不純物解析 ― IP-RP・HILIC・2D-LC-MSで複雑なプロファイルを解く

オリゴ核酸医薬の不純物解析 ― IP-RP・HILIC・2D-LC-MSで複雑なプロファイルを解く

アンチセンス(ASO)やsiRNAなどオリゴ核酸医薬の不純物解析を、原理から実務まで出典つきで解説する。 固相合成由来のショートマー(n-1)/ロングマー、脱プリン、ホスホロチオエート(PS)→PO変換やPSジアステレオマーという 難物を、ゴールドスタンダードのIP-RP LC-MS、直交するHILIC、そしてハートカット2D-LCのオンライン脱塩で解きほぐす。 HFIPとPFAS問題、非特異吸着(NSA)対策、HRMS/イオンモビリティ、EMA 2024の閾値まで、入門者にも専門家にも届く形でまとめる。